前世録
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月を見るとまだ死んだときのことを思い出す。
夢だった。
底なしの暗闇の落ちていく夢。大きな穴だったかもしれないし、絶望のような気もする。
永遠続く浮遊感。安心はどこかへ飛んで、不安がコロコロ転がってくる。
もがいても空気を掴んでだけでどうしよもなくて、最後は力を抜いて諦めた。
死ぬのかな。
けど、よかった。やっと死ねるって心の片隅にあった。
矛盾した気持ちがない時なんてきっとない。義務感とか気持ちが大きい方に傾くだけ。
消化されなかった気持ちは後悔とか嫉妬とかに変わっていくけど、それもまた諦める。
自殺したい。ちょっと違うな。死にたいなって思う時は雨が降るみたいにやってきた。
ただ、体に、本能に、倫理に生かされてただけ。
何度も自分でも心臓が止めれたらなって思った。
花壇の花みたいに勝手に埋められたものに左右されるなんて。
それも諦めた。全部含めて人間なんだって。漠然とオブラートに包めば棄てておけた。
大人になってく実感があった。どんどんそういうものだって思えた。
理不尽も、公平も、平等も、トラウマさえこうだって。これがそうらしいって。
レッテルを張って処理する毎日。
・・・日常はつまらない?
・・・つまら、ない。
世界に無関心になった。諦めて、思考停止して大人になって・・・なって・・・。
真面目に生きてきたつもりだ。ちゃんと責務とか義務をこなした。
小っちゃい法律とか破ったかもしれないけど、迷惑はかけずに生きたよ。
なんでこんなに普通に生きたのにつらかったんだろう。
やっぱり、よかった。
鳥になりたい。転生するならそう決めていた。子供っぽいかな。
願うだけなら許される?誰に許しを請いてるのだろう。
何か一つでも自分の思い通りになってくれてもいいのにね。
カラスがいい。なぜか羨ましかった。
迷路のような地上を行かなくていいから?
円らな瞳で自由に生きてるから?
感覚なんて意味を成さない中、意識は消えた。
※カラスの独白、前世での死に際にて。
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夢を見た。何もない闇に落ちていく夢。
夢占いなら落ちたり、自分が死ぬことは良い事。今の自分へ手向けられるものとは。
人生が無為としか思えないし、一切皆苦で悟れない。
収入が増えようが使い道はなく、仕事に磔にされる。本当に人のためになってるのか怪しい仕事をして、収益がうなぎ上りだろうが、評価が上がろうが、精神的充足が満たされることはない。
全ての感情は慣れていく。最初の驚きが持続されることはない。
ドアが開くこと驚いてたら切りがないし、極端に言えば、歩くたびに驚きやら嬉しさが飛び出る。そんなの不合理でしょ。
慣れは必要不可欠。けれど、私の心を腐らせる。
歓喜も、愉快も、悦楽も上澄みを攫われていく。絶頂はなくなり、厨芥と化す。同じ手は通じないわけ。
その分小説や漫画、創作物は多種多様な世界を持つ。飽きなど理論上来ないのだ!
私の聖書が見つかったように、万人に個性ある聖書だってある!次なる聖書に向かって飛び立つのだ!さらなる高みへ上るために!
・・・だがその遍歴の時間も気力も奪われた。気力は存外バカにできないもので、金縛りのようなポルターガイストは信じない派だったのだが、これはこれは。
ここからいっそう離れて新たな関係性を構築しようと想像するだけで疲労と憂鬱で心が折れる。
諦めに慣れが来たら私は何のために生きている?
何も感じない様は正にこの闇だ。五感さえ奪ってくるか。
私は死ぬみたいだ。
深淵がこちらを覗いていても、こっちからは覗けない。怪物を一目は見てみたかったのに。閻魔様でも仏陀でも、イスラームでもいいんだけど。イスラームは偶像崇拝禁止だから無理か。
これぐらいがちょどいい。
私も自分がこれ以上磨耗していくのは嫌だ。
死ぬって不思議。ふふっ。ちょっと楽しくて、面白い。興味深いの方の面白いね!さすがに不謹慎というものですからっ。今の世の中、簡単に蜂の巣にされるからね。
次があるなら○○が良い。願うだけなら損はなし!
なんだかんだで好きだったから。来世とかいう不確定要素があるのだから。願ってみるものだよ。数多の可能性を網羅するのじゃ!
○○になれますよに。
安らかに意識は凪いだ。
○○の独白 前世で死に際より
これはまた別のお話。
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