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57話 求める者、望む者 Brave&Evil

 勝者と敗者。今、明確にその立場が決まった。

 往人ゆきとが意識を失い這いつくばるマルバスを見つめる。その瞳には今までのような冷酷さは無く、普段通りの温かみを持った瞳だった。

 「俺の勝ちだ……マルバス」

 返事のない魔族へ呟くが、正直勝った気はしなかった。

 あの時流れ込んできた黒い感覚。今思えば、それは『魔導書』の意思とでも言うべきものだったのだろう。今も往人の左胸の奥で、心臓とは別の鼓動を打ち続けている。

 「ダーリン……大丈夫なの?」

 心配そうな声でリリムスが言う。同じ『魔導書』を有する者、往人のことが殊の外心配だった。もちろん、『霊衣憑依ポゼッション』を強制的に解除されたアイリスも不安げな顔で往人を見つめている。

 「体はなんともないのか? 痛いところやおかしな感じは……」

 「一応は……でも、体に何か在るって感覚は残ってるけど」

 迷ったが、往人は正直に体の異変を伝えることにした。黙っていても、リリムスが『魔導書』を持っている以上、隠していることがばれてしまうかもしれない。共に旅をする仲間に、あまり不信感を与えるのは良くないと思った。

 


 「そう……それは魔導書の所有者になった証、みたいなものだから大丈夫とは思うけどぉ。ダーリン、魔導書を出すことはできるかしらぁ?」

 そう言ってリリムスは自身の持つ『魔導書』を手に出現させる。相変わらず古ぼけていて、凄い力を秘めたものだとは思えない。

 「ええと、こんな感じか……?」 

 往人もリリムスがしたように自身の手へと『魔導書』を出現させる。感覚は『霊衣憑依ポゼッション』したときに掴んでいたので、見よう見まねでも出すことができた。

 往人の手に渡った『魔導書』も古ぼけていて、そのタイトルを読み取ることは出来なかった。しかし、かろうじて解読できた部分には『…霊秘…』と記されていた。

 「ううん、やっぱりダメねぇ」

 「何が?」

 「この本はダーリンを主として認識してるわぁ。もう外部からの制御は一切受け付けないみたいねぇ」

 『魔導書』の観察をしていたリリムスはそう言って往人へと返す。

 「やっぱり人間が魔導書を持っているとマズいのか?」

 そこは往人にとっても不安要素であった。

 魔族の上位者でもコントロール出来ないほどの代物をただの人間がどうこう出来るのか。持っているだけでも何か害はあるのか。まったくわからないまま手にしてしまった為、往人は気になって仕方なかった。

 「分からない、と言うのが本音ねぇ」

 「それじゃあ何か? もしかしたらユキトの体に何か異変が……」

 「その可能性もゼロではないわぁ」

 「いかん! ユキト、そんな危ない書物、早いところ捨ててしまうんだ。なんなら私が斬り捨てて……」

 往人の身を案じるアイリスが言うが、往人はそれを制した。

 「いや、俺はこの力を使いこなせるようになってみせる」

 

 

 正直なところ、恐怖で一杯ではあった。でもこれから先、戦いは激しくなるだろう。『天界』と『魔界』、双方の支配者とも戦う日も必ずある。その時に、『魔導書』は大きな助けとなる。その為にも、ここで臆さずにカードとして使えるようにしたおきたいのだ。

 「そうか……ならば無理には止めないが、おかしいと感じたらすぐに言うんだぞ」

 「そうねぇ、ダーリンに何かあったらワタシ泣いちゃうわぁ」

 強くする、そう決めた二人は心配ながらも結局は往人の意思を尊重し見守ることを決めた。


 「ありがとう。そうだ、もうここには用はないんだよな? 少し風に当たってくる」

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