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ダンジョン シェルシェ  作者: 功野 涼し
おちこぼれ

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24/71

2

 ダンジョン内部にある簡易テントの中で勢いよく飛び起きた女性は、あたりを見回し自分のお腹を擦る。


「なんともない……」


 寝袋から這い出て、テントの入口を開け外に出ると、ゴツゴツした壁が目に飛び込みここがダンジョンであることを女性は思い出す。


「んー夢かぁ。それにしてはリアルな夢だったなぁ」


 もう一度お腹を擦り、シャツをめくってヘソのあたりを見つめる。傷一つない自分のお腹を見たあとテントの中を見回して、首を傾げる。


「夢では沼に沈んだリュックもここにあるし、私の体もなんともないし、やっぱり夢かな? ドジな私にこれから起こることを忠告してくれたとか? あ、もしかして予知夢とか特殊な力に目覚めたのかも!」


 リアルな夢でへこんでいた女性は、一転指をパチンと鳴らし自分に目覚めたかもしれない新たな力を想像しテンション高くはしゃぐと、大きく伸びをして支度を始める。


 ***


「あいたっ!」


 天井の出っ張りに頭をぶつけた女性は、前頭部を押さえて目に涙を溜める。


 しばらく歩いて出会ったリザードマンに気づかれそうになって走り、底なし沼にハマると荷物を犠牲にして脱出する。


 そして迫ってくるペンデュラムに腹部を貫かれてしまう……


 腹部に走る衝撃につぶったはずの目を開くと、テントの上部が見える。テントを支える骨組みをじっと見つめて、なにをしていたのかを必死に思い出そうとする女性は、ハッと目を開き、勢いよく体を起こして腹部を押さえる。


「なんともない……」


 テントから這い出て立ち上がった女性は、再び周囲を見回し首を傾げる。


「予知夢……なのかな?」


 お腹を擦りながら呟く女性は、ダンジョンの奥へと進むために支度を始める━━


 ━━腹部に走る衝撃と共に女性は目を覚まし体を起こすと、お腹を擦る。


「ん? 私なにを……あ、そうだ。今日は下の階へ降りる日だ……ん? なんで?」


 自分で自問自答を繰り返した女性は、首を傾げてテントの外へと出る。

 いつもの光景がそこにはあって……


「いつもの?」


 自分の考えと発言に自分で意味が分からず、何度も首を捻った女性は、シャツをめくりお腹を確かめたあと黙ったまま支度を始める。


「今日こそ下に行かないと……」


 なにかに追われるように急ぎ足になった女性が、天井が低くなった道へ差しかかったときだった。


「お姉さん。そのまま行くと頭をぶつけますよ」


 背後からかけられた声に、振り返った女性の瞳に、右目に眼帯を着け、金色の髪をキラキラと輝かせて微笑む少年の姿が映る。

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