18話 悪魔の頭にパーーンチッ!!(笑)
手を握られた。見覚えがある手。恐る恐る伸びている手の持ち主の顔を見ようとした。
「貴方って、時々、アホな行動するわよね」
白衣を着たクロだった。
「まぁ、それは良いわ……捕まえたわ、灯」
そんなわけで私とクロは帰路につく。
クロが璃子さんに頼んだらしく透明な手錠を私の右手に、もう片っぽを自分の左手に嵌めて私が逃げ出さないようにしていた。逃げれないのに何故か手を握ってまま、家に向かっている。
すずちゃんと綾ちゃんは買い出し……。
先日、買った衣装はキツネ型のソドールに投げて放棄してしまったので再び、買いに行っている。
透明で周囲の人には見えないが、当事者だけにはうっすら見えている手錠。
いくら見えなくても拘束状態で外を歩くのは中々、精神的にくる……。
灯:助けて……2人とも。てか、何やってるの??
黄華:あぁ……こいつの手伝い
青奈:それはここね。この三脚はテープが貼ってるから——そこに合わせて置くように……で、これはここで良し……バッテリーは……
私達の脳内は本当なら何もない空間のはず……しかし、私達3人が何かをイメージするとその空間の中だけ使えるようになっている。私が座っている椅子の頭上にはモニターが浮いており、そこから外の様子が見えるようになっている。青奈ちゃんはこうちゃんを使って、モニターを360度全方向を撮れるようにカメラなどを配置している最中だった。
青奈:この日のために外で雑誌や動画サイトで高画質の撮影機を記憶してきたから私しに死角はないわ!!
黄華:カメラとかで撮っても現像できないぞ……
青奈:分かってるわよ、そんな事……これはあくまで雰囲気よ。身体に記憶されるから勝手に私達の中にデータのように入ってくるからね。ここからだと外の様子は灯ちゃんが見た景色しか見えないけど、すずに頼んで灯ちゃんの目の前に大きな鏡を設置してもらうようにしてる。反射した姿しか記憶できないから少し変だけど、正位置のちゃんとした本物の灯ちゃんの姿はすず達にお願いしてるから、後で見せてもらうのよ。
黄華:と、言うわけで暴走状態のこいつを無視すると後々、何するかわかないから。僕はこいつの手伝いをしないと行けないんだ。ごめんね。
灯:そんな……こうちゃんだけが頼りなのに……外にはもう私の味方がいない……
黄華:諦めよう、灯。次、あの悪魔クロに勝てば良くない? 今日、灯が受けたモノ以上の事を罰ゲームにしてさぁ〜
灯:そうだね……この敗北を糧に次はクロを負かす!!
青奈:あぁ! 灯ちゃん!! ここでしっぃぃぃ………かり勇姿を鑑賞してるからね
青奈ちゃん……そのサムズアップはいらないよ……
私が脳内でわちゃわちゃしてる最中に、家に到着していた。
クロに連行されながら2階の部屋に足を運ぶ。クロが扉を開けた瞬間——。
「おかえりなさい。灯、クロ」
そこにいたのは璃子さんだった。いつもの白衣ではなく、何故かゴスロリの衣装を着込んだ璃子さん。
「り、璃子さん、何ですかその格好!?」
肩開きのテールカット。黒を基調としたワンピースでブラウスやスカートが前の裾が短く、後ろの裾が長いようになっている。薄い黒のストッキングには花の模様が装飾としてあしらっていた。
ヒールが高いパンク調の厚底ブーツを履いている。髪もゴスロリに合わせて縦ロールになってる。璃子さんは髪が長いから縦ロールも難なくできている。
凄い……どことは言わないけど。璃子さんはほとんど白衣で過ごしているから新鮮。でも、まさかゴスロリを着た姿を初めに見ることになるとは……思わなかった。
人が何をやっても自由だから、いちゃもんつける必要はないけど……これは……
「璃子……似合ってないわね」
ちょっと、クロ!! そこはオブラートに言うか、言わないのが常じゃない!!??
何、ドストレートに言ってるのよ。
私はクロの腕の裾を引っ張ってこれ以上言わないように促したが、クロの口は潤滑油が塗ってあるのかこれでもかって言うほど璃子さんの姿の感想を言っていった。
璃子さんも段々、頬が赤くなりその場にしゃがんで顔を見えないようにしていた。
「クソ……クロに踊らされるなんて一生の恥だわ……しかも、こんな格好……他の奴らが私の姿を見たら私は社会的に死ぬわ——」
ブツブツ璃子さんが独り言を言ってる。
「ねぇ……璃子さんに何言ったの?」
「うん? いつも白衣だけだと味気ないから少しはお洒落しなさいって言った」
私達が帰ってくるまでに【太義の蛮輪】の改修案を見つけなかったらクロが用意した服を着て、今日の撮影会に参加することとクロと対決したらしい。
結果はお察しの通り、璃子さんは期限までに【太義の蛮輪】の改修案を探せずあの格好になっていた。
「【太義の蛮輪】が失ったパワーを、補えるモノを組み込まないとソドールや他の悪魔に立ち向かえ無くなるわ。今回は敵が属性なんてモノを持っていたから何とか成分を回収できたけど、今後出てくるソドールがみんなそうじゃないから急がせたのよ」
璃子さんを焚きつけさせるための対決だったのか……クロもクロで考えているんだね。
そうだ!! 私も……
「ねぇ〜 クロ!! これからも頑張るから今日の撮影会は無しにしよう!!」
「えぇ? 何で? 灯のは己が怠った結果よ。ここでやらないと次もそのまた次も私に負けるわよ。これを糧にしなさい、ね!!」
クソッ!!! その顔止めて。殴るわよ!! 覚えてろよ、クロ。
私の感情が徐々に暗黒面に染まっていたがこうちゃんのアドバイスで私の次の目的が決まっているので己のドス黒い力を鎮圧した。
黄華:暗くなったり、明るくなったりと忙しないな〜 この空間……
青奈:灯ちゃんもコントロールできるようになってきてるわね。後は……
そして……
璃子さんの研究室を使って鑑賞会が行われた。
璃子さんはそのままゴスロリでパソコンに齧り付いていた。余程、着たくないのか圧倒的集中で研究している。
「ねぇ……何これ!!??!??!!?」
私は勢い良く扉を開けた。実践場を着替えスペースにしている。
クロに着るようと袋を渡され中から出して見たら、思わずクロに声を荒げてしまった。
「初めはそれよ!!」
簡単に言えば、ビスチェだ。よくある白いタイプ。私が知っているのはお腹位まであるデザインのモノ。しかし、クロに渡されたモノは違った。ふくはらぎ丈のビスチェドレス。着た人の身体のラインがくっきり分かるようになっている。様々なレースが組み合わさって装飾されているデザインになっている。これまでならまだ良い。問題は……
「これ、想像以上に透けているんだけどっ!!」
「あぁ〜 それはね。エラスティック・ファブリックとチュールが融合してできているの」
エラスティック・ファブリック? チュール?? 舌を噛みそうな名前やよくわからない言葉……てか、横文字ばかり使わないでよ。
「簡単に言えば、物凄く伸縮性がある布地と物凄い透けている生地のこと」
「袋に入っているヒールも一緒に履いてよ!!」
「うーーーーんっ!」
ここから2時間の間、みんなに着せ替え人形の様に扱われた……
クロプロデュース衣装
・ビスチェ
・ビキニ鎧
・ひも
・クノイチ
・浴衣(丈が短い)
・チアガール
・ポリス服……など全て過激な衣装になっていた
すずプロデュース衣装
・バニー
・ネコパジャマ
・チャイナドレス
・ナース服
・女教師
・CA
綾プロデュース衣装
・ウサギ
・羊
・犬
「持ってきたカメラの容量が全部一杯になった……」
「端末の画像データがすごいことになった……」
「まだまだ行くよ!! 灯!!」
クロに強制され、モデルポーズをとる灯。
「いつ、終わるんだろう……」
楽しい? 時間を過ごした……
「次はこれね!!」
クロが出したのは……水着だった……
はぁ〜 もう嫌…………ふふん!!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「そんな顔しないでよ……ちょっと疲れただけだから……」
「ーーーーッ」
クロを抱き抱えながら、私は涙を流しながら首を横に振っていた。クロの顔を見たいのに涙が邪魔して徐々に見えなくなってきた。涙を拭った腕には砂埃が付着していてそのまま私の涙と合わさって顔に付着していたがそんなものはどうでもいい。鼻水を垂らしても大量の涙を流しても、今はクロの顔を見ないと後悔する……
私の為に……クロが……何か回復手段は……
片手で自分の着ている怪盗服の至る所からソドールのマガジンや璃子さん印のアイテムを地面に出しても、そんなものはなかった。
???型のソドールが放った羽爆弾の影響で廃工場の中は爆発と砂埃が舞っている。
視界が悪くなる。砂埃が舞う度にクロの顔に直撃し、私はそれを払う仕草をしていた。
クロの腕が上がり、私の頬に手を置いた。
「心配しないで……こんなことで私は死なないから……ただ、少し眠くなってきただけ……」
「ダメッ! 寝ないで……起きて……私と一緒にこれからも……」
「楽しかったよ……」
その言葉を最後にクロの手が私の頬から離れ、地面に落ちていった。
クロの身体が軽く感じた。目も閉じていた。
私は受け止められない現実に目を背け、身体を丸め地面に向かって絶叫していた。
「いやぁぁぁぁっぁぁぁっぁぁああぁぁぁあああぁっぁぁぁ」
私の方に歩いてくるソドール……
「まずは……1人。次はお前だ、怪盗女」
???型のソドールが手には、羽爆弾で吹っ飛んだクロが持っていたマガジンが3本……。
私は顔を上げ、そいつを見ていた。地面に溜まっている砂を握っていた。
———お前を殺す———
目の前のソドールに対して怒りの気持ちが抑えきれなかった。
どんな手段を使ってもお前を倒す…… 覚悟しろよ……
目を尖らせ身体を震わせながら、私は憤激の顔でこいつを睨みつけていた。
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