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ダンジョン シェルシェ  作者: 功野 涼し
愛のカタチ

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43/71

1

 冒険者の男はダンジョンの中にある密林で、モンスターである狼男を剣で斬り討伐する。


 倒れた狼男からモンスターコアを抜き取った冒険者の男は、モンスターコアについている血を拭き取ると鞄の中へ入れる。


 さらに奥へと歩みを進める男性が、ふとなにかに気づき立ち止まると、慎重に足を運び木の陰から先を覗く。


 モワッとした熱気を含んだ白い煙で視界が悪く、冒険者の男は煙の少ない地面を這って先に進むことを選択し、慎重に這って進む。


 やがて大きな岩が並ぶ場所に出た冒険者の男は、そっと体を起こすと岩陰から周囲を窺う。


 白い煙の発生元が地面にから湧き出たお湯であることを知った冒険者の男は、そのまま視線を前に向け、湯気の先にいる者に釘付けになる。


 それは狼系の獣人の女。濡れた体の毛を舌で舐めて毛繕いする獣人の女は、時折大きな尻尾を水面で揺らし尻尾をお湯に浸すと、大きくバサバサ振って水を飛ばす。


 そのままザブンとお湯の中に潜ったと思ったら、すぐに飛び出てきて体をブルブルと大きく震わせ、毛先から水しぶきを上げる。


 人とは違う体中から生えている体毛のに大きな尻尾、鼻と口はやや獣に近いが、少し平べったく顔面の毛が少いこともあって人の顔に近いものを感じる。

 目は大きく、瞳は人間とやや違うがおおよそ同じ作りをしている。一番の違いは耳が横になく、頭の上から二つ生えていることだろう。


 冒険者の男は、獣人の女がお湯で体を洗いながら遊んでいる姿をジッと見つめる。


 しばらくお湯に潜っては体を大きく震わせ水を飛ばし遊ぶ姿を見ていた冒険者の男は、獣人の女が飛び跳ねた瞬間、胸元に目が釘付けになってしまう。


 体毛に覆われているが、モンスターである獣人が服を着ているわけもなく、ましてや湯浴み中だったので、毛の隙間から見える胸を直視した冒険者の男は思わず息を飲み、慌てて口を押さえる。


 そのときだった冒険者の男の前に、シタシタと水を垂らす足が現れる。


 ゆっくりと顔を上げた冒険者の男の視線の先には、オレンジ色に光る鋭い目で見下ろす獣人の女の顔があった。


 ふーっと威嚇するような唸り声を上げながら、獣の手から出た鋭い爪を光らせ、冒険者の男を警戒しながらジリジリと近づいてくる。


 冒険者の男は、慌てて腰にある剣を抜こうとするがその手を止め、獣人の女から目を離さないようにしたまま肩にかけていた鞄に手を入れると中から干し肉を取り出す。


「た、食べるか? 美味しいぞ」


 手に持った干し肉を振ってアピールしてみる冒険者の男だが、獣人の女は鋭い爪を出したままジリジリと近づく。


 焦る冒険者の男は、干し肉にかぶりついてお袈裟に咀嚼してみせると、残りを獣人の女の足下に投げる。


 にじり寄っていた足を止め、足下に投げられた干し肉とモグモグと大きく口を動かす冒険者の男を交互に見た獣人の女は、四つん這いになると、干し肉に鼻先を近づける。


 スンスンと鼻を動かした獣人の女は、警戒したまま干し肉に口をつけくわえる。

 口を大きく開けガチッガチッと歯を鳴らしながら干し肉口の中へ入れた獣人の女は、しばらく干し肉を咀嚼するとジッと冒険者の男に目を向ける。


 その目は先程までの鋭さはなく、どこか柔らかすら感じてしまう。


「も、もしかしてもっと欲しいのか? ちょっと待ってろよ」


 冒険者の男は鞄に手を入れ干し肉を取り出すと、パタパタと振ってみせる。それを見た獣人の女は目を見開き、冒険者の男に近づくと手に持っていた干し肉にかぶりつき引き取る。


 美味しそうに食べる獣人の女を見て、冒険者の男は笑みをこぼす。


「旨いか。あと何枚かあるから全部やるよ。そんなに慌てなくても大丈夫だって」


 冒険者の男は、いつの間にか自分の間近くにいた獣人の女に顔を赤らめながら宥めながら次の干し肉を取り出す。


 顔を目の前まで近づけた獣人の女の瞳を見て男性は口を開く。


「太陽みたいな瞳の色をしてるんだな。モンスターって名前とかあるのか? んとそうだな、ソレユって名前で呼んでいいかな?」


 冒険者の男の言葉に首を傾げる素振りを見せた獣人の女は、そんなことよりも干し肉の方が気になるようで、男の鞄をスンスンと嗅ぎ始める。


「まだあるのが分かるのか? 名前とかどうでもいい感じだな」


 呆れながら笑う冒険者の男は干し肉にかぶりつく獣人の女を見ながら口を開く。


「勝手に呼ばせてもらうな。俺の名前はロイターっていうんだ。よろしくなソレユ」


 ━━これが、ダンジョン、グランボアにおいて若かれし冒険者のロイターと、獣人ソレユの出会だ。


 杖をついた老人は自分の話をじっと聞く、目の前にいる眼帯姿の少年に目をやる。

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