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レッド・クイーンズ ~天織灯のあくまな怪盗生活~  作者: 麻莉
2章 6月 涙の暴雨、天舞う朱は侵界を祓う
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42話 明無心掴手 Ⅵ 閉ざされた空間はVIPルーム

 私は目を開けると見慣れた天井が広がっていた。

 どうやら、クロあたりが私を回収して私の部屋に運んだんだと思う。

 上半身だけ起き上がると腕に細いホースがあった。ベットの端に病院で患者さんに使用している点滴のキットが置かれていた。


「それ、外しちゃダメよ……灯」

 椅子に座り私を見ていたのは璃子さんだった。


「倒れていた貴方を綾がクロに教えてすぐに帰還したわ。急いで私が検査した所、貴方の体内の水分量が約2%失っていたわ。急いで水分補給しないといけなかったけど貴方は水分摂取が困難な状態だったから点滴という方法を取られて貰ったわ」


「ありがとうございます……」


「今日は安静してなさい。ゼリー飲料などの軽めのものをいっぱい持ってくるから待ってて」

 退出した璃子さん。

 私は机に置いてあったミネラルウォーターのペットボトルを手に取りキャップを開けた。

 水を口に含み一息つく。水がこんなに美味しく感じるの初めての感覚だった。


 外を見ると夕方特有の少しオレンジ色が混じっている太陽——夕日が空を支配しており、先ほどまでの土砂降りの雨が嘘のようにすっかり雨が止んでいた。



 う〜〜〜ん……この状況前にもあったな〜 いや、少し違いますか……

 今、私は部屋でちゃんと寝ています。璃子さんがいつにも増して威圧的に『寝てなさい』と言われたので忠告に従い部屋で寝ています。一つを除いて……


 布団が膨らんでいる。以前はすずちゃんと綾ちゃんが私の布団に入っていた。その時は左右に2つの膨らみがあった。しかし、今は右側にだけ膨らみがある。左側はちゃんと点滴のホースがある。それは良い……問題は。


「目が覚めた、灯?」


 布団の中をモもぞもぞと動きながらこちらに迫ってくる膨らんだ布団からクロの首だけ出てきた。クロは私の首元を寄せて動きを止めた。

 そして、何故か私の右腕を己の谷間を挟んで動けない様にしていた。右腕だけしか分からなかったがクロはもしかして……

「クロ……色々聞きたいことがあるんだけど。まず初めに服着て」


「暑くてその願いは聞き得れないわ」


「だったら出ていってよ。出たらお願いだから……服着てよ」


 ダイレクトにクロの感触が伝わる。なんだか、悲しくなってきた。こんなに人との差を味わうとは思わなかった。

 いくら身体や容姿を自由に変えられるとはいえここまでとは……


「顔色は良さそうね、良かったわ。えいっ!!」


 私の胸を揉んできた。妙に手慣れている

「あの〜 私、一応病人扱いなんだから変なことしないでよ……てか、いつまで触ってるの」

 腕がキッチリ拘束させているから密着して剥がせない。

「貴方だって私のをじっくり触ったんだからお相子よ!」


 身動き出来ない私の耳元に息を吹きかけられる。

 私は全身の毛が逆立っていた感じがしていた。

「や、辞めて……お、お願い……」


 クロは私の言葉を聞かず話を続ける。

「貴方が悩んでいるのは私のことね……」


 クロは分かっていたな。それもそうか。私より遥かに長生きしているんだからちょっとの変化もすぐに気づくし原因も判明できるか……

 私は天井を見つつ話した。


「クロにいきなりあんなことされて、今まで見たくクロの顔が見せなくなってる……こんな気持ちは初めてだし、何か言ったら気持ち悪いと思われないかなって考えちゃってずっと悩んでたんだ」


「灯がそこまで思い詰めているなんて思わなかったから悪いことしたわね。でも、あれは今の私の気持ちだから……」


「えぇ!? それって……」


 クロは布団から出てた。やっぱりというか案の定、服も下着も着ていなかった。

「私は受け入れる準備はしているから、灯は気持ちの整理がついたら答えを頂戴。待ってるから」

 頬を赤くしながら椅子に欠けていたローブを持ち羽織り私の部屋を後にした。



「……それは反則だよ」

 私は自分の左胸に手を当てる。



「ごめん、忘れてた。ここに来た本当の理由……」

 クロが再度、私の部屋に入る。すぐさま手を離し通常通りを装った。どうやら、ここに入った本当の理由があったとのことだが素で忘れてたらしい。私の所にきた本当の理由は翠の陰包徳(リ・エミナァーデ)の中に侵入することだった。


 何故それを忘れてるんだ……

「私こんな状態だけ良いの?」


「大丈夫よ。必要なのは灯の精神だけだから!」

 ベットで私とクロが横になり、クロの誘導のもと翠の陰包徳(リ・エミナァーデ)に内包されている緑の悪魔に会いに行くものだった。私が寝ている間にクロが色々準備していたが、あんなことになっていた。

「ごめんごめん、欲望に抗えなくて……つい」

 手のひらを合わせて私に謝っていた。


「でも、さっき言ったことは本当だから」

 ……こんにゃろう。いつもは大人の余裕を見せつけている癖に時折、恋する乙女みたいな顔をするから私の心は耐えられない。


「さて、入るにあたっていくつかルールがあるから。頭に入れといてね」

 ①相手の精神世界に入れるのは30分だけ。

 ②時間を超えると精神世界から出られない。

 ③精神世界では必要以上に相手に近付かない。

 ④交渉する場合は必ず、2人以上で入り、警戒態勢を最大にして臨むこと。

 ※戦闘が始まった時は③は免除になる。

 ⑤精神世界では捕まっている相手を好きになってはいけない。


 上記を1つでも破る。又はその疑いがある場合、対象の悪魔と封印状態の悪魔を魂ごと無限地獄へ収監される。


「④までは分かったけど⑤のこれは何?」

【好きなってはいけない】? あぁ、良くドラマや映画で出てくる女警察官と刑務所に収監されているイケメンの男が出会い、交流を深める過程でそういった恋愛感情が湧くようなものか。

 それなら、納得か。それにその過程をやると下手したらこのルール全部に引っかかる。


「ねぇ……この『無限地獄』って?」


「そこは魔界より更に下……地獄と呼ばれる場所があってね。そこで強制労働させるの」


「精神世界に入る悪魔は分かるけど、封印状態の悪魔は外で自由に動けないんじゃない?」


「労働って言っても炭坑で働いたりではないわ。例えば、実験材料とかね。後は分かるでしょう」

 それって、つまり……

 私は冷や汗を掻きながらクロが言ったルールを頭に刻み込んだ。人間でも私も悪魔因子が入っている身。対象に入ってしまう。1つでも破れば……


「交渉は灯ね」


「ま、待ってよ……もし失敗したら私達は……」


「別に交渉が上手くいかなくても処罰の対象にはならないわ。何事も経験よ!」


「……こんな経験は要らないよ」


 ベットに横になる。クロは翠の陰包徳(リ・エミナァーデ)を私の頭上に置く。

「さぁ、行くわよ!」


「り、了解」

 私は目を閉じ、クロと一緒に翠の陰包徳(リ・エミナァーデ)の中にいる悪魔の精神世界に這い込んだ。



「開けても平気よ」


 クロに言われ閉じていた目を開ける……えぇ!?!?


「どこ……ここ??」


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