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99話 重なりしアドヴァーサリー part5

 「ふぅ……とりあえずは何とかなったってところかしらぁ?」

 「どうかな? まだ油断は出来ないが……」

 氷像となった『霊獣の意思(ベヒーモス)』の周囲に、カードを何枚か設置しながら話す二人。

 凍り付かせたとはいえ、その生命活動を終わらせたわけではない。未だ予断を許さない状況なのは変わらなかった。

 「魔力の量、質ともに差があり過ぎる。この戒めを解かれる前提でいなければな」

 「ワタシとしては、このまま放置してダーリンの所へいきたいのだけれどねぇ……」

 それは下策である。確かに、往人ゆきと一人をウートガルザと戦わせてしまうのは心配であった。

 だが、それ以上に不味いのは、ウートガルザと『霊獣の意思(ベヒーモス)』が合流してしまうことだった。

 そうなれば、アイリスとリリムスどちらが往人と『霊衣憑依ポゼッション』したとしても勝つことは一気に難しくなる。

 ならばここで往人を信じ、目の前のバケモノを確実に始末した方が勝ちの目はあると踏んだのだ。



 「でも、コイツ動かなそうよぉ?」

 「微かに魔力の流れは感じる……恐らくはこちらの油断を誘っているのだろう」

 心底、アイリスは氷像の中のけだものの事を恐ろしいと感じた。

 甚大な魔力を有し人間を容易に操る意思、さらには策まで講じる獣など聞いたこともなかった。

 「ワタシは心当たりあるけどねぇ」

 「なに?」

 そんなアイリスの心中を読んだかのように、リリムスが言った。

 「多分、この獣はベヒーモス。大昔の文献に書いてあった霊獣と呼ばれるヤツよ」

 「霊獣……ベヒーモス」

 分厚い氷に触れながら、その名を口にする。確かに倒すべき敵なのだが、なぜだかその名に神聖さすら感じる自分がいることに驚くアイリスだった。

 

 ――ピシシッ!


 そのとき、やはりというべきか待っていたというべきか氷にヒビが入り始める。

 それも内側から押し破るようにどんどん広がっていく。もはやあと数秒も持たないほどだった。

 「くるぞっ!」

 「大人しくしていればいいのにぃ!」

 氷像が粉々に砕け散り、月明かりに照らされた欠片がキラキラと幻想的な光景を作り出す。

 そして、その中央で大きく口を開け咆哮する獣、『ベヒーモス』のその意思が二人を睨み据える。

 もちろん、魔力で形成された肉体に瞳と呼べる器官は存在しない。それでも、そう思わせる威圧感を二人は痛いほどに感じていた。

 


 「さて……向こうは相当にお怒りのご様子だが?」

 「だとしても、ワタシたちのやることは変わらない……でしょう?」

 リリムスが杖の先を地に向け、魔力を注ぎ込む。

 強烈な光を発し、『霊獣の意思(ベヒーモス)』の周囲に配置されたカードが大爆発を起こす。

 「ガァアアアア!!!!」

 連鎖する爆発に飲み込まれ、身動きを取れずに吠える『霊獣の意思(ベヒーモス)』。

 それでも、二人の顔は明るくはならない。この程度では足止めにしかならないと分かっているからだ。

 「もうすぐ爆発も収まるわぁ」

 「ああ、この先はタイミング勝負だ。失敗すれば私たちは死ぬ」

 それでもやらなければならない。勝って生き残り、またあの少年の笑顔を見るために。


 爆発の煙が晴れるよりも早く、二人は『霊獣の意思(ベヒーモス)』へと走り出した。

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