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44話 毒が護りし塔 The_Deadly sin part11

 「はぁっ!!」

 アイリスの斬撃が人形マルバスを捉える。横一線に振られた剣は、確実に体を斬り裂く……はずだった。

 「なにっ……!?」

 虚しく空を裂く自身の剣に、何よりもアイリスが驚愕する。今、確実に敵を捉えたと確信して剣を振った、だが、結果は避けるまでもない攻撃となってしまった。

 (目測を私が誤っただと……っ!?)

 いつまでもそのことで驚いている猶予を敵が与えてくれるはずもない。杖から放たれた毒の針の連射を、空振りをした勢いを殺さずそのまま地を転がって避ける。

 「くっ……」

 凍てついた階段は痛みと冷たさを体に訴えさせるが、泣き言は言っていられない。すぐに次が来る。

 「ふん!」

 再び襲い来る毒の針を剣に込めた氷の魔法で凍らせる。属性魔法を乗せた攻撃はそこまで得意としていないが、この場の冷気が助けとなって一発も貰うことなく防ぎきる。

 


 「コッチは二人なのよぉ!」

 リリムスも人形マルバスに息をつかせることなく、黒地に赤のラインの入った杖から氷弾を発射する。先端は鋭く尖り、まるで氷柱つららをそのまま撃ちだしているようだった。

 「この程度っ!」

 だが、やはり魔力に大きく制限のかかっている土塊つちくれの肉体。その威力はほんの一瞬、人形マルバスの注意を逸らす程度でしかない。

 「それでもっ!!」 

 一瞬、それだけ意識を他へ移せれば、アイリスにとっては十分すぎるほどの時間。今度こそ確実に捉えた斬撃が袈裟懸けに振り下ろされる。

 「甘いっ!!」

 「なっ!?」

 今度は捉えた。だが、速度が乗らない。速度が無ければ、粗悪な紛い物でも受け止めることは容易だった。

 「ちょっと、何やってるのよぉ。さっきから調子悪いわよぉ」

 追撃を仕掛けようとした人形マルバスへ冷気を浴びせかけながら、調子の上がらない相棒へと文句を口にするリリムス。実際、普段の彼女と比べて明らかに動きにキレがなかった。弱体化の影響を加味しても不自然なくらいに。

 「すまん……」

 改めて剣を握りなおし謝罪を口にするアイリス。

 (弱気になるな……)

 広がる不安を押し殺しながら、目の前の敵を睨みつけるアイリス。

 その鋭い視線にも、人形マルバスは怯むことなく不敵に笑うばかりである。

 


 「はあっ!!」

 杖を振るい毒の刃を走らせる人形マルバス。海面からヒレだけが覗くサメのように、凍り付いた壁面を滑りながら二人へ襲い掛かる。

 「そんな攻撃っ!!」

 氷剣を横薙ぎに振るって毒刃を凍らせるアイリス。そのまま蹴りつけ砕き、その勢いを利用し壁を蹴って人形マルバス目掛けて剣を突き出す。

 「何度やって……っ!?」

 「二人いるって言ったでしょう?」

 氷弾がアイリスの背後から急襲する。背に隠して放たれた氷弾は人形マルバスが攻撃を防ぐ瞬間、アイリスを避けるようにして一気に迫ったのだ。

 「威力が無くても、操作精度は落ちてないわよぉ」

 いくつもの氷弾が高速で動き回る。反応してはいけない、と頭で分かっていても人形マルバスの体は無意識で反応してしまう。

 第五位の力を持つが故、達人の反応速度を有しているが故に敵の攻撃に反応せざるを得なかった。

 これが本物のマルバスであるならば、反応すべき攻撃か否かを判断しアイリスの斬撃ごと見切って見せただろう。その違いが粗悪品と評される所以ゆえんだった。

 「はあぁああ!!」

 

 壁を蹴り、加速された突きが今度こそ人形マルバスの胴体を真っ直ぐ貫いた。

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