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176話 それもまた異世界 Another_Real part3

 バイクのヘッドライトが街を流れていく。

 目的地のない走行。とにかく、往人はこの世界で何をすればいいのか。それが分からなければ行動の仕様がない。

 だからこうして何か起きていないかを探しながらバイクを走らせている。

 「とは言っても、何もないか……」

 『ニユギア』とは違って、こちらは平和そのもの。

 何か事件を探そうにも、法治国家ではそうそう出会えるものではない。

 

 ――ガゥォオオオ!!!!!


 その時、往人の背後からエキゾーストノイズを轟かせバイクが近づく。

 「うん?」

 ミラーで確認しようと思った次の瞬間だった。

 「よう。お前が神代往人か?」

 「誰だ?」

 あっという間に追いつき、横並びに声をかけてくる男。

 顔はフルフェイスのヘルメットで確認はできない。

 全身を黒のレザーで包んだ不気味な男は往人の質問には答えようとはしなかった。

 「お前に恨みはねェが、死んでもらうぜ!!」

 言うが早いか、男はバイクを後ろにつけると、車体の前輪を持ち上げる。男の乗るマシンはオフロードバイク。総重量は往人の乗るフルカウルのスーパースポーツに比べれば軽いが、容易に出来ることではない。

 「ヒャハハハ!!」

 ほとんど世紀末のモヒカン野郎のような笑い声を上げながら、持ち上げた前輪をぶつけようとしてくる。

 「あっぶねぇ!! 何しやがる!!」

 前輪攻撃を躱しながら、叫ぶ往人。

 まさか、こんな奴がいるとは思わなかった。まだ他の車なども普通に走行しているのにお構いなしに攻めてくる。

 「ハハハ!! テメェ一人で五〇〇万何でなァ!」

 「コイツ……!!」

 恐らくはナル。彼女が雇った即席の傭兵ということか。

 それにしても、『ニユギア』でもないのにこんな奴がいるとは思わなかった。たかだか五〇〇万円の為に人の命を奪う奴が。

 そして、そんな奴を見つけてくるナルの人を見る目。それがいいのか悪いのかは分からないが。

 


 「チッ……ここじゃマズいか」

 時間帯が悪すぎる。ちょうど退勤時間と重なり、交通量もどんどん増えてきている。

 このままでは逃げきれなくなるし、男は周囲の状況など気にもしないだろう。

 「だったらっ!!」

 車体を勢いよく傾けて、狭い路地へと飛び込む。

 当然、男もそれについてくる。機動力で言えば向こうの方が圧倒的に上。

 なるべくならば、こちらが上の加速力を活かせる広く直線的な道路を走りたいがそうもいっていられない。

 本当ならば高速道路に出られれば一番だが、あいにく往人は普通の高校生。

 ETC装備などといった気の利いた物はこのバイクには積んでいない。料金所で詰まってそれで終わりである。

 「無関係な連中のことを考えたか! バカめ、この狭い路地の中をカウルを着けて上手く走れるものかよ!!」

 男がバイクのアクセルを大きく開いて加速する。 

 ぶつかるギリギリで再び曲がる。

 「くそっ! こんなことやってたら、命がいくつあっても足りない!!」

 往人はバイクを加速させ、ある場所へと行くことにした。

 互いのバイクの性能が関係ない所へ行くしかない。



 「あん? テメェ、逃げるのはヤメにしたのか?」

 バイクから降り、こちらを睨む往人に男はバカにしたように笑う。

 人気のない広場。以前は遊具などのいくつかあり、それなりに人も多かった公園だが危険だということで全て撤去され、だだっ広いだけの広場になり今はあまり人も来なくなっていた。

 時間帯も夜なので今は誰もいない。往人と男を除いては。

 「バイクでお前に張り合っても勝てそうにないんでね」

 そう。今の往人の技量では、この男に勝つのは正直厳しい。ならば、降りてしまえば互いのバイクの技量は関係なくなる。

 「バカが!! テメェがバイクを降りようがオレには関係ねェんだよ!」

 男が往人を轢き殺さんと、アクセルを捻りエンジン音を強烈に轟かせる。

 「それも分かっているさ」

 バイクは基本的には直進をするために設計されている。だから、往人は技量も何も関係なく向かってくる鉄の塊目掛けて攻撃を加えればいい。

 魔力により強化された往人の蹴りが迫る前輪へと直撃する。


 真横へと派手に転び、乗っていた男はそのまま車体から弾き飛ばされ地面を転がっていった。 

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