弱肉強食
鎌鼬!
魔法は想像が大事!小学生で知ってる大原則!
羽をクロスさせて、刀をイメージして風をこねくり固めて放つ。
厳しい自然に刃向かってみた!命の危険があります。良い子の皆さんはマネをしないようにしましょう!
よどんだ空気が刀の形をして向かっていった。光の屈折率でも違うのか、バレバレだ。
狩人は跳んで避ける。跳んだ先にあるのは樹木を蹴れば、弾丸のようにこちらに向かってくる。それに風でブーストしている、これまでよりももっと速い。
俺は面食らいつつ、枝から飛び降りるように避ける。
後ろから枝をへし折る重低音と落下音が、立て続けに起きる。
"クアァァ~"と驚きと恐怖で変な鳴き声が出てしまう。先手必勝はどこに行ったっ!?先人の言葉なんて信じない!あそこにいたらきっと見るも無残な姿に・・・。体がブルりと震えつつも必死の逃走。
魔法が来るっ。魔力が後ろで集まるのを感じた。
「バアゥ!!」
唸り声と共に乱気流を食らう。
空中に足場を作った時から思っていたが、風持ちだ。飛ぶのがペーペーなの俺はかなりの失速。高度も落とす羽目になる。
攻撃は最大の防御、鎌鼬ッッ!!
オオカミはひと際強く地面に足を叩きつける。足元の地面がうねり、盛り上がる。
まるで陸版の津波。鎌鼬が津波に呑まれいていくのを見届けもせず、俺は反転した。
土まで持ってるとか聞いないし、こんなん反則だろうがッ!地形を簡単に変えるなよッ!
後ろを一瞬見れば、津波の上からオオカミの姿が見えた。首の裏側がチリっと痺れる。息がしずらい。・・・ちょっと高度高いか。
「ルレスオォォーーー!」
大声で横やりに来たのは、ファンシーとファルーム。
一本槍のファルームは魔法を使って加速する。声で俺の名前を言いつつも突っ込んで行くのはオオカミの玉座。一切の躊躇も感じない。津波に突っ込んでいくことを恐れていないスピードだ。
かろうじて、捉えたファンシーの姿は手を構えている。俺に魔法を見せてくれた時を思い出す。
蜻蛉から風の刃が何個も飛び出していく。これまた俺の鎌鼬とは一味も二味も違う。・・・鎌鼬ダサいな。うん。今度からは改名しよっ。
その軌道じゃオオカミは避けるまでもない。コントロール不足か?
その刃は土の津波を切り裂いた。俺の鎌鼬とは違く、容易く切り開いていく。オオカミの足場はなくなり、諦めて土の津波から跳んで離れる。
だが、そのオオカミは風も持っているのだ。足場だって作り放題。伝えてあげたいが、俺の方から精神感応を繋げることはできない。
オオカミが足場を作り、ファンシー達と交差する。そこでどうなるか。・・・怖すぎ、見れないよっ!
ところが現実は裏切った。
崩れていく土の津波もオオカミも全てを飲み込む、渦潮。
ファンシーの手から出る大量の水は渦を巻きながら広がっていき前方全てを覆いつくす。この波状攻撃をあのオオカミに逃れる術はないだろう。
バシャッ!と音がすれば、オオカミが地面に叩きつけられていた。
「大丈夫っ!?傷とかはない!?」
顔をくしゃくしゃにしながら、駆け寄ってくるファンシー。俺に抱きつくようにして、体の隅々まで調べてくれる。こんな美人さんにここまで心配されるなんて嬉し・・・かったかもしれない。
後ろに水球に包まれたオオカミ。気泡を吐きながら、必死に犬かきをしているがその足がだんだんと重くなっていく。・・・背後で確殺をされたら、素直に喜べないって!
ファンシーは動きが止まったのを見て、地面に、ダンッとオオカミを落とす。
這いるように土がオオカミを包んでいく。大地に飲み込まれた、オオカミの痕跡は一欠片もない。これも自然の厳しさ、弱肉強食だ。
これは、蜻蛉か。・・・みんな二属性じゃん。
ファンシーはおもむろに取り出すしたのはビロクワの身。腰に掛けていた短剣でビロクワの実を切り裂く。同時に甘い香りが周囲に広がる。え、勿体無い。
「匂い消しも完了。多少の時間稼ぎにはなるでしょ。今度こそ、見つからずに帰るわよ。-もう!どれだけ食いしん坊なの?」
「いや、変にビロクワの実があったら怪しまれちゃうよ」
うま、うま。疲れた体には甘いもの。自然に感謝!感謝!次はいっぱい食べたいな!
「・・・お腹を壊すなよ」
じゃあ、先に生肉の件で一緒に抗議しましょうよ。