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75話 偽り暴きしセイクリッド part5

 山を駆け降り、クロエを探す三人。とはいえ、残り十五分もない中で見つけるのは相当に厳しかった。

 「いくら小さい島でも、骨が折れるわねぇ」

 体力に自信のないリリムスが真っ先に音を上げた。

 「何を悠長なことを。早く行くぞ」

 「ちょっと待ってよぉ。そもそも、交戦記録をあのオンナに渡して何になるのぉ? 他国の連中との渡りをつけてくれそうもないわよぉ?」

 確かに、と往人ゆきとは思った。正式な要請でもあれば別だろうが、クロエは独自に行動をしている身である。情報の擦り合わせが出来ているとは考えられなかった。それに、彼女自身にもあまり協調性があるとも思えない。

 「そんなヤツを必死こいて探す意味ないんじゃなぁい?」

 息を整えながらリリムスは言う。

 「それよりもぉ、島民を起こした方が手っ取り早いんじゃない?」

 「え? そんなこと出来るのか?」

 多分ねぇ、と頷くリリムス。

 「この魔法の発生点から逆算すればいけるはずよぉ」

 それを聞いて肩を落とすアイリス。往人も肩透かしを食らった気分だった。

 「あのなぁ、発生点は見つかってないじゃないか。あと十分もないのにどうやって……」

 アイリスの言葉に、指を小さく左右に振るリリムス。

 


 「フフン、分かってないわねぇ脳筋女神サマは。あの天族の男の魔力波形を辿れば発生点を割り出すなんて造作もないわぁ」

 そう言って『魔導書』と杖を取り出すリリムス。

 行使するのは『探知の魔法』。本来は失せ物などを探す為の初級魔法だが、『魔王』が使えば魔法使用者の魔力波形を辿って、過去の魔法発生点を探る事も出来るのだ。

 「と、いう訳なので発生点は……見つかったわぁ」

 杖の先が薄紫に明滅する。

 「これはラッキーねぇ。すぐ近くだわぁ」

 だが、そう上手く事は運ばない物。すぐそばの民家の壁が轟音を立てて崩れ去る。

 そこから飛び出てくる二つの黒い影。

 「ガァアアア!!」

 「このっ……ケダモノがっ!」

 覆いかぶさるように飛びかかる中年男の腹をクロエが思い切り蹴り上げる。

 吹き飛ばされた男は民家に開いた大穴へと突っ込んでいった。



 「なっ……!?」

 「クロエ!?」

 「ああ、もう! ジャマばっかりしてぇ!」

 あのままずっと戦っていたのだろうか、クロエが纏う外套は所々に破れやほつれがあり、可愛らしいその顔もあちこち血が滲んでいる。

 「貴様らか。それで? 大規模魔法障害の手掛かりでも見つかったのか?」

 そう言いながら地面に転がるノコギリを拾い上げるクロエ。中ほどから折れて、先ほどの半分ほどの長さになってしまっている。

 「フン、おかしなヤツとはいえ、オヤジ相手に随分手こずっているじゃなぁい? 機関員サマ」

 「貴様に問う。挑発と受け取っていいのか?」

 馬鹿にしたような言い方が気に障ったのか、折れたノコギリの切っ先をリリムスへと向けるクロエ。

 だが、そんなことでは『魔界の王』への牽制にはならない。逆にノコギリを掴み取り、顔を近づける。

 「あら、ワタシとやり合うつもりぃ? いいわよぉ、コロしてあげる」

 「よせっ!! 取りあえずはあの男を何とかしないとだろ!」

 待っていたかのように男が穴から飛び出てきて、クロエの喉笛を喰らいちぎろうと大口を空ける。

 不健康そうに黄ばんだ歯と、ネバつくように垂れる唾液が不快感を煽る。

 「チッ……させるか!」

 往人は腰の剣を抜き、男目掛けて思い切り振る。斬撃が男の肩を斬り裂いた、はずだったのだが。

 「そんな……っ!?」


 剣は虚しく空を裂き、宙で方向を急転換させた男の爪が逆に往人の肩を裂いた。

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