従魔宣言
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親鳥から慈しまれていることが分かる別れの言葉。
さすがの俺も逃げる足を止めて、その大空に羽ばたいている親鳥を見た。どこか遠かった無機質な黒い瞳は、今確かに熱を帯びていた。森へ帰る背中も雄大な自然みたいだった。
ふぅぅぅーーはぁ。
説教回避や、それに独り立ちも認めてくれた。
も~う最高じゃない!やーね、もうあんなに怒ってたから巣でお説教かと思っちゃたじゃない、ホントに
!それならそうと早く言ってよね!胸を張って送り出してあげるって。世話ないわね。
薄紫の髪を揺らしながらこっちに走ってくる人。読心術使いの人だ。
無理やりながら、物理的にも精神的には背中を押した人でもある。あなたのおかげで怒られずに済んだぞ。よくやったっ、褒めて遣わす!
んで、俺はここで暮らすのか?
まぁ、嫌になったら逃げ出そう。深く考えるのめんどくさい。
小人に会って命の危険を感じて、親に怒られるのから命からがら逃げて。ちょっと人生が濃すぎるから。
休憩取ろう。休憩。
ちょっと焦りすぎ、ゆっくり行こうぜ。急かす男はモテないであるぞ、って言ってた、デュフデュフ挟みながらオタク友達が。
後は任せたぞ、薄紫の。
飛ぶ練習してた時から眠かったんだ。色々あったせいで寝れなかったけど。
ってことで俺は睡眠体制に入る。では、いざシャットダウン~。
羽を広げて大の字になって意識は泥に沈んでいった。
-いつも思っていたことがある。
俺の両親は平均寿命より早く死んだ。
父が交通事故で死に、慰謝料としてお金が多くは入った。
金で癒されることはなく、母は年は取るごとに枯れ枝のようになって父の死から数年で静かに息を引き取った。
仕事で管理に手が回らず実家を仕方なく売り払い、一人でマンションに住む。
マンションは宿ではあったが、家ではなかった。マンションは俺がいてもいなくて何も変わらない。
マンションの中は酷く退屈だった。
そう思っていた。
パチッ。
真上から感じる太陽光。重い瞼を何度も瞬めかせる。
寝覚めは最悪。後味の悪い感情だけがしこりのように残っている。
フルゥ、嘴からちょっと空気を抜く。こんな鬱屈なのは転生後初めてかもしれん。巣では、弟と末っ子どっちかがうるさかったからな。
居るのは、厩舎?牛舎?
移動させてくれたのはいいんだけど・・・。
ビュービュー。俺の羽毛が揺れる。
せめて雨風凌げる所がいいな!
こちら前世人間であります。基本的人権?を主張するであります!衣・食・住!衣・食・住!
何?巣では凌げてなかっただって?
兄弟で身寄せ合ってたから寒くないし、真ん中なら風が受けないし、思ったより葉っぱで雨凌げんだよ!
カラスあんまり舐めとるとな、お前ん家の前のゴミ置き場荒らすぞ。それに朝チュンチュン鳴いてくれるスズメいなくなんぞ。
さてと、牛舎?厩舎?から出ますか。
プールのシャワー室みたいな、足と頭がちょっと見える板をギコギコ押し引き。
・・・動かない。
羽を自由に広げてられないのがこんなにも不便とは。ん~むずむずする。お花摘みを我慢してる感じ。
まぁ、俺のカラスだからね。
あ、てぃ!バキッ、カラン、カラン、カラっ。
結構吹っ飛んだな。
あ、なんか板が外れちゃったぁ~。なんでなんで?経年劣化かな?メンテナンスはちゃんとしなきゃ、めっ!だぞ。
勝手に道が開けたので堂々と出ていく。
我、自由なり!右羽、左羽、展・開!(バサッ)
「@\%\/\!!」
右羽に何かが当たる感触。いきなり上げられる大声。
右を見れば、腕を押さえている薄紫の髪の女性。眉は下がり目も据わっている。
俺は一目散に頭を下げた。嘴が地面に何度か突き刺さろうと気にしない。
おそらく、目を覚ますのを野宿して待っててくれたのだ。毛布だって被っている。最初に会った時も心配してくれていた。
そんな恩人を殴るなんて、ヒモでDV彼氏のダブルパンチ並みに最低だ。
"大丈夫よ。悪気はなかったんでしょ"
恩人は土を払いながら立ち上がって俺のカバーまでしてくれる。
そして、美人!親に必死だったとはいえ、こんな美女を見逃しているとは!?
ああ、女神はここにいらっしゃたぞ!
神と会うまで、一人生と一か月の鳥生。今思えば、短く長くも思えます。俺、ここで死ぬんだあぁぁぁ!!
"ねぇ、私の従魔にならない?"
ありがたき、神の御言葉。
"-なります!ぜひ!"
返事は決まっている。
んで、俺は何になったんだ?
ここで一区切り!一章-巣離れ完結になります。
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二章は町で色々します。