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112話 ユキト――Growing(and_Over) part4

 ――ガガガガガ!!!!

 鋼鉄の壁に火球が激突し激しい爆発音が響き渡る。

 壁を盾に、様子を伺う往人ゆきとたち三人。

魔導研究の施設へと来たはいいが、早々に発見され迎撃を受けてしまっていた。

 質で言えば遥かに劣りはするが、いかんせん数の不利は覆しようがなかった。反撃に出ようとしても、別方向からの一撃に阻まれてしまう。

 「ちょっとぉ、どうするのぉ? このままじゃあジリ貧よぉ!」

 魔法で反撃を試みながらリリムスが、ここへ行くことを提案した言いだしっぺへと文句を垂れる。

 「分かっている! チッ……向こうの魔力も無限じゃない。少しでも途切れれば……」

 しかし、その時はしばらく来そうもない。なぜなら、施設側は一発の消費魔力を極限まで抑え、低下してしまう魔法の威力を数でカバーする策をとっていた。

 『ニユギア』の国の中でも、屈指の人口数を誇る『チア国』だからこそ考えられる人海戦術だった。



 「先にコッチが参っちゃうわぁ。ダーリン、ここは一気に霊衣憑依ポゼッションで……」

 リリムスの言葉に、往人も乗ろうとした。

 しかし、

 「待て! ここで霊衣憑依ポゼッションしては反応を追ってきた連中に対処できなくなる。ここはこのまま突破する」

 同士討ちを狙うと言っても、二つの種族がまったくの同時にここへ来るというのは恐らくない。

 多少のズレは往人たち三人で修正をする必要がどうしてもある。

 『霊衣憑依ポゼッション』はそのときの為に残しておかなくてはならないのだ。

 人間との戦いで切るわけにはいかないカードだった。

 「そうは言っても……あの連中、よくこの速度で魔法を使っていられるわねぇ。普通なら呪文が混線を起こしそうなものだけどぉ」


 通常、魔法の発動には呪文の詠唱を必要とする。

とはいえ現代で馬鹿正直に呪文を一から唱えて発動する者はいない。自分自身で組み上げた『魔法陣』を使って詠唱をスキップしているからである。

 だから『魔法陣』に魔力を通せばそのまま魔法が発動するし、少ない魔力で強力な効果を得ることも可能になる。

 だが、『魔法陣』というフィルターに魔力を通す都合上、次を発動するまでに僅かにラグが存在する。

 それを無視しても、ただ呪文が混線して暴発するだけである。


 しかし、迎撃をしている者達は普通ではあり得ない速度で魔法を発動している。

今のリリムスやアイリスは愚か、弱体化していない二人でもあれだけの速度が出せるかは分からない。



 「やはり違法実験をしているということか……」

 「いえ、どっちかというと技術的なアプローチっぽいわねぇ」

 ここからでは上手く確認できないが、人体実験による肉体的なものではなく、手にしている杖に何らかの細工を施しての、混線防止のようにリリムスは考えた。

 「ま、どっちにしてもここを切り抜けなければ、考えても無意味だけどぉ……そうだわぁ」

 そこで、リリムスが何かを思いついたかのように往人の方を向いた。

美しい紫色の瞳に、不思議そうな顔の往人が映る。

 

 「ダーリン、ちょっとワタシに力を貸して欲しいの」

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