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47話 毒が護りし塔 The_Deadly sin part14

 「おいおい、物騒だな。ボクを忘れたって……」

 「アナタはダーリンじゃあないわぁ」

 往人ゆきとの姿を借りた何者かの言葉を遮り、鋭く睨みつけるリリムス。目の前の少年は往人ではない。異界人とはいえ、ただの人間に魔法の『拒絶』なんて事ができるわけがない。

 通常、魔法というものは一度発動すればそれをなかった事にはできない。それ以上に強力な魔法をぶつけて破壊することで打ち消し、無理やり無効化するしかないのだ。

 だが、目の前の少年は文字通り『消して』みせた。それは『秘法』であっても起こすことのできない『奇跡』と言ってもいい事象だった。

 「はぁ……キミたちがもっと強ければこんなことにはならないんだ」

 冷めた瞳を向けながら、わざとらしくため息をついて見せる。

 「いいかい? ボクはキミたち二人が契約を結んだから任せたんだ。神代クンを護ってくれるとね。……だというのに、たかだか人形相手にそのザマじゃあ、ちょっと心配になるのも当り前さ」

 「……」

 痛い所を突かれてしまった。確かに、リリムスたち二人が人形マルバス相手にここまで苦戦を強いられなければ、この存在は往人の体を使って現れることはなかった。

 実際、二人がこの少年に助けられたのも事実なのである、リリムスが杖を突きつけている今も、反撃をしてくる様子もない。まあ、今のリリムスが相手では勝ち目が無いと思っているからなのかもしれないが。

 


 「なんにせよ、アナタが何者かは話すつもりはないみたいねぇ」

 「魔王だろうと、女神だろうとボクの事を知る権利なんてないのさ。神代クンにならいつか話してもいいけどね」

 取りあえず、敵対の意思は無いと判断し杖を降ろすリリムス。警戒を解くつもりはないが、少なくとも往人に危害を加える心配は排除されたと考えてもよさそうだった。

 「アイリスの毒も消しておいたから、すぐに動けるようになるだろうね。……それよりも、キミたちはこの先へ進むのかい?」

 今度は少年がリリムスへと聞いてきた。

 「人形に苦戦しているキミたちが本物相手に勝てるのかい?」

 「……勝つわ」

 「神代クンを頼ってかい?」

 またも痛い所を突いてくる。今のリリムスも、そしてアイリスも『霊衣憑依ポゼッション』をしなければ、敵と満足に戦うことは出来ない。それは往人へ負担を強いてしまうことでもある。

 まだまだ往人は未熟。『魔王』と『女神』という大きな力を受け止めるには往人自身の魂の強さが足りないのである。

 「もうすでに二回、霊衣憑依ポゼッションをしているね。マルバス、だっけ? ソイツと戦うのに少なくとも後一回、ちょっと多いんじゃない?」

 その通りだった。リリムスたちが表に出て、いくらか負担を軽減させても三回は多すぎる。それでなくとも、病毒のせいで体力も大きく削られているというのに。

 「……」

 「はぁ……仕方がない。一回だけだよ」

 言い返すことのできない『魔王』の姿を見て少年が言った。

 


 「神代クンの今日の負担を全て消してあげる」

 「は?」

 言うが早いか、少年は左手を光らせて、それを自身の胸に当てる。薄紫の光は往人の肉体を包んでいき、少年の言うように往人の体への悪影響を『消して』いく。

 魔法だけでなく、肉体へ蓄積している疲労なども『拒絶』できる力。改めて目にしてもその底知れなさに戦慄するリリムスだった。

 「ただし、キミたちには条件をつけさせてもらう」

 「条件?」

 「ああ、神代クンをキミたち二人よりも強くするんだ。霊衣憑依ポゼッションしなくとも全開状態のキミたちより強くなるように育てるんだ」

 人間が『魔族』と『天族』、そのいただきを超える力を得る。それは並大抵の事ではない。

 「そんなこと、コッチがやろうとしてもダーリンの素質も大きく……」

 「神代クンなら大丈夫さ。キミたちよりも遥かに強くなるだけのポテンシャルは持っている」

 少年は自信満々に言って見せる。それはまるで二人よりも強い往人を知っているかのような口ぶりにも思える。

 「随分とダーリンの事を買っているのねぇ。それに良く知ってもいる」

 「まぁね。そうでなければわざわざ助けたりはしないよ。それよりも約束、忘れないでくれよ?」

 条件から約束へと勝手に格上げさせて、少年は瞳を閉じる。

 「ボクはもう行くから、後のことはよろしく」

 「ちょっとぉ……!」

 まだ聞きたいことがあったが、すでに往人からは消えているようだった。

 倒れこむ往人を抱きかかえながら、謎だけを残して消えた少年へ不満を募らせる。


 (勝手ばかり言ってぇ……でも、ダーリンが助かって良かった)

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