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 深夜、激しい雨が降る中、森の中を二つの影が走る。ぬかるんだ土に幾度となく足を取られながらも進む影は、大きな木の下に来ると手をついて、ゼェゼェと荒い息と、ときどき嗚咽の混ざった咳をする。


「こ、ここまでくれば……はぁ、ひとまず追っては……ニーナ大丈夫?」


「はぁ、はぁ……んっ、だい、大丈夫です……私よりも……」


 二つの影は互いの心配をし合うと、男性と思われる影は、女性の影に近づきそっと抱きしめる。


「大丈夫、大丈夫だから。絶対にニーナを幸せにするから」


 抱きしめられた女性の影は、開いていた両手を恐る恐る男性の影の背中に回す。


「嬉しいです……嬉しいですけどもライアット様は本当によろしいのですか? 領主様がこのようなことをお許しになるはずがございません」


「様とかやめてくれ。僕は家を捨てたんだ。ニーナと結婚するのに身分が邪魔だって言うならそんなものはいらない。ニーナと僕は同じなんだ。だからどうか、僕のことはライアットと呼んでくれ」


 女性の影は男性を見上げると、胸に顔を埋める。


「はい、ライアット」


 ちょうどそのとき雷が鳴り始め、光った稲妻が二人の影を取り払う。


 二人ともびしょ濡れで跳ねた泥で汚れているが、ライアットと名乗る金髪の男性は高級そうな服を着ており、靴も皮の靴を履いている。


 黄土色の髪を持つ女性のニーナは、使用人の服を着ており、足元も寒々しく、途中で脱げてしまったのか右足は裸足になっている。


「靴が……歩けるかい?」


「はい、これくらい大丈夫です」


 二人は見つめ合うと、激しい風と雨に当てられながらも互いに笑い合う。


「よし、追ってが来ないうちに行こう! 今は嵐だけども、その先には明るくて穏やかな日々が待っているんだ。二人で新しい人生を歩むもう!」


 ライアットの言葉に、頬を赤くしたニーナが頷くと、二人は再び嵐の中を走り始める。

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