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ダンジョン シェルシェ  作者: 功野 涼し
鬼と鬼

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29/71

1

 ダンジョン内で命が散るのは日常茶飯事のこと。生きて帰れないことも珍しいことではなく、冒険者チームの一人が欠けたところで不思議に思われることはない。


 あるチームが四人でダンジョン内へ入り、三人が帰って来た。三人は一人が罠にはまって命を落としてしまったと口々に説明する。


 そして━━


「いい奴だったのに」「なんでこんなことに……」「惜しい人を亡くした」と三人は涙を流す。


 周りも悲しむ仲間に同情し、仲間の遺体をダンジョンから出して埋葬してやってはどうかと進める。


 お金を貯めたら必ずやるよと言っていた三人が、しばらくして仲間の遺体回収の依頼を出すことは、至極当然の流れだったと言える。


 冒険者ギルドの受け付けにて目頭を押さえる男は、震える手でパスと自身の名前を書き終えると提出する。


 手続きを終えたパスが、離れた場所で待っていた仲間のもとへと帰ると二、三言、言葉を交わして無事に登録完了してよかったと笑みを見せ、三人でギルドを出て行く。


 それから数時間もしないうちに、ギルドの掲示板に新しい依頼書が貼られる。


『大切な仲間 ボヌーに安らかな眠りを』


 他と比べ、お洒落な言い回しが意識されたタイトルの依頼書は、ダンジョンで命を落とした大切な仲間であり友人のボヌーをダンジョンの外へ連れ出し、埋葬したいというもの。


 彼ら四人のことを知っている者を中心に、探索者や冒険者が友人のボヌーを罠から救い出そうとするが、うまくいかずに断念してしまう。


 いたずらに月日は経ち、時間の経過とともに依頼を受ける者はいなくなり、友人を救ってやれないパスたち三人の苛立ちは積もっていく。


「どいつもこいつも、無理とか言いやがって! 遺体の一つも回収できねえとかそんなヤツは探索者を名乗るんじぇねえ! 役立たずが!」


 柄の悪そうな男が苛立った口調で、怒鳴りながら部屋にあった椅子を蹴って壁にぶつける。


「おい、ラルジャ。そんなに苛立つなよ。椅子だってただじゃねえんだぞ」


 壁にぶつかって転がった椅子を見た、黒髪の目つきの鋭い男のパスが発言すると、ラルジャと呼ばれた男は頬をひくひくさせ苛立ちを露にして睨む。睨み合う二人から少し離れた場所に座っていた小太りの男が口を開く。


「まあ、ラルジャが怒るのも分かるよ。周りのヤツラも心配してるとか言って肝心の遺体回収をしてくれないんだからよ。慰めの言葉はいらないから、結果をだせって感じだよな」


 小太りの男の言葉を聞いて黙る二人だが、すぐにラルジャがパスを再び睨む。


「そもそも、パスてめえが━━」


「っと、そこまでにしておきな。ラルジャ、最終的に決めたのはお前だ。俺に責任があるってなら、お前にも間違いなくある。今ここで俺らが争うことはなにも意味がない」


「ちっ」


 一触即発な雰囲気に、小太りの男がオロオロしていると家の玄関をノックする音が聞こえる。

 これ幸いにと、小太りの男が立ち上がると玄関へ向かいのぞき窓から外を見る。


「こんにちはー、依頼の件でお伺いしました」


 金髪の右目を眼帯で覆う少年が元気よく挨拶をする。


「依頼? こんな子供が?」


 小太りの男は首を傾げつつも、今の険悪な空気を入れ替えたくてドアを開ける。

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