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93話 終り迎えしベトレイヤー part6

 「テメェ……」

 鉄の味がする唾液を吐き捨てながら、往人ゆきとは剣を構える。

 敵の狙いは最初から往人と、二人の分断。それも、ウートガルザ自身が往人と戦うことを目的としていたのだ。

 「これで霊衣憑依ポゼッションも出来ませんねっ!!」

 戦斧から風の刃を連続で放つウートガルザ。木々を薙ぎ倒す刃は縦横無尽に往人へと襲い掛かる。

 「っ!? くそっ!!」

 閃く青い刀身が、迫る風刃を斬り裂き砕いていく。しかし、笑うのは防がれたウートガルザで往人は苦い顔をしている。

 「遊びやがって……」

 そう。今の攻撃は完全に、往人が防ぐことを前提にしたものだった。往人の力量を分かったうえで、防ぐことのできる場所へと迫ってきていた。

 「どうです? 少し僕と話しをしませんか?」

 「何を言っている……?」

 唐突なウートガルザの言葉に、往人は思わず手を止めてしまう。しかし、すぐに剣を構えなおしウートガルザの顔目掛けて斬りかかる。

 「お前と話すことなんて何もない! 何を企んでいようとここで殺す!!」

 


 逆袈裟に振り上げられた剣だったが、ウートガルザがほんのちょっと後ろへ体をずらすだけでスレスレを通過する。

 その勢いのままに往人は返す刀で、ウートガルザの蹴りをもろに腹部へと受けてしまう。

 「ぐえぇっ!?」

 胃の中のものが逆流してきて、口の中に苦いような酸っぱいような味が充満する。

 そのままそれを吐き出して、敵の前だというのに膝をついてしまった。

 「ふぅ……やはり素人ですね。どうです? 力量差もありますから、話しを聞くだけでも?」

 「……お前に何のメリットがある?」

 それだけ絞り出すと、ヨロヨロと立ち上がり剣を構える往人。闘志こそ失っていないが、苦痛で剣が少し震えていた。

 「貴方は他の異界人とは少し違うようですからね。その強さの秘密を知っておきたいと思いまして」

 「俺が強い?」

 それはアイリスにも言われた言葉だった。だが、その秘密も往人には答えようがないものである。

 本人すら分からないことをどうやって伝えることが出来るのか。

 


 「ええ、ですがその表情、貴方自身もあまりわかってはいない様子ですね」

 それに気が付いたのか、ウートガルザは少しつまらなそうな声色で言った。

 「ふむ、上手く行けば実験に使えるかと思いましたが……どうしますかね」

 「実験……人間を使って、お前は何をする気だ!」

 往人の言葉にウートガルザは薄く笑う。そして、アイリスとリリムスと戦っている、戦わされているクロエのいる山の上へと視線を軽く向けた。

 「霊衣憑依ポゼッションの可能性の実験ですよ」

 「ポゼッション?」

 往人も使っている、契約を交わした者と魂を重ね合わせる秘術。使用者に莫大な力を与える魔法だが、上位者であるウートガルザに何かメリットがあるのだろうか。

 「フッ、人間と霊衣憑依ポゼッションするのが目的ではありませんよ。僕の目的は彼女に憑依させてるモノですから」

 往人の考えを見透かしたように笑うウートガルザはそう言った。

 「クロエに何を憑依させているんだ……?」

 「随分と聞いてきますね。まぁいいでしょう……」

 少し言葉を切り――


 「あの娘に霊衣憑依ポゼッションさせているのは……霊獣ベヒーモスですよ」

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