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3

 グスターブはにこやかに手を挙げるシルシエを睨むが、鋭い視線に怯むことなく、笑顔のままでシルシエは見つめ返す。


「どこの誰かは知らんが、この依頼には我が家の命運がかかっている。おいそれと実力のない者に任せるわけにはいかんのでね」


 吐き捨てるかのように言うグスターブだが、隣にいた小太りの男が近づくと、なにやらコソコソと話始める。

 ときどきシルシエをチラ見しつつ、話を終えたグスターブがシルシエに近づいてくる。


「子供、顔を上げろ」


 シルシエが言われたとおり顔を上げると、グスターブはじっと見て、観察する。


「その眼帯はなんだ。目は見えないのか?」


 シルシエが頷くと、グスターブはなにやら考え込む。


「年はいくつだ?」


「13です」


 シルシエを見つつ、再び考え込んだグスターブが顎に置いていた手を下ろし背を向ける。


「子供……シルシエとか言ったか。話がある。ついてこい」


 言いながら歩き始めるグスターブに、護衛と付き人が慌てて追いかける。


 その後ろをシルシエは嬉しそうについていく。


 グスターブとシルシエが去ったあと、そこにいた全員が緊張していた体を緩め、大きく息をつくと周囲を包む空気も一気に緩む。


 シルシエが去った方を見ていた、男性は呟く。


「あのグスターブ公に関わるとは、あのボウズ無事に帰れればいいが……」


 ***


 装飾品が数多く並ぶ部屋に案内されたシルシエは大きなリュックを床に置くと、肩を叩く。


「大きなお荷物ですね」


「僕の商売道具が全部入ってますから。肩がこって大変です。この商売道具で、今回の依頼に応えれるといいんですけど」


 案内してくれた使用人の女性が話しかけると、シルシエはにこやかに笑って答える。だが、最後の一言を聞いた瞬間、使用人の女性は目を逸らしてしまう。


「もしかして、見つからない……もしくは見つけてほしくない……なんてこと」


「あ、いえ……私の口からはなにも……申しわけありませんが、私は別の仕事がありますので、これで失礼いたします」


 シルシエの問いに使用人の女性は下をむいて、逃げるように去ってしまう。

 それと入れ替わりにグスターブと小太りの男性が入ってくると、椅子を指さしシルシエに座るように促してくる。


 椅子に座って向き合うシルシエを、今一度観察したグスターブは椅子に深く座るとふんぞり返る。


「私の息子、ライアットの捜索を、探索者であるシルシエに正式に依頼しよう。そしてその依頼の達成条件と、できなかった場合のペナルティだが」


「ペナルティですか? ここグスターブではそれが普通なのですか?」


「ここは私の領土だ。法も私が決める権利がある。そもそもこの依頼をこなせる自信があったから手を挙げたのだろう? ならばペナルティがあろうがなかろうが関係ないだろう」


「なかなかに、傲慢な領主様ですね。そうでもないと民衆は引っ張れないと言ったところですかね。いいですよ、ペナルティも含め条件を聞かせてください」


『傲慢』と言ったシルシエの言葉にグスターブの眉が動くが、わずかに口角を上げうっすらと笑みを浮かべる。

 シルシエも笑みを崩さず、むしろ周りの使用人たちの方が、青ざめた顔でシルシエを見ている。


「依頼達成は単純。私の息子であるライアットを見つけて連れてくることだ。できなかった場合はシルシエを私の息子として向か入れ、跡取りとして教育する。それがペナルティだ」


「ぼ、僕をここの息子にですか? あの、話が見えないんですけど」


 思いもよらない提案に慌てるシルシエだが、グスターブは黙って立ち上がる。


「依頼の説明は以上だ。依頼達成時報酬等については、別の者が説明する」


 シルシエの質問には一切答えず、グスターブは部屋から出ていってしまう。

 残されたシルシエは、目をパチパチさせながらグスターブが出ていったドアをただ見つめる。

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