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もと来た道を戻ったシルシエは、再びゴーレムたちと対峙する。
シルシエがゴーレムの強大な拳を避けると、別のゴーレムが振り上げる拳も素早く避ける。
そのまま壁を駆け上がったシルシエは、バク転し最初に拳を振るったゴーレムの頭を踏んで背後に回る。
「丁度いい感じ」
背中側にあるくぼみに足をかけたシルシエが、足のかかり具合を確かめ満足そうに頷くと、ゴーレムの首元にある出っ張りを掴む。
「あとはどうやって誘導するかだけども……ん?」
シルシエが周りを見渡したとき、もう一体のゴーレムと目が合う。
シルシエに気がついたゴーレムが、宝石でできた目を瞬かせると、シルシエの乗っているゴーレムが体を捻り、首を動かして周囲を探し始める。
「もしかして会話をしたのかな?」
そう思ったのも束の間、もう一体のゴーレムが手を上げると、掌で虫でも潰すかのようにシルシエ目掛け平手打ちを繰り出してくる。
「うわわわっ!?」
シルシエが慌てて乗っているゴーレムの脇に滑り込んで逃げると、平手打ちが先程までシルシエがいた場所に放たれる。
石と石がぶつかる鈍い音がダンジョン内に響く。
シルシエは、平手打ちの衝撃で激しく揺れるゴーレムから振り落とされまいと、必死にしがみつく。
揺れが収まるが息をつく間もなく、二撃目の平手打ちが放たれる。だが、シルシエがしがみついているゴーレムも、二撃目は喰らいたくないと、平手打ちを腕で防ぐ。そしてそのまま走って逃げ始める。
「なるほど、こうやってあっちに誘導すればいいんだ。結構難易度高いなぁ」
シルシエが脇の下から背中に移動すると、追いかけてくるゴーレムが手を振り上げて迫ってくる。
叩かれまいと逃げるゴーレムは、シルシエが先ほど通れなかった針の通路に差しかかる。
つるつるの床に足を踏み込むが、鉱石でできた体の前に針は刺さることなく、先端は折れてしまう。二体のゴーレムも自身を襲う針など気にする様子もなく、シルシエを潰そうと手を振りかざすゴーレムと、叩かれまいと逃げるゴーレムの追いかけっこは続く。
難所を抜け、しばらく続いた追いかけっこも、広い空間に出たところで終わりを迎える。
これ以上の道はなく行き止まりになった場所で、シルシエがしがみつくゴーレムは壁に背を向け、目を瞬かせなにかを訴えつつ、追いかけてきたゴーレムに叩かれまいと警戒する。
そんな二体をよそに、シルシエはゴーレムから飛び降りると洞窟内にある、人間であれば通れる隙間に向かって走る。
そんなシルシエに気がついた二体のゴーレムが、シルシエを捕まえようと腕を伸ばしてくる。
巨大なゴーレムから逃げるシルシエは、通路に滑り込むと自分を捕まえようと振られた手を見て、胸を押さえ安堵のため息をつこうとする。
「うわっ!?」
安堵のため息つく間もなく、ゴーレムが通路に伸ばして来た手から逃げるためシルシエは奥へと走って逃げる。




