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132話 トール――Angel(and_Extend) part7

 帯電した大気が雷撃となってアイリスを襲う。

ミョルニルに撃ちだされるかのようにして放たれる雷の矢を、白翼で弾きながらエクスカリバーを振るう。

 燃え盛る炎の剣が白く輝きプラズマ化していく。往人のいた世界とは物理法則が異なりはするが、大気をも灼くその姿はまるでプラズマカッターだった。

 「喰らえっ!!」

 「こっちのセリフだ!」

 ミョルニルとエクスカリバーがぶつかり合う。互いに激しいスパークを発生させ、雷光が周囲をその熱で焦がしていく。

 まるで小さな雷がいくつも落ちているようだった。

 「はあっ!!」

 バチバチと放電音を響かせながらミョルニルが迫る。アイリスはそれを両断しようとエクスカリバーを縦一線に振り下ろす。

 「っ!? くっ……!!」

 だが、その寸前でミョルニルがその形態を変化させる。打撃から斬撃へと。

面の破壊へと振り分けられていた魔力(エネルギー)は、形態変化により加速力へと振りなおされる。

 眼前で速度を急上昇させた雷斧(ミョルニル)は、咄嗟に纏った白翼の一枚を斬り裂く。

荘厳で美しい粒子が、もはやボロボロになったラボの中を煌めかせる。まるで雪でも降っているかのようだが、そんな光景に見惚れている暇など一瞬たりとも存在しない。

 


 「そらそらっ!」

 雷もプラズマの一種である。

魔力によって放たれる雷撃は、往人の世界とは異なる道筋を辿るがプラズマの一種であることは共通している。

 プラズマカッターと化したエクスカリバー、雷の魔力そのものと言えるミョルニル。

双方の持つエネルギーが、白翼の粒子とぶつかり合い部屋の中にオーロラ現象を引き起こす。

 ぼんやりと青緑色の光に包まれる中、トールはお構いなしにミョルニルを逆袈裟に斬り上げる。

 「くっ……!! マズいっ!」

 迫る雷斧にかち合わせる為振られたエクスカリバーだが、またもその寸前で斧から鎚へと変化する。

 エクスカリバーが弾かれ、無防備になったアイリス。ハンマーは両側に打撃を行うための面が存在する。

 逆袈裟に降られたミョルニルはそのまま袈裟懸けに降ろされる。今度はアイリス本体を砕くために。

 「さあ、ここからどうする!!」

 凶暴な笑みを浮かべながら叫ぶトール。絶対的に絶望的なこの状況を、『女神』ならどうするか。

自分と同じ『最強』を謳われる者ならばどう切り抜けるか。

 

 ――ガァアアン!!!!



 激しい激突音が部屋中を震わせる。

 「ウソでしょ……」

 「あ……」

 もうもうと立ち昇る白煙にリリムスとクロエがポツリとこぼした。

 躱せる状況ではない一撃、直撃を受ければ助かるはずはない。一欠けらの身も残さず床のコゲになるよりほかはない中で、二人は見た。

 「なんだとっ!?」

 


 「選手交代だ」

 ミョルニルを受け止め、何億ボルトという電流が流れているはずのそれを掴みながらトールを睨む。

 それはアイリスから肉体の主導権を返された往人だった。

 「器の坊や……」

 「俺の名前は往人、神代往人だ」

 一瞬で距離を詰める。あまりの速度とミョルニルを受け止められたという衝撃で刹那、反応が遅れた。

 「ふんっ!!」

 体の芯に響くような重い一撃がトールへと叩き込まれる。そのまま拳を撃ち込んだまま、往人はトールの体を壁へと弾き飛ばす。

 「がはっ……!? なんだ? 人間が出せる威力じゃない……」

 壁に手をつき、ヨロヨロと立ち上がるトール。

最初は身体能力強化の魔法かとも思った。しかし、いくら『霊衣憑依(ポゼッション)』していようとも、人間の肉体で出力可能な限界を超えていた。

 そもそも、トールはミョルニルの魔法でその身は常に蒼雷に護られている。生半可な拳では逆に黒焦げになるのが関の山。

 だとしたら何なのか。

 小さく呻く彼の瞳に映った往人の姿――


 それは魔法なのかも分からない、禍々しい『気』のようなモノを全身に薄く纏った往人の姿だった。

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