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22話 太古の叡智は研鑽を望む The_Evil-Treatise part3

 思った通り、街の中は外の厳重さが嘘のようだった。

 街行く人々は往人ゆきとを見ても何も気にすることなく通り過ぎてゆく。

 見回っている兵士たちも特には見当たらない。

 「これなら自由に動けそうだな」

 目立たない路地裏へと身を隠し、『霊衣憑依ポゼッション』を解除する往人。

 白い光に包まれ往人とアイリスが別れる。リリムスも適当に地面から体を作って姿を現す。

 「早いところ魔導書を手に入れよう。そうそう長居してもいられない」

 そう言ってアイリスは街の一点を見つめる。



 そこには街へ入る前から見えていた大きな塔がそびえている。

 時代を感じる街の風景同様に、いや、きっと逆なのだろう塔に合わせて造られた街だからあれの古めかしさが趣となっているのだ。

 「あれが古代書院……」

 「上は飾りよぉ」

 見上げる往人にリリムスが告げる。

 「塔の上階の蔵書は他愛のない適当な本だけ。ワタシの本命は地下にあるわぁ」

 言いながらリリムスは古代書院へと足を進め始める。ここからならそこまで時間もかかりそうにない。

 「随分と詳しいな」

 だが、リリムスの言葉にアイリスが疑問を投げかける。

 たしかに、『魔界』の王にしては『人間界』の街の事情にかなり詳しい。それとも、やはり王ともなればこれくらいは当たり前なのだろうか。

 「当然でしょぉ。魔導書だもの、調べもするわぁ」

 「なぁ、魔導書ってそんなに大事なのか? 俺からしたら単なる本なんだが……」

 往人の疑問にリリムスは優しく微笑みながら、自分が所有する魔導書を取り出す。

 やはりただの分厚い本にしか見えない。リリムスの言葉通りなら相当のウェイトを占めるアイテムなのだろうが、こうしてみる分には戦局を変える代物には到底思えなかった。

 


 「うーん……どう言えばいいかしらぁ。魔導書はねぇ、武器なのよぉ」

 「武器?」

 そういう反応よねぇ、と往人の反応にもさして驚きもせずリリムスは続ける。

 「そう、武器。いつ記された物なのかは分からないけど、魔導書には莫大な魔法の知識と、それを使うための魔力が込められているわぁ」

 「ん? 魔力も?」

 不思議な話だった。これから習得するための魔法が書かれているなら分かるが、魔力もセットになっているのはよく分からなかった。なら覚える必要はないのではないだろうか。

 

 本に魔力が込められるのか、という部分に疑問を覚えないのは、元の世界でもそういった設定の話(つくりばなし)を知っているからだった。

 

 「まぁ、魔力に関しては封印されていて中に在る、ってことしか分からないんだけどねぇ」

 「だから魔法を覚える必要があると?」

 「ええ、コレに記された魔法は古代の魔法。習得すれば一人で国と戦えるほどのモノよぉ」

 魔導書が凄まじいものだというのは理解できた。なのだが、

 「もう、一冊持っているのにさらにいるのか?」

 すでに、その凄い魔導書を持っているのならそれを使えば大丈夫ではないのだろうか。往人はそんな疑問を抱く。

 「向こうも一冊持っているからねぇ。残り一冊、手にした方が勝ちなのよぉ」

 なるほど、それなら躍起になって求めるはずである。



 「そっか。そういえば、アイリスは魔導書は欲しくないのかい?」

 個人で戦争が出来るほどの代物なら『天界』でも必要とされるのではないだろうか。

 だが、アイリスは興味なさそうな顔だった。

 「我々天族は魔族のように様々な魔法を駆使して戦う事は得意ではないんだ。その代わりにコレがある」

 そう言って見せたのは二振りの剣の内の一本。バルドルとの戦いの時に抜いた上側の剣。

 「それは?」

 「エクスカリバー。まぁ、魔族における魔導書だと思ってくれればいい」

 簡単に言うが凄まじい事だった。

 個人で戦争が出来る物を双方共に所有している。バランスが取れていると言えば取れているのだろうか。

 「とにかく、アソコに最後の魔導書があるのは確定情報だから早く行きましょぉ」


 そう言うと、リリムスは往人の手を取って足を早めた。

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