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ダンジョン シェルシェ  作者: 功野 涼し
身近な存在
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ダンジョン

 いつの頃からだろうか。この世界の端や影に穴が生まれた。


 扉も何もないただの穴は、人々の好奇心をそそり中へと誘う。


 なんの変哲もない穴を抜け中へ入ると、穴が存在する場所に因んだ世界が広がっている。


 山であればうっそうと茂った森、ゴツゴツの岩や、苔の生えたジメジメした場所。または鉱石や水晶に輝く洞窟。


 草原やジャングルなら、閉鎖された空間に広がる草原、様々な木や生物が密集するジャングル。


 海、川や湖の近くならば理屈は分からないが部屋のなかで波が押し寄せ、どこへ向かって流れているのか分からない川が流れる。ときには部屋いっぱいに水が広がり水槽のごとく中で魚が泳いでいたり━━


 町の近くであれば、誰も住んでいない石出できた建物が壁や床、天井から生え、およそ人が住むことができない、いびつな建物が町を作っていたりと多種多様に富む世界が広がる。


 それら不気味で美しい世界は、ただ見た目で人々を魅了するだけでなく、各場所で取れる資源が人々の生活に豊かさと発展、そして彩りまでも与えてくれる。


 だが彩りばかりではない。


 穴のなかに広がる世界には、地上の獣とは違うモンスターと呼ばれるものが存在して、侵入してきた人々を襲う。恐ろしいまでの強さを誇り、苦戦は必至なモンスターは人々から恐れられる。


 だが、モンスターを討伐すると地上の獣では得られない血肉があり、何よりも魔道具と呼ばれる機械を動かす為に必要なエネルギーを生み出す宝石、モンスターコアを手に入れることができる。そう言った理由からモンスターを旨味と捉える者たちも多くいて、ある種の彩と呼べなくもない。


 そう考えると、一番厄介なのは誰が、なんの目的で仕掛けたかも分からない、罠の存在かもしれない。


 壊しても壊してもいつの間にか復元される罠は、いつでも人を待ち構え、一方的な不利益をもたらす全く旨味のない存在を多くの人は忌み嫌う。


 ただただ人を死へと誘う罠に、凶悪なモンスター、どこまで続き、奥に何があるのかも分からない空間では怪我や体調不良一つが命取りとなる。


 それでも一度中へ入れば豊富な資源と未知の発見にあふれる世界は、いつしかダンジョンと呼ばれ、富や名声を得ようとする人々が押し寄せる。


 それは人の世を大きく発展させることにもなるが、ダンジョンの資源を巡って争いを生みだしやがて国同士の争いへと発展することにもなる。


 各国資源を守る為、質素だった入口には立派な扉がつけられ、守りの兵たちが在住するようになる。


 国によってはダンジョンの入口を中心にして町まで作られる。


 人の夢や希望、欲望に悲しみ全てを生み出し全てを飲み込むダンジョンに挑む者たちを冒険者と呼ぶようになる。冒険者はこの世界で稼げ、人々の役に立つとして、人気の職業となる。


 だが、危険と隣り合わせの職業である冒険者は、華やかな人気の裏で命を散らすことも多い。そんな彼らの消えそうな、または散ってしまった命や、思い入れのある大切なもの、落としたお金までも探すことを専門にする探索者と呼ばれる者たちが現れる。


 探索者はダンジョンの行方不明者を探し救助することもあるが、多くは遺体の場所を確認し伝えたり、遺品を持ち帰り依頼主に死を伝えることが多い。それゆえ、死体をあさり、死をもたらす存在として忌み嫌う者もいる。


 これはそんな探索者の一人である少年の物語━━

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