表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
翼の行方  作者: カワウソに恋する子
親離れ
10/27

親鳥召喚

待って、一回待って。


すうぅー


いたいけで無害で無垢なカラスを殺す気?気狂ってんじゃないの?ねぇ、俺危害を加えたかな?カッコいい着地の仕方を披露してあげたのに地面に弓矢打つとか失礼すぎん。明らか威嚇だよね。警察がする威嚇射撃みたいなもんでしょ?俺怪しい素振りしたかな、ねぇ?ねぇ?


ハァァ、スゥゥ


それにいきなり叫びのやめて。怖い。メンタルが豆腐兼風船の人も考えて。プレッシャーですぐ潰れるし、いっぱいいっぱいになるとメンタル吹っ飛ぶか弾けるんだから。後あのクソパワハラ上司の顔がチラつくようになるからやめて。一瞬顔を見るだけで三日は安眠できんくなるの。え、聞かせる?俺のクソ野郎への愚痴なら三時間はいけるけど!


なんて言ってみてぇ。言えない、言えないよ。


だからメンタルが豆腐兼風船だって言ってんだ!文句あんのか。


だって弓矢構えられてさ、わざわざ二本持って予備まである。こんな翼と足じゃ刺さった矢なんて抜けないし。ジワリジワリと死にたくはない。殺るんだったら急所で。失血死とかはお断りな。


まぁ、どっちにしても死にたくない最優先で。とりあえず、静止。そう、無害。そして木、呼吸もしない無機物。


ッやばい。眠くなってきた。


蛇に睨まれた蛙なのに俺、すんげえ眠い。学校のプール終わったら後ぐらい眠い。逆に俺、肝座りすぎだろ。


死に鈍感になってきたのか?う~ん、命大事にからすると良くないことだよな。


んで、俺はいつまでも静止してればいい。男の弓を構える手に血管は浮き、微動しつづけ、殺る気は一切衰えない。


男の口が開いた。開いたまま止まり、息を吸うのでもなく何かを言うわけでもない。


「×'"|、@+%&=@1@?」


一度止まりながらも、たぶん早口で何かを言った。


俺は首をかしげることしかできない。


さすがに異世界では使う言語は違うようだ。前世でも国ごとに違うんだし、俺の分かる言語(日本語だけ)であるのはご都合主義すぎる。


男は弓を捨てて走り出した。もちろん、俺から逃げるように。脱兎の如く、つんのめって転びそうになっている。


気をつけてな~。


命は助かったので暢気に翼を振ってみる。こっちを振り返りもせずに逃げるのでちょっと悲しい。


まずったか?どうにかして敵意がないことは伝えたほうがよかったか?


元人間だし、人間とは仲良くこの鳥生は生きていきたいのに。


一応、男たちの痕跡は追えるか。精悍な男たちの足跡は力強くくっきりと残っている。


けれど弓の件しかり、万が一がある。


最後の言葉も罵詈雑言とかお前、覚えてろよ発言かもしれんし。人間は思い込みが激しいからな。人間の数には勝てないし。


そうなったら、逃げるが勝ちよ。


飛ぶのに疲れた。なんか魔法を使うのに踏ん張らなくちゃいけない。今日の練習開始した時から明らかに労力がかかっている。


魔法にもやはりエネルギーが必要みたいだ。


万が一の場合は飛ぶのが生命線になりそうだし温存。


飛ぶのは甘え。ちゃんと歩かないと。


歩くの~大↑好き~蜘蛛の巣↑抜けて↓?~俺のねどこ↑どこ↑?


あ、森の抜けた。


ワンチャンこっちの方が安全か?木の上で隠れながら寝たほうがいいか?戻るのメンド~。


親鳥から唐突に来たハイジャック。


"ッッッ!!"


・・・これ怒ってるよな。怒ってるのレベルじゃなくて怒ってるんですけど!


お母様のお顔がドアップで、眉間にしわが寄り集まってる。


暴君末っ子を怒った時の比じゃねぇ。ハハ、カラスでも汗ってかくんだな。背筋も凍るし。


ヤバイ。親鳥の顔が脳裏にこびりついてやがる。


今も必死に探してくれれるのかな。


きっと優しいお母様は首だけ咥えて巣に連れ戻してくれそうだ。


ここで負けたら、俺はまたお利口さんになっちまう。


けど、それは俺の意思じゃない。


この世界の人間をもっと見たい。この世界の文化とか祭りとかきっと面白いものがある!


それに、それに、これ以上怒られんのはいやだ!鳴き喚いちゃう、俺。


よし、よし決めたぞ!長男の尊厳を保ったまま逃げるんや!


逃げきるために。いつか帰りたくなった時に、またこの場所に来よう。


俺は振り返って一礼した。


そして前を向く。


、、、可愛い女性が現れた!


森で会った男と同じぐらいの小人の女性。


いつの間にという驚きはすぐさま塗り替えられる。


"こんにちは。体は大丈夫?痛くない?"


-うわ!びっくりした。や、やんのか?


"何をやるの?私はあなたと仲良くなりたいだけなのに。"


心を読まれてるの!?いつの間にか目の前まで来ていた女性。


足を組んで体を傾けると、前世ではなかな見ることのなかった薄紫色の髪が揺れる。目線は合えば口角を少し上げる。


ニコニコと穏やかに笑う彼女はこちらがカラスということを感じさせない。花畑を歩くように近づいてくる。


"ここまで大変じゃなかった?"


心が読まれてるの時の対処法教えて、グー○ル!。実は一番のチート説ないですか、読心術って。


あのあなたって味方ですか!?できれば、それ以上に近づかないでもらってもいいですか!


筒抜けなら全部言ってやるよ!全人類素直な方が好きだろ。全部ぶちまけてやるよ!よし、今からぶちまけるからな。覚悟しておけ!


"-そこでじっとしてなさい"


横に大きな黒い影。俺の森の中で見せたカッコいい着地術を超えるスマートな完璧な着地。


これは・・・親鳥!


まずいまずいまずいまずい。なんでここが分かってるんだ。


なんか小人がぞろそろと。森やらなんやら出てきている。なんか小人と親鳥が向かい合っている。


ここままじゃ絶対連れ戻される。つまり、死《説教》。


嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。なんなら死ぬことより嫌だ。


"ねぇ、お姉さん聞こえてる?"


"・・・"


あんちゃんが頼みの綱なんやけど!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ