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31話 太古の叡智は研鑽を望む The_Evil-Treatise part12

 「図星みたいねぇ」

 苦虫を噛み潰したような顔のマルバスをリリムスは煽り立てる。

 「アナタ、魔導書を見つけただけでその力を自分のものに出来てないでしょう? だから、人間にお粗末な魔法を使わせる羽目になるのよぉ?」

 「よく喋る人ですね……本当に頭にくる」

 明確に怒りの感情を見せたマルバスは金色の杖の先から迸る毒液を、蛇のようにうねらせていく。その体表から発生しているガスをほんの少量嗅いだだけで、リリムスは体にピリピリとした痺れを感じる。

 「麻痺毒の大蛇か……ふぅん、なかなか厄介ねぇ」

 リリムスは紫電の槍を何発か放つが、ドロドロとした粘液状の体には効果が薄くその進行を止めることは出来ない。

 「認めましょう。確かにわたくしは魔導書の魔法、大いなる秘法を習得出来てはいません。ですが、ここであなたを殺すことには何も困らない! わたくし自身の魔法で十分なんですよ!」

 毒の大蛇は壁を破壊し部屋へと侵入する。大蛇自身が意思を持つかのようにリリムスを見据え、チロチロと不気味に舌を出す。所々に紫電の槍が突き刺さりバチバチと小さく音を立てている。

 「いいのぉ? そんなデカブツ中に入れて、せっかくの人間が死んでしまうわよぉ?」

 「だから? どうせいくらでも代わりはいます。今はあなたを殺せればそれでいい!」

 人間が死ぬことにも一切の躊躇なくマルバスは大蛇をリリムスへとけしかける。地を物凄い速度で這い、リリムスへ鎌首をもたげる。

 


 「させると思う?」

 だが、その牙はリリムスに届くことはない。所々に突き刺さっていた紫電の槍、その槍が激しく発光し大蛇の体を四散させる。

 飛び散る毒液が人々にかかりそうになるが、リリムスの防御魔法によりそれは防がれる。

 「ふん、やはり護りますか。どうせそうだと思いましたよ」

 必殺の一撃も打ち消されたというのにマルバスは余裕の表情をしている。その余裕さは不気味だった。

 「チッ……」

 リリムスが何かを察したのか小さく舌打ちをした。その答えはすぐに示される。

 ビュルル!! と粘液が不快な音を立てながらあちこちから集まっていく。それはあっという間に大蛇の形を取り、再び舌をチロチロと出し始める。

 「再生型……ふっ、面倒ねぇ」

 

 再生型の魔法。


 それは魔力さえ供給できればずっと発動し続ける魔法。たいていが今回の大蛇のように何か生き物を模した形を成すのが特徴である。自分で操るタイプ、自立行動タイプと別れるがこの大蛇は操るタイプのようである。

 「でも、魔力を供給出来ないようにすれば、すぐに消滅するわぁ」

 リリムスがマルバスの持つ杖を狙って雷の矢を放つ。

 大蛇へと魔力を送っている媒体。鈍い金色の杖の先、赤黒い珠を。

 「させる訳がないでしょう」

 だが、当然マルバスはそれを読んでいる。弱点が明確ならば、逆に対策も立てやすいのだ。

 大蛇が素早く蠢く。しかしマルバスを護りはしない。大蛇が狙うのは呪文を詠唱し続けている人々であった。

 「なっ……!? チィッ!」

 リリムスはすぐさま防御魔法を展開し大蛇から人々を護る。当然、そうなれば矢の制御はおろそかになってしまう。

 「クフフ、こんな程度、目を瞑っても避けられますねぇ」

 小馬鹿にしたようにマルバスは笑う。それに反応するように大蛇もリリムスへと毒液を吹きかける。

 「これじゃあ……」

 実質的に人質を取られたようなものだった。人々はトランス状態に近く、大蛇が眼前に迫っても逃げようとはしない。リリムスはそれを護らなければならない。自分自身を攻撃してきたとしても。

 「ハハハ!! その人間たちを見捨てればコレを破壊出来るかもしれませんよ?」

 マルバスは手の中の杖を軽く振って見せる。リリムスがそれを出来るはずがないと知っているからこその行為だった。

 「そうねぇ……じゃあ、護るのはやめるわぁ」

 「ほぅ……」

 (おい!?)

 リリムスの言葉にマルバスだけでなく往人ゆきとも思わず驚きの声を上げる。


 「見せてあげるわぁ、魔王の戦いってヤツを」

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