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30話 太古の叡智は研鑽を望む The_Evil-Treatise part11

 リリムスが杖を手に出現させる。杖の先から淡い紫色の雷光が迸り壁にぶつかる度、火花を上げながら焦がしていく。

 「コッチものんびりはしてられないわぁ」

 雷光は鋭い軌跡を描きながらマルバスへと襲い掛かる。

 それは触れた瞬間に激しい閃光と衝撃で周囲を包み込む。狭い通路がよく壊れなかったと感心するほどであった。

 自身のところまで届いた衝撃に、リリムスは肌がビリビリと震えるのが分かる。だが、マルバスも高位の魔族。この程度で死ぬような存在ではない。

 「さらに追撃っ!!」

 続けざまにリリムスは雷光を連続して放つ。紫電の槍は閃光が収まりかけたところへ突き刺さっていく。

 空気が灼け、石造りの階段すらも黒焦げにした紫電が収まっていく。

 「やれやれ、相変わらず苛烈な攻撃ですね」

 あれだけの雷光に晒されながらもマルバスはほとんどダメージを負ってはいなかった。修道服の所々に焦げは見られるものの、その表情に変化はない。

 「ですが、随分と弱っておられる様子。そんなにその肉体パーツが大事ですか?」

 「アナタには分からないでしょうねぇ。契約を結ぶっていうのはこういうことよぉ」

 マルバスの放つ毒球を防御魔法で防ぐリリムス。弾けた毒球が壁に当たる度にシュウシュウと不気味な音を立てながら溶かされていく。

 


 「分かりませんね。魔道の頂点にありながら、みすみすその力を捨てるような行為。その肉体いかいびとを使えば王に返り咲く道もあったでしょうに」

 「……一つ、魔王として教えてあげるわぁ。そういう考えの内は頂点に立つのは不可能よぉ」

 毒の力に押されながらも決して余裕の姿勢を崩そうとはしないリリムス。そんな彼女の態度にマルバスも顔にこそ出さないが腹を立てたようだ。

 「そうですか……だったら趣向を変えてみますか?」

 攻撃の手を緩めたマルバスが指パッチンをした。

 「何をしてもっ!!」

 その隙をリリムスが逃すはずはない。杖の先から火球を放つ。大気を焼き焦がすほどの高温を放つ紫炎が不敵に笑うマルバスの顔を灼く。

 「おやおや残念。あと一歩でしたね」

 顔を灼いたと思った火球はマルバスの眼前に展開された防御魔法に遮られる。

 「なっ……それは!?」

 リリムスは愕然とした。マルバスが展開した防御魔法はマルバスによるものではなかった。


 魔導書による高位の防御魔法。

 

 だが、マルバスに魔導書の力を使った様子は見られない。

 「まさかっ!?」

 リリムスは毒の力で脆くなった壁を破壊し部屋の中へ転がり込む。魔導書の呪文を詠唱し続けている人々のいる部屋へ。

 「やっぱり……」

 「クフフ、力っていうものはこうやって使うんですよ」

 マルバスは笑っている。そう、あの人々は人間の身で魔導書の力を使えるようにするためだけではなく、マルバス自身にも恩恵を与えるためにも呪文を詠唱し続けていたのだ。

 「どうです? 今のあなたにここまで魔導書の力を利用できますか?」

 再び毒球をリリムスへと向けて放つマルバス。それに加えて魔導書の魔法、極大の閃光も襲い掛かってくる。

 「ふん、確かにワタシにはできないわねぇ」

 毒球を紫電の槍で吹き飛ばし、閃光すらも障壁で逸らす。

 

 「ろくに魔導書を使いこなせないまま誰かに見せるなんて、恥知らずなマネ」

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