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110話 ユキト――Growing(and_Over) part2

 「ダーリン? 一回、この魔法を解除してもらえるかしらぁ?」

 リリムスが展開された殻の外から声をかける。

往人ゆきとは言われたとおりに魔法を解除し、また寒空の下で無防備な肉体を晒す。

 「うおお! 不完全でもないよりはマシだ。いや、一度中途半端に遮断した分、より寒い!!」

 先ほどよりも、体感温度が下がった気がしていよいよ限界が来ている往人。

このままでは、身動きが取れなくなってしまうかもしれない。

 「落ち着いて。ちゃんとコツがあるからダーリンならすぐにできるわぁ」

 そう言ってリリムスが近寄り、何を思ったか往人の手を自分の肌が露出している箇所へと押し当ててきた。

 「なっ!?」

 曲がりなりにも往人は年頃のオトコノコ。そんなことをされては、寒いなどという感情はどこぞへ消え失せ、顔を赤くさせてドギマギ狼狽えるばかりだった。

 


 「な、何を……?」

 「ほらぁ、興奮してないでちゃんと魔法の力場の流れを感じてぇ? 体表を薄く包む殻のイメージを固定化しやすくするのよぉ」

 「あ、ああ」

 なるほど。確かに、意識を集中させればリリムスを包み込む魔法の殻がしっかりと展開されているのが分かる。

ほんのりと暖かく、それでいて外気を一切通さない密閉性を持った殻を。

 「しかし……」

 リリムスの技量故か、外気こそまったく通していないがそれ以外、つまりは往人の手は露出されたリリムスの素肌にぴったりと触れてしまっている。

しなやかに鍛えられ、それでいて柔らかく、まさに乙女の柔肌という表現が似合う。

 そんな危険物に触れてしまっていては、とてもまともにイメージを固定化させることなど出来はしない。

どうしても、手に触れている柔らかさに意識が流れていってしまう。

 「おい、イメージをさせやすくするだけなら、なにも素肌でなくていいだろう」

 「あら、バレちゃったかしらぁ?」

 アイリスの言葉を受け、イタズラっぽく舌を出すリリムス。

コツを教えると同時に、往人をからかいたくもなったらしい。

 「ウフ、ゴメンねぇダーリン。でも、ちょっとザンネン?」

 「ハハ……まさか」

 寒さに凍えていながらでも、即否定出来ないオトコのさがに、ちょっと情けなくなる往人だった。

 


 「ふぅ……ようやく落ち着いた」

 それからほんの数分、ようやくコツを掴んだ往人が何とか及第点の魔法の殻を張ることに成功する。

 もちろん、最上位に君臨する二人に比べれば、遮断対象は選べないしその遮断率自体もお粗末な物である。

 それでも、しばらくは寒さの心配をすることがなくなったことは、往人にとって大きな前進であった。

 「うんうん、結構いいんじゃぁない? これなら寒さも十分凌げるし。でも、ダーリンと触れ合えないのはちょっぴり寂しいわぁ」

 「何を馬鹿な事を……ま、ここから段々と対象選択や遮断率の上昇を覚えていこうな」

 それぞれに正反対な反応を示しながら、褒めて(?)くれる二人。

 内心では、二人とも習得速度の速さに舌を巻いていた。


 

 確かに、今の魔法は初歩的なものではある。だが、まったく素養のない人物がすぐに習得出来るかと言えば、そんなことはない。

本来ならば、もう二、三日は集中的に特訓をしなければならないのである。

 魔法という概念を知っていたとしても、驚くべき速さ。

 (……それも、魔導書を有しているからかしらねぇ)

 (異界人……それ故の特異性なのか?)

 

 ようやく歩みを進めながらも、二人は少年の持つポテンシャルに興味は尽きなかった。

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