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51話 毒の王 Marbas part2

 緑の大蛇が大きく開かれた口から毒の液を往人ゆきとへと吹きかける。

 「くっ!?」

 アイリスの加護を受け、白翼をはためかせる往人。その翼による速度で毒液を躱し、剣を構える。

 「まだだ」

 もう一匹。紫の大蛇が毒液滴る牙を覗かせながら鎌首をもたげる。ちょうど往人が進んできた先へと大口を開けて飲み込まんとする。

 「なっ!?」

 翼を一気に羽ばたかせ、突撃しようとした肉体へ急制動をかける。内蔵がひっくり返りそうになる衝撃に耐えながら、上方へと飛び上がる。

 その瞬間、今まで往人がいた場所に大口が閉じられる。あとほんの数瞬でも反応が遅れていたら毒に沈んでいた。

 「ふん、運のいい奴め」

 「これでは攻められない……!」

 二匹の蛇が睨みを利かせている。少しでも意識を逸らせればその瞬間に、毒の液と牙が凄まじい速度で襲ってくる。



 「だったら!」

 往人は翼を一際大きくはためかせて二匹の大蛇へと一気に突撃する。当然、そんなことをすれば大蛇は巨大な体躯を蠢かせて、突き進む白き弾丸へと襲い掛かる。

 「もうヤケになったのか? 所詮は人間……なにっ!?」

 だが、襲い掛かった二匹はブルブルと体を震わせ、牙を圧し折られる。猛毒の牙がなぜか往人を包む翼を溶かすこと、侵す事が叶わなかったのだ。

 「このままっ!!」

 まさに弾丸となった往人は、その勢いのままさらなる加速を伴い大蛇の体躯を貫いていく。猛烈なGを体に感じながらも半ば無視する形で一気に大蛇の体を削っていった。

 「……そうか。貴様、防御魔法を……」

 「そうさ、これなら毒も受けない」

 『霊衣憑依ポゼッション』における利点。それは一つの肉体に二つの魂が存在している事。すなわち、魔法を同時に二種類扱えることである。

 魔法は同時に異種の力を扱うことは出来ない。どれだけ瞬間的に切り替えたとしても、そこには無視できないだけのラグが発生する。

 だが、『霊衣憑依ポゼッション』ならばその制約を無視して二種類までなら同時に発動できるのだ。

 往人は飛行魔法による翼の制御。アイリスは防御魔法によって毒から身を守る。それによって毒の固まりたる大蛇をも力任せに破壊して見せたのだ。

 


 「なんという脳筋思考……」

 凄まじいまでのゴリ押しに、味方であるはずのリリムスも呆れたように、宙を舞う白き弾を見つめる。

 とはいえ、確実に二匹の大蛇を追い詰めているのは事実。再生もおこなっているが、それよりも早く破壊していっている。毒そのものが通じない今、もはやその殺傷能力は皆無と言っても過言ではない。

 「なるほど、この力任せのやり方。確かに我ら魔族には出来ない戦法……だが!」

 マルバスは手にした杖を振るう。もはや蛇の形すら失いかけた毒の塊がブルン! と大きくその身を震わせると、ぎこちない動きで往人へとその体をぶつけていく。

 「喰らうかっ!!」

 だが、破れかぶれを思わせるような攻撃など、今の往人には通用しない。勢いのついた白き閃きが死に体の大蛇をまとめて撃ち貫く。

 「ふん、いつまでも同じ毒の力を使っていると思うか」

 「ぐあぁあああ!!!」

 毒の力は確かに防御魔法で防いだ、はずだった。

 だというのに、飛び散った毒液が触れた白翼からはシュウシュウと不気味な音が聞こえている。融かされていたのだ。防御魔法すら貫通するほどの強力な毒で。

 「……激毒」

 「そうさ。人形全てを倒してきたんだろう? だったら警戒して然るべきでは?」

 周囲をドロドロのマグマを想起させるほどに溶解させるほど強力な毒、『激毒』。

 死に体となった大蛇に見切りをつけ、その内に仕込んでいたマルバスのさらなる力。飛び散らせたのはマズかった。

 周囲は毒の力で融け出し、その熱で気温も急上昇している。

 

 「流石は魔界のナンバーファイブってところか……」

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