表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

169/317

169話 混沌の宴 HEROs_Parade part5

 ドサリ、とスピネルの小さい体、その上半身が崩れ落ちる。

 「次は誰だ?」

 冷酷に告げる往人に、他の四体のスピネルたちが焦りの色を見せる。

 「勇者再現体である、我らを破る者がいるなんて……」

 「落ち着け、ここは連携で行けばいい」

 「しかし、あれだけの速度、追いつけるのか……?」

 「…………」

 しかし、そのどれもが恐怖を抱いているのか、先陣を切る者が現れない。

 そしてそれを見逃すほどに甘くはない。

 「まだまだ、経験が浅いわねぇ」

 「っ!?」

 雷のドリルがスピネルの一体へと迫る。完全に往人に気を取られていて、対応が遅れる。

 杖を握る右手が吹き飛ぶ。

 「ああああああ!?!?!?!?」

 絶叫が周囲を包み込む。

 夥しい、青紫の血液が途切れた肘先から吹き出ている。額には玉のような汗が浮き、パニック状態へと陥っている。

 「マズい! 再生をさせないと……っ!?」

 「させると思うか?」

 指示を飛ばそうとしたスピネルへと、灼熱の軌跡が閃く。それはアイリスの振るった炎剣の一撃。

 いとも簡単に、スピネルの足を灼き斬る。

 それが熱さによるものか、それとも痛みによるものか。スピネルには判断が出来なかった。

 ただ一つ言えるのは、それが言葉すらも失わせるほどの苦痛だということだった。

 「ッ!?!?!?!?!?!?!?」

 もはや二人は戦闘不能。痛みによって錯乱状態に陥り、再生魔法を使うどころではなくなっている。

 


 「No.9(ナンバーナイン)No.4.(ナンバーフォー)まで……だが、ここで負けるわけには!!」

 「ならばワタシが行こう。No.11(ナンバーイレブン)、オマエはサポートを頼む」

 そう言って、残ったスピネルの一体がその背から翼を展開する。

 黒く禍々しい『気』による翼。

 戦闘機のジェット噴射のように、爆発的な加速度を術者に与える魔法。

 それは往人と同じ、ブースター翼だった。

 「扱いにくさはあるが、確かに強力な魔法だな」

 「専売特許のつもりはないけど……なッ!!」

 二つのブースターが激突する。

 一つは背から、もう一つは脚からブースターを吹かしている。

 「ふん、その背の重荷を捨てれば楽に戦えるだろうに」

 「お前には、クリスが俺の重荷に見えるのか?」

 「違うと?」

 スピネルが背中のブースターの出力を上げる。対する往人は、クリスのことを思ってか出力は現状維持。

 もちろん、それでは差が開いていく。

 「仲間意識も結構だが、それで死んでは元も子もないだろうに」

 「違うんだよ。俺はクリスがいてくれるから、この力を使いこなせているんだよ。それに気が付かないんじゃあ、勇者と呼ぶにはちょっと相応しくないな」

 凄まじい速度で迫るスピネル。

 しかし、往人にはその軌道が完全に視えていた。当然である。往人にとっては自分の魔法。

 どう行使すれば、どのように効果を示すかは理解(わか)っている。

 ブースター翼に必要なのは出力ではない。タイミングなのである。

 「小手先で使うべき魔法ではなかったな」

 その言葉通り、超高速の蹴りをほんの数ミリ体を動かすだけで躱す。そして返す刀で噴出点を手首へと変更し、剣による刺突を放つ。

 躱せる距離ではない。もちろん防御魔法も間に合わない。

 往人の剣が、スピネルの肩を貫く。

 「ぐぅうう!!!」

 「このままッ!!」

 刺さった剣を振り上げ腕を斬り落とそうとする往人。しかし、そうするためには足を止めざるを得ない。

 「……フッ、止まったな」

 「? なっ!?」

 横から現れた腕が往人の動きを止める。それはナンバーイレブンと呼ばれた個体。

 最初からそれが狙い。自身が囮となり、動きを止めるのが目的だったのだ。

 「今だ! No.2(ナンバーツー)! この男を……!?」

 叫ぶナンバーイレブンの目が大きく開かれた。それは驚愕によるもの。

 なんと、ナンバーツーは動きを封じたナンバーイレブンごと、杖先に纏わせた氷の刃で往人を貫いたのだ。

 「コイツ……!!」

 脇腹を刺され、苦痛に顔が歪む。だが、それ以上にナンバーイレブンが見せた表情が往人の心を大きく揺さぶった。

 「なん……で……?」


 その悲しそうな、辛そうな瞳。急速に色を失うその瞳が、あまりにも衝撃的だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ