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89話 終り迎えしベトレイヤー part2

 「あの男を殺すのはいいけど、どこにいるか分かっているのぉ?」

 今まで戦っていたのは身代わり。本人はどこか別の場所にいる。それを見つけなくては、殺すも何もなかった。

 「問題ない。鏡合わせの魔法にはもう一つ、欠点がある」

 その欠点とは、魔力の性質もトレースしてしまうことだった。

 通常、魔力というものは個々人によって微妙に違いが存在する。指紋のように、一つとして同じ性質の魔力は存在しない。

 だが、『鏡合わせの魔法』は対象となる者に自分を重ねる魔法。すなわち、魔力の性質すらも映してしまうのだ。

 「鏡合わせの魔法自体、相当に魔力を使う。これだけの残り物があるなら場所を特定することは可能だ」

 そう言って、アイリスは最初にウートガルザ、もとい名も知らぬ中年男が立っていた場所へと近づく。

 指先に微かに灯った小さな魔力の光が、その場所へと近づけられた瞬間、濃い緑色に輝き始めた。

 「この光が奴のいる場所へと案内してくれる」

 指先を軽く動かすアイリス。方向が変わるたびに、緑色の光の濃淡が目まぐるしく変わっていく。

 「濃くなる方向へ向かえばいいんだな?」

 「そういうことだ」

 最も色が濃くなる方向、『レーヴァテイン』が安置されていたあの社があった方向を指先の光は指し示した。

 


 「あそこにいるのか……?」

 すでに『聖剣』はアイリスたちの手にある。そもそも、アイリスはおろかウートガルザも『聖剣』を使うことは、あの時できなかった。

 『魔族』と『霊衣憑依ポゼッション』した人間である往人ゆきとがかろうじて普通の剣として使うことができたのみ。

 今更、あの場所に何があるというのだろうか。

 「なんでもいいさ」

 往人は言った。ウートガルザの思惑も、行動も、もはや関係ない。他者を愚弄しきったその罪の贖いをさせるだけである。

 「あいつが何をしようとしていても、それを上から叩くだけだ」

 「よし、行くか」

 歩き始めた往人の後を追うように、アイリスとリリムスも歩き始める。

 そのとき、リリムスがふと思いついたように言った。

 「ねぇ、その追跡用の魔法があるなら、最初に戦った時に使えなかったのぉ?」

 確かに、社で初めて会った時にもウートガルザとは戦った。そのとき使われた魔力を追えば、もっと早く場所を特定出来てもいただろう。

 アイリスはその言葉に、バツが悪そうに頬をかきながら言った。

 「天族はこういった追跡用の魔法を上手く扱えない。それこそ、鏡合わせの魔法のような莫大な魔力を使ってもいないと追えないんだ」

 


 『天族』は『魔族』とは違い、どちらかと言えば戦闘に特化したような種族である。

 それも『魔族』のような属性魔法ではなく、自身の身体能力を上げ近接戦闘をより効率的に行えるように鍛錬する事がほとんどである。

 その為、補助的な魔法を扱える者が極端に少ない傾向にある。

 同じ天族同士で戦うことはほとんどないし、『魔族』と戦うときもその強大な魔法で追跡も容易と、そもそも高精度な追跡魔法を使う土壌がなかったのだ。

 「脳筋ねぇ」

 「何を……」

 お決まりの言葉に文句を付けようとしたアイリスを、指で制すリリムス。


 「ウートガルザはその辺も考慮して行動していると見えるわぁ。考えなしではコッチが死ぬわよ?」

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