表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

74/317

74話 偽り暴きしセイクリッド part5

 鮮血が舞い、ウートガルザがその屈強な肉体を折る。

 「くっ……流石は天界の長ですね。僕の負けです……」

 敗者の首筋に剣が当てられる。冷たい瞳をしたアイリスが言った。

 「勝敗などどうでもいい。貴様が人間界に来た目的を話してもらおうか」

 喋らなければこの場で魂を滅する。握る手に込められた力は、それを真実だと告げていた。

 「貴女の抹殺ですよ。天界すべてにその命令が下っています」

 「ロキか」

 「ええ。だから、貴女が手を出せないとふんで人間を使ったんですよ。まぁ、アテが外れましたが」

 そう言いながら、ウートガルザは体をゆっくりと起こす。当然、そんなことをすれば首に当てられた剣が食い込んでいく。

 「なっ……!?」

 「クハハ! 僕が喋れるのはここまでですよ。敗者は大人しく退散するとしましょう。ですが、ついでです……!」

 ゴトリ、鈍い音を立て首が転がり落ちる。だが、それでウートガルザが死ぬわけではない。受肉した肉体を捨て、ただ逃げるだけだった。もちろん、それ相応の痛みはあるが。

 そして、肉体のくびきから逃れたウートガルザは、地に転がる『聖剣レーヴァテイン』を奪おうと動いた。

 


 「させるかっ!!」

 咄嗟に往人ゆきとの体が動く。

 すんでの差で、『レーヴァテイン』を掴んだのはウートガルザだった。肉体を捨て不安定な状態であるが、剣一本運ぶくらいなら造作もない。

 「残念でしたね。貴方とはいずれ決着をつけさせてもらいます。では……がっああ!?!?!?」

 立ち去ろうとしたウートガルザは急に呻き声を上げ、せっかく手にした『レーヴァテイン』を取り落とす。

 その手からは薄く白煙が立ち昇っていた。取り落とされた『聖剣』は、見ると鞘から抜かれていた。

 「なんだと……!?」

 「残念だったな」

 そう言って、抜き身となった『レーヴァテイン』を拾い上げる往人ゆきと。しかし、その手は灼熱に焼かれることはなかった。

 「なぜだ……? なぜ貴方は……」

 「魔族と一つになった人間には使えないみたいだな。だから炎も出さない」

 そう。『聖剣レーヴァテイン』は『天界』の至宝。魔なる者を滅する剣。だから、『魔王』と『霊衣憑依ポゼッション』した今の往人にはその力を使うことはできない。

 だが、往人はあくまでも人間。『魔王』の力を持つだけで、その本質は『人』である。だから、『レーヴァテイン』の炎にその身を焼かれることもないのである。

 「ま、だからオレが持っていても単なる剣だけどな」

 「つくづく頭にくる人ですね、貴方は……。ですが、ここは逃げの一手しかありません。いずれまた……」

 そう言って、霧のように消えていくウートガルザ。後には、破壊の後だけが残っていた。



 「ふぅ……逃げたか」

 淡い薄紫の光と共に『霊衣憑依ポゼッション』を解く往人。その顔には玉のような汗が浮かんでいた。

 リリムスの助力があったとはいえ、『魔導書』の力を相当に引き出したのである。むしろ、この程度で済んだのは驚嘆に値すると言える。

 「ダーリンもムチャするわねぇ」

 「はは……それでも俺の魔導書は使えなかったけどな」

 先ほどの戦いで使ったのはリリムスの持つ『魔導書』だった。往人も自身が手にした『魔導書』を使おうとしたのだが、まったく反応しなかったのだ。

 「魔の叡智に積極的に深入りするのは推奨できないな」

 アイリスが忠告をする。弱体化した体で戦うのは酷なのか、その顔はひどく疲れていた。

 「アイリス、大丈夫か? 随分な無理を……」

 「これくらいなら問題ない。それよりもあまり時間もない、今の交戦記録をクロエに渡そう」


 懐から取り出された時計が指し示すのは、残り時間があと三十分もない、ということだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ