28話 剣舞劍鉾
「また、貴方ですか……。俺の邪魔しないでください、これ以上関わると貴方もそこにいる女達を同じく粛清対象にしますよ」
「あらっ! 嬉しいわね。ターゲット自ら来るなんて手間が省けて助かるわ」
「貴方の力、頂戴します!!」
割と早く会えたわね。後はカラス型のソドールの正体が明確に判明するのを待つしかないわ。
目的は勿論、こいつの成分を採取することだが、最悪、次でも良い。最優先事項は私しの後ろにいる2人——安齋月音とその姉の安齋萌香をこの場から救出すること。
左手に持っている【鉄藍の刀】を逆手に持ち替え、こちらから突っ込んだ。
突っ込んだ理由はいくつかある。
1つは、爆弾の射程距離に2人がいるため、なるべくカラス型のソドールから離すこと。2つ目はこいつの羽爆弾は1つ生成して攻撃に使った後、次が生成するまで少し時間があること。これは前回の黄華と戦闘して分かった。あの時、カサンドラという予想外な敵が乱入したが、いざとなれば黄華を狙えた場面はいくらでもあった。でが、アイツはそれをしようとしなかった。いや、出来なかったのだと見える。
ならば、先程、羽爆弾がない今の状況が好機となる。
カラス型のソドールは宙に浮いた。
そりゃそうだね。カラスを模しているんだから、羽くらい持っているし、空も飛べるか……
カラス型のソドールは宙に浮いた状態で翼を扇ぎ、その衝撃で羽が私しの方に槍のように降ってきた。時間が経過するにつれて槍が弾丸になり脅威的なスピードで落ちてくる。
「——ッ!」
走り出している足を急ブレーキし、即座に後ろに後退した。
たった今、青奈がいた場所に向かって羽が地面に落ち、爆発した。
爆発した地面は少しクレーターになっていた。砂埃が舞っていたが後ろの2人は【キャット】の中のため、無傷な状態。しかし、発動時間が1分半しかない危機的な状況である。
ちょっと、スピード違反じゃない……違うか。何よこれ……反則でしょう。
「試しにやってみたが上手くいくもんだね」
どうやら、アイツも初めてのことだったらしくキョトンとした顔をしていた。
先程の考えは訂正するしかないわね。今までのソドールのそうだったわ。急に力を面倒臭い方向に持っていく、こちらのペースを掻き乱すことを。
まぁ、そこをついていき、成分を採取してきたけど。今度の敵はそうもいかない。空域を独占されたのだ。こちらはただ、下からアイツが落ちてくるのをただ待つことしかできない状態になっている。
こういうのは黄華が喜ぶだろう。未知の敵との戦闘、1対多数の乱戦、更にクイーンズブラスターASKは【キャット】のエリアを変えないために預けてあるから、自分に付与できるものはない。正に絶体絶命的な状況でも獰猛な獣かと思うほどの戦いをする。代わるのも1つの手だが……。
1回、黄華の真似してみますか!
爆弾の衝撃で周りの家屋のガラスが割れている状態。しかし、家自体は崩壊していないため足場としてはイケるか。
屋根に移動するが、その前に……。
器用に後ろ歩きで安齋姉妹の所に行き、クイーンズブラスターASKを譲渡して貰った。
ジャスト3分。薄い膜は剥がれ守っていた絶壁の城が崩れた。
No.29 青マゼンタ色の【キャット】を取り外す。No.52 水白色の【ダイヤモンド】を差し込み発動。君は皆勤賞だね、ダイヤモンド君……
「この柱の前から出ないでね! 壊れたら引き金引いてね。新しいのが竹のように成長して現れるから」
そう言い残し、周りにある家に1つを目指し、走り出す。地面をジャンプし2階建ての家の出っ張り部分を掴み跳び、登る。屋根の上に到着し、空中に浮いているカラス型のソドールを見つめた。
こいつは空を飛ぶのも初めてらしく浮いたのは良いけど移動の原理がよくわかっていない為なのか水平方向にしか移動できていなかった。こちらに顔を向けたいのか翼を扇ぐ。以前体育でやった集団行動のスローモーションを見ている気分ね……。
こちらに顔を向けた瞬間、弾丸へ変貌した羽が私しに牙を向けてきた。
「それは、聞いてないわ」
屋根にいた私しは下目がけてジャンプした。
いつもなら【スパイダー】や【ホッパー】でなんとか着地していたが、今はできない。なので、己の身体を使っていかに怪我のリスクを減らすようにした。高所から安全に着地する際、両手両足を地面に付いて衝撃を吸収しながら着地しそのまま廻って更に衝撃を減らした。片足を身体の前へ曲げた状態にし、もう1つの足は膝が地面と接触している。
「この前のようには行きませんよ」
上で吠えずらかいているカラス型のソドール。
「ねぇ、私しの武器1つどっか行ってしまったの、探してくれないかな……」
「はぁ!? 知るかそんなものっ!」
「残念ね……探せば良いことあるのに」
「ますます、意味がわからね……ガハッ!」
空中に浮いているカラス型のソドールが海老反りの【く】の字になって私しに向かってくる。カラス型の奇行攻撃ではない。なぜなら、アイツも驚き、痛がりながら吹っ飛んできているからだ。まるで後ろから隕石にでも直接攻撃喰らっているように……。
このまま【濃藍の矛】と【鉄藍の刀】を合体することも可能。しかし、そうなるとカラス型のソドールのお腹にでっかい穴が空いた状態になり、中々、グロテスクな光景になる。成分を抜けば人間体に戻り、お腹の穴はなくなり元の人間になるけど、この攻撃を企てた本人には記憶に残ってしまう。
「うあぁ!?」
翼を後ろに扇ぎ、空中を自身の羽で汚した後、爆発し【濃藍の矛】が吹っ飛んでいった。結局、こうなるのか……
ため息を吐きながら、走り出す。家のガラスやドア諸々の外側部分を地面に見立て壁走りした。
跳躍し、足が落ちないように一生懸命斜面を登っていった。2階部分に差し掛かった所で壁を踏みつけ勢いよく跳んだ。空中を漂っている【濃藍の矛】を腕を伸ばし掴む。
空中で【濃藍の矛】と【鉄藍の刀】の柄の下部分を合わせ合体させた。
「行くわよ! 【賊藍御前】!!」
器用に【賊藍御前】を回しながら右腕を後ろに引くモーションを取り落下していった。
爆発の衝撃で地面へ一直線に落下していくカラス型のソドール。飛行能力があってもそれを扱う技術はアイツにはなかった。
地面に激突したカラス型のソドール目がけて刺しに行く。
ちっ、またお前か……
【鉄藍の刀】部分を受け止められた。正確には先が鋭い武器と剣先が広く周りが刃でコーティングされている武器が火花を散らしていた。
合体解除し、【鉄藍の刀】の柄を足でキックしカサンドラのチェーンソーを横一列から斜め下に傾かせこれ以上攻撃がないようにした。カサンドラも負けじと両手でチェーンソーの持ち手を持ち下から上へゴルフのスイングのように力一杯振っていた。
【鉄藍の刀】の柄部分を足場にしジャンプし身体を反りながら両足で着地した。
回り続けた【鉄藍の刀】は私しの前に刺さる状態になっていた。
カサンドラが器用に回り続けている【鉄藍の刀】の柄に向かって足を引き、足を伸ばしあげ蹴った。
跳んでくる【鉄藍の刀】と合体させた。左足を前に出し右足は左足の踵部分に密着させた状態で立ち、【賊藍御前】を後ろにやる。【濃藍の矛】を上へ【鉄藍の刀】を下に位置させた。身体を傾ける。左側を少し前に出し、右側を後ろへ捻る。
【濃藍の矛】部分を左手で持ち、【鉄藍の刀】部分を右手に持つ姿勢をとる。
灯達が使えるソドール能力
No.14 ライオン 白黄色
No.16 ??? ???色
No.25 カメラ 黄茶色
No.29 キャット 青マゼンタ色
No.33 ホッパー 青ピンク色
No.35 スパイダー 赤紫色
No.44 タカ 白桃色
No.47 シャーク 青水色
No.48 ボーン 茶橙色
No.52 ダイヤモンド 水白色
No.53 ミラー ピンク赤色
No.55 クレーン 煉瓦橙色
No.56 ラッキー 茶黄緑色
明日、仕事の関係で更新できるか危ういです
申し訳ございません




