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191話 交錯する想い Distorted_Desire part5

 「ケケケ!! そのバカを()っただけで、そんな鉄の塊ごとき怯むものかぁ!!」

 土塊(つちくれ)へと戻った仲間を笑いながら、残りの二体が三又槍に雷を纏わせ放つ。やたらめったらにばら撒かれたそれは、このままでは周囲の車をも巻き込み大惨事を引き起こす。

 「やらせると思うか?」

 バイクのブレーキを思い切りかけながら、往人はアクセルを全開で捻る。その場で凄まじい勢いでホイールが回転しする。

 「そんなモンで何が出来る!!」

 「こうするのさ」

 回転するホイール。そこからまるで竜巻が発生するかのように突風が巻き起こる。そして、それはばら撒かれた雷を飲み込みながら反射していく。


 魔法の作用点の変更。


 アイリスとの闘いで習得したブースター翼の噴出点の変更を応用した往人の新たなる力。

 自らが触れている箇所ならば、どこからだろうと魔法を発動できるようになっていた。それがたとえ『ニユギア』には存在しないバイクであろうとも。

 とは言え、元々それに近いことは出来ていた。魔道具として造られた武器からは魔法を発動できていたのだから。

 「なんだと!? バカなッ……!!」

 「自らの魔法で死ぬんだなッ!!」

 暴虐の渦に飲まれた『魔族』は、その中を荒れ狂う数千万ボルトの電流によってその身を焼かれ砕かれた。

 竜巻が収まった後には、ボロボロと土や木などの残骸が周囲を汚していく。

 「もう一体は逃げたか……!!」

 竜巻に巻き込まれる寸前で、咄嗟に飛び去った最後の一体を睨み往人は再びアクセルを開く。

 エンジンが唸りを上げて車体を走らせていく。

 


 「うおっ!? なんだ、このスピード!?」

 それは経験したことのない速度だった。まるで風と一体化したかのような異様な速度。

 「これは……!?」

 その理由はすぐに分かった。往人の駆るバイク。その後輪部分から小さいながらも、勢いよく魔力が噴出していた。

 無意識によるブースター翼の応用。それによりマシンスペックを遥かに超越した速度を可能にしていた。

 「くっ……しかし、これじゃ制御もまともに出来ない……っ!!」

 往人の反応速度がバイクの速度に追いついていなかった。何とかぶつかっていないだけで、このまま走り続けていてはいつすり身になってもおかしくはなかった。

 往人は一旦、ブースター翼を収納して通常の走行へと移行し、バイパス道路から通常道路へと降りる。そのまま路地裏へと身を隠し、周囲の状況を確認する。相当な速度で来たため、戦闘現場からはそこそこ離れてしまった。

 『魔族』がいない為、そこに何があるわけではないが何らかの記録媒体に往人たちの戦闘記録が残されていると面倒なことになる。

 残り少ない時間がさらに減りかねない。

 「幸い、大きなバイパス道路だから店舗のカメラに映った可能性は低いけど……」

 急がねばならない。往人は再びバイクを走らせ逃げた『魔族』を追いかける。

 あれだけ派手に魔法を使ってくれれば、往人の感知能力でも追いかけるのは容易い。今も往人を探るためか、魔法を使っている。

 バイクで移動する以上、奇襲をかけるのは難しいが相手の力量から、倒すことは問題ない。

 「後は本体をどうするかだが……」

 複数の個体を操ることのできる存在。感知することも出来るだろうが恐らくそれをする前に補充要員(おかわり)が来るだろう。

 「……待てよ。もしかして……?」

 その時、往人の脳裏にある一つの仮説が閃いた。



 工場跡地。

 人気のない殺風景なこの場所に、一人の少女が立っていた。

 「まったく、キミもなかなかしつこいねぇ。大人しく死んでおけば良かったんじゃない?」

 その少女、ナルは笑いながらそこに『在る』者へと話しかけていた。

 「ふん。どうせ神代クンではたどり着けないとでも考えているのかい? 甘いなぁ」

 跡地の荒れた地面から夥しい数の『魔族』が出現する。それはすべてが造り物(にんぎょう)。とある『魔族』により生み出されたこの世界での行動用のモノ。

 「彼だけでなく、ボクすらも殺そうって言うのかい? まったく……欲張りだね、三下風情が」

 だが、その魔族(にんぎょう)はナルが一睨みするだけで崩壊し、土に還っていく。

 「こんな程度のコトしか出来ないくせにボクに歯向かうなんて甘いよねぇ。ホントにさ」

 そう言って、舞う土埃の中ナルはある一つのモノへと歩み寄る。

 「ん? どうやら、キミを殺すのはボクではないみたいだね」

 何かに気が付いて、ナルは歩みを止め近づてくる唸りの方へと視線を向ける。

 それはバイクのエンジン音。

 「……ナル」

 現れたのは神代往人。バイクから降り、首元から下がっている『聖剣』を握りとある『魔族』、その正体へと近づいていく。

 

 「アンタが正体だったんだな。葛西」

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