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翼の行方  作者: カワウソに恋する子
親離れ
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仲良しこよし三兄弟

子の成長は早いもの。一週間も経てば、体は大きくなり濡れ羽色の羽も生え揃ってくる。


俺も含めて三兄弟。差はあろうともみんな一回りは体を大きくなり巣を圧迫する。体が少しはみ出てしまっている。いつ落ちる、とかいう差し迫った状況ではない左側がちょっと寒い。


カラス的な感覚では、結構な高所に巣が作られている。生まれてからずっとさらされているせいで恐怖感は薄れてしまった。某夢の国では女子に負けない事件性の悲鳴を上げたのだが。


ん~暇だ。新しい鳥生ではあるが飛べないことにはどうしようもない。羽を広げれば、艶の有る濡れ羽色は心をくすぐる毛並みだ。隣の弟から苦情が来るのですぐ折りたたむ。どれくらいで飛べるようになるのか。生後一週間と飛んで三日では厳しい。


カラスに別に詳しいわけじゃなかったからな。


弟カラスが毛の添い目にそって嘴を当てる。カラスの毛繕いだ。弟は自主的に日に何回かやってくれる。忘れがちな俺にとってはありがたい。


マッサージに近いかな。自分でも毛づくろいをするけど、人にやってもらった方が気持ち所とかが似ている。


クリクリとして円らな、奥行きの感じる黒曜石のような瞳。吸い込まれる、妖しい光。・・・可愛い。世間からしたら嫌われ者なんだろうけど、可愛いんだよな。こういうところが。


"カアー、カッ"。


弟カラスは首を跳ねるように鳴いて。羽をバタつかせる。


はい、はい。お返しすればいいのね。


弟カラスの後頭部から下に細かく嘴を入れていく。抜けていく毛を取り除いて、変に毛が絡まったりしないように重ならなくして整える。


こうしてせがまれることもあるけど、可愛いものだ。体を俺に預けな。


やられると分かるが、後頭部が一番気持ちいいよかったのだ。時間をかけてやれば気持ちよくなって、どんどん首が短くなって埋まっていく。目はパチパチし始める。嘴も上を向き始めている。


ほれ~気持ちいじゃろ。ここか?ここがいいのか?どうじゃ、どうじゃ。


寝落ちまで持っていったことだってある。弟カラスへの特別サービスだ。・・・仕事完了しょうてん。俺の手にかかればこんなものよ。


"カアァ!カア!"


背中にツンツンと突かれる感触を覚える。毛繕いの強さではない。毛の弾力を突き破ってちょっと痛みさえ伴った。後ろに俺を見下ろすちょっと首を傾けたカラス。


犯人はこの末っ子カラスだ。


このバカっ。やっと弟カラスも寝たのに。大きな鳴き声を出すな。気持ちよさそうに寝てるところで見えないのか。


ブスッ、ブスッ。


突くな。暴れん坊め。俺だって怒るんだぞ!


"カァ!(おい!)カアァ!(聞いてんのか!?)"。


ブスッ。


"カァァ(痛ッ!)"。


末っ子は俺の定位置だった所に堂々と座る。追い出された俺は巣の縁にかぎづめで掴まって立たされてる。もう末っ子の目線は彼方。羽も畳んで体を最小限にまで縮める。早くやれと言わんばかり。ほんとに末っ子は自由気ままだ。


俺の毛繕いを受けたかったんだよね。まぁ、突くのは良くないからね。やってあげるけどね。


後頭部から嘴を入れる。重要のは細かい振動。毛が勝手に整えられるし単純に気持ちいい。末っ子は弟に比べて毛繕いが甘いのでより丁寧にやってあげる。


末っ子は俺の奥義を使っているのに何の反応も示さない。


気持ちがいいはずなんだが。弟がチョロすぎたのかもしれない。今もぐっすり入眠している。


そんなこんなで施術も完了。末っ子は未だに不動。俺の存在などミジンコ並みぐらいにしか思っていない。


"カァ"


末っ子は右の羽で俺を打った。俺の左半身に直撃させた羽で俺は少し体勢が崩れた。ずっと巣の縁に立たされているせいで気が気じゃないっていうのに。暴君ここに極まりだ。落ちてもおかしくなかったぞ。


体を動かすのに人間だった弊害は出ていない。数日で慣れるものだしもうほとんど意識しなくても羽も足も自由に動かせる。


"カァ"


俺がプンプン怒っている所に追撃。さっきより強い衝撃が襲ってくる。こいつめ・・・。


末っ子の羽に嘴を入れ毛繕いをしてやれば、追撃はなくなり首を埋めて欠伸を浮かべる。まだご満足ではなかったらしい。わがままで暴君なんて血を分けた兄弟でも擁護しかねるぞ。


"カアァー、カアー"


末っ子が左羽に、右羽までほぼ全身にまでやっているところで鳴き始めた


まだかゆい所がおありなの?探ってみても正解を引き当てられず、末っ子は天を見上げて鳴き続ける。


つられて上を見上げれば大人のカラス。三兄弟重ねたぐらいの大人カラスは旋回しつつ巣に近づいては、末っ子がさらに大きな鳴き声を上げる。


あの大人カラスは俺らの親鳥だ。そうなれば、ご飯の時間だ!


それにしても末っ子はよく気づいたな。親鳥を見つけて鳴くのはいつも末っ子が最初だ。それに親鳥の姿が見え始める前に鳴かなかったか?


暴君のくせに周りの変化に気づくのは早いんだな。暴君のくせに!


"ブスリッ"


"クカッーー!"


俺は弟カラスをつついて起こした。弟カラスは目も嘴も開いて元気の良い目覚め。


寝過ごしてご飯食いぱっぐれるぞ。ほんとに暢気にしやがって。


弟カラスは親鳥が目につくと羽を広げてご飯だ、喜びを表現する。


寝てエネルギーが充満したのか、その行動はどうも元気に満ちて邪魔くさい。末っ子は文句を言うよりは親鳥に向かってアピール。ご飯の方が重要だ。


確かにな!


"カァァァァァーーーー!!!!"


俺は雄たけびを上げて親鳥にアピールした。

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