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91話 終り迎えしベトレイヤー part4

 再び訪れた社。

 月明かりすらも届かない森の中は、灯された灯りがなければ歩くことすら困難だった。

 だが、社の周りだけはぼんやりと明るさが存在していた。

 「……お早いご到着で」

 社の影からゆっくりと姿を表すのはウートガルザ。身代わりなどではなく、間違いなく本人だというのを裏付けるかのように、アイリスの指先の光が激しく明滅している。

 「互いに言葉は必要なさそうですね」

 「そうだな」

 

 ─―ガキィィイイイインンンン!!!!


 激しい金属音が木々を揺らす。

 ぶつかり合ったウートガルザへ向けて、往人ゆきとが横から駆け寄り剣を抜き放つ。

 「卑怯とは言わないよなっ!!」

 真一文字に振られた剣は、ウートガルザの右腕を浅くではあるが斬り裂いた。

 「おのれっ……!?」

 一瞬、ほんの一瞬ではあるが意識が右腕に走る痛みに逸れる。その一瞬は致命的には長すぎるほどだというのがウートガルザ本人にも分かりきっていたのに。

 「はぁああああ!!!」

 渾身の力を込めたアイリスの斬撃に戦斧が押し込まれる。押し返そうにも、右側からは青き斬撃が、左からは魔法の連弾がそれぞれ襲ってきて集中させようとしない。

 「このっ……舐めるなぁあっ!!!」

 戦斧の刃先が一瞬で青白く発光し、ウートガルザの振り回しに合わせてそのまま大爆発を起こす。

 凄まじい熱波が三人へと襲い掛かり体を吹き飛ばす。

 「流石にやりますね。霊衣憑依ポゼッションを中心に攻めるかとも思いましたが……」

 


 その言葉に答える声はなかった。

 変わりに飛んできたのは聖なる白き力が込められた斬撃。

 「くっ、ホントに会話をする気がないんですねっ!!」

 戦斧がアイリスへと横薙ぎに振られる。それを剣で受け流しつつ上へと跳んで躱したアイリスへと、蹴り上げた足から雷撃が迸る。

 「チッ……」

 「うぉおおお!!」

 雷撃を剣で斬り裂いたアイリスに逆手持ちにされた戦斧が迫る。

 だが、背後に回った往人の剣が勢いよく突き出される。

 「フッ、奇襲が何度も通用するとでも?」

 背中に剣が突き刺さる寸前、聖なる魔力の結晶となった障壁が展開された。

 「くっ……」

 「そうやって、悔しがる暇はないですよ!」

 逆手に振られた戦斧はアイリスに躱される。しかしそれが狙い。

 そのまま戦斧の重みを活かした回転で、往人の体を両断しようと凄まじい速度で狙う。



 「まだだっ!!」

 両手で握った剣を力の限り突き出し、迫る戦斧とぶつけあう。

 「なっ!?」

 当然、それだけで戦斧を止めることが出来るわけではない。しかし、そのまま振り切られれば物言わぬ肉塊が二つ転がっていただけだろう。

 剣の一撃でそれを防いで見せた往人のセンスの高さに、ウートガルザは改めて戦慄した。

 防いだこと自体にではない、剣を突き出して防いだことに戦慄したのだ。

 通常、剣で何かを防ぐ際は剣を縦に持って受け流そうと構える。しかし、往人はより難しい突きの構えで防いだのだ。

 戦斧が正確に狙うことを見越していなければ出来ない、そうであったとしてもまず選ばないであろう択を取ることのできる、そのセンスにウートガルザは底知れない恐怖を覚えた。

 「まさか人間如きに……」

 「ぐぅう……お前だけは、殺す」

 静かに、しかし明確な殺意を込めた視線を向ける往人に、ウートガルザは苦い顔をする。

 普段なら、単なる虚勢と切り捨てるが今回は違う。言葉を現実にするようなスゴ味が目の前の人間から痛いほどにウートガルザへと突き刺さる。

 「そうですか……だったら、貴方の相手は別に用意するとしましょうか!」

 ウートガルザの指が乾いた音で鳴り響く。

 往人たち三人がその音に一瞬耳を傾けたそのとき、

 「はあっ!!」


 短く鋭い叫びとともに振り下ろされたのは、刃がまるでノコギリのようにギザギザとした片刃の剣だった。

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