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95話 重なりしアドヴァーサリー

 ウートガルザが斜面を往人ゆきとと共に転がり落ちていくのを、唖然と見送るアイリスとリリムス。

 だが、すぐにハッとなって追いかけようとする。

 「ユキトッ!!」

 「ダーリンッ!! ……っ!?」

 駆けだそうとした瞬間、二人の眼前にバールとハンマーが振り下ろされる。直撃する寸前で体に急制動をかけ、何とか躱す。

 虚ろな瞳をしたクロエが、二人の侵攻を阻むように立つ。

 「アナタ……」

 「クロエ、邪魔をするな!!」

 


 しかし、彼女は答えることはなく両の手の武器を振りかざしながら二人へと襲い掛かる。

 元々、かなり速い攻めをしていたクロエだが、それを差し引いても異様なスピードだった。

 身体能力を魔法で強化していても説明がつかないほどの速度。まるで、クロエの身体能力に何か上乗せしているような。

 「まさかっ!?」

 「霊衣憑依ポゼッション!?」

 もちろん、クロエがそれに答えることはない。だが、二人には確信めいた推察だった。

 自分たちも『契約』しているのだから。『勇者』と信じた少年に力を貸し、共に戦っているのだから。

 「でも、だとするならコイツは誰と契約しているってのぉ?」

 超高速で迫るクロエに、杖から放つ雷球で牽制しながら言うリリムス。アイリスと距離を取って挟撃しようとするが、相手のスピードを上回ることが出来ないでいる。

 「分からん。ウートガルザにでも聞くんだなっ!!」 

 逆手に持ったハンマーの横振りを剣で弾きながら答えるアイリス。

 彼女にも、まるで獣のような動きをする戦い方の者に心当たりはなかった。


 当然、二人は知る由もない。クロエが『霊衣憑依ポゼッション』させられているのが、『天族』も『魔族』も超えようかという偉大なる獣、『霊獣ベヒーモス』だということに。

 

 「でもこの、あの男の所へは行かせる気はないわよ……」

 クロエが一瞬身を低くかがめると、一気に急加速して二人の視界から消える。

 木々を飛び移っているのだろう、その音だけが二人の耳に届いてくる。

 「っ! そこだ!! ……なっ!?」

 それでもアイリスは自身に迫る影へと反応して剣を振るう。しかし剣と打ち合ったのは、ハンマーだけだった。

 その僅かな思考のスキマにもう片方に握られていたバールが迫る。ギリギリで直撃は避けられたが、左肩に傷を受けてしまう。

 「ちょっとぉ、大丈夫!?」

 「かすり傷だ……まだいける」

 応急的に回復魔法を施し、右手で剣を握りしめるアイリス。

 リリムスの回復魔法に頼りたいとも思うが、クロエはそれを許しはしないだろう。



 「あのスピードをどうにかしないと、私たちは負けるぞ」

 再びクロエの姿が視界から消える。音だけが響き距離を詰めてくる。

 「だったらぁっ!!」

 影がまたアイリスへと襲い掛かる寸前でリリムスが叫ぶ。

 今度は握られていたハンマーが二人を包むように展開された防御魔法で阻まれる。

 「むっ!?」

 一瞬だけ驚きの声を出すと、すぐさま障壁から後退するクロエ。

 それに遅れてほんの数瞬、アイリスの斬撃が空を斬っていった。

 「障壁を解除する僅かな時間で逃げられちゃうわねぇ……」

 相手のスピードもそうなのだが、反応速度も桁違いなのだ。ほとんど反射神経で動いているのではと思わせるほどである。

 「……ねぇ」

 「なんだ?」

 リリムスが何かを思いついたように、アイリスの顔を見る。

 

 「次にあのの姿を見たら、迷わず剣を振れるって約束できるかしらぁ?」

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