16話 真の痛み
【カメラ】のおかげで教会内の状態が良く見えている。
上を確認したが、あんな悪趣味なモノは出現していなかった。
キツネ型のソドールはウェディングドレスとキツネのソドール。
ウェディングドレスの方はドレスの衣装を変える事で様々な能力を得られる……。変わる際に必ずキツネ型のソドールが1回転する必要があるのは確認した。その隙を狙えば攻撃が当たる……。それまでは回避するか守りに専念するしかない……。
キツネの能力の方は今の戦闘でおおよその検討はついた。まず幻覚体験が発動するタイミングはキツネ型のソドールが密閉されている空間、建物に入るのが能力開始の合図となる……。
しかし、この能力には恐らくそこまで万能ではない……。
なぜなら、幻覚体験を行う能力を使うなら外の方が効果的。それをやらないのは密閉にしなくちゃいけないと使えない……。なら、攻略は簡単……密閉にしなければいい。勿論、自分がキツネ型のソドールの幻覚空間に入っている状態では、既に幻覚空間に入学している為、例え密閉しないための工作をしても相手が作った領域ではこちらが好き勝手できない……窓を割る、建物を破壊する等をやってもそれは幻覚領域で行ったことで破壊した光景を見て敵の能力を打破、攻略成功しても自分の勘違いと頭が認識してしまう為、無駄骨になってしまう。外からの攻撃をして解除できる可能性がある。なので、外から教会のステンドガラスを破壊した……。
「これで視界がクリアになった……この前の悪趣味な空間がなくなったわね……これで変なモノに気が散ることもないわ」
「こっちも好都合だわ……。お前を倒せる……倒した後、アイツを八つ裂きにする」
キツネ型のソドールは1回転しドレスの衣装が変わっていた。緑から青に変更していた。
持っているレイピアの刀身が青く染まっている。
私との距離があるにも関わらず、キツネ型のソドールは私に向かって突きの動作を行っていた??
剣先から水が勢い良く噴き出した。放出された水はそこまで多くない。消防車の放水に近く、水が勢い良く噴射してきた。キツネ型のソドールが持っているレイピアの剣先から放たれた水は威力がなくなる事もなく絶えず水平にきた。
「——っ!」
レイピアの剣先から垂直に向かって水が放出された……
『ダイヤモンド』!!
【ダイヤモンド】の柱を出し水を直接当たることは回避できた。
【ダイヤモンド】の柱を掴み身体を横向きにして私の左腕を足で蹴られた……蹴られた拍子に【ダイヤモンド】のマガジンが抜け木製の椅子の下に転がっていき、私は外へ通ずる教会の出入り口まで転がっていった……
キツネ型のソドールは緑のドレスに変わり切り裂こうとしてきた……。
すぐさま、立ち次の行動を取りたいが風属性の攻撃は距離を選ばない……防御したいが……。
【ダイヤモンド】は何処かにあるから今、起動できない……。【ライオン】を使ってもエネルギー弾が弾かれこちらに来る可能性がある……そうだっ!!
【キャット】のマガジンをクイーンズブラスターASKに装填し、起動した……
『キャット』!!
自分の足元に向かって撃つ。私の周り、円状の空間が出現した。少し薄い青色の膜が張られ筒状の空間が上まで伸びている……
キツネ型のソドールが私に向かってレイピアを向けたが攻撃が【キャット】で出現した薄い青色の膜に当たったが、弾かれ風が一瞬消えた。
「すごっ!!」
弾かれたことで後ろに後退したキツネ型のソドール。
「そんな力があったなんてね……」
「これで貴方と近距離の戦いができる!!」
【裁紅の短剣】を取り出し、走り出す。
剣と剣がぶつかる……
どうやら、この空間の中にいても起動した人間が持っている武器は空間外に飛び出すが、武器は薄い青色の膜に覆われ、【キャット】の防御シールドの影響を受けるらしい……
これによって、キツネ型のソドールが火や風の攻撃を繰り出しても【裁紅の短剣】に火がうつる心配もなく、鋭い風で【裁紅の短剣】が傷つく事もない。
イケる!!
『シャーク』!!
【裁紅の短剣】の刀身に鮫の牙を生やし、1撃で多方向の攻撃を仕掛けた。
ドレスは特殊な保護があるわけではなく、見た目通り布でできていて切り裂く事も可能だった。
布なので耐久はそこまでなくキツネ型のソドールのドレスは限界を迎えていた。
しかし、そこまで上手くいかないもの……
【キャット】を起動してから2分半が経過しており、もうすぐ3分が経とうとしていた。
薄い青色の膜に徐々に亀裂が入る。卵のひび割れのように初めは薄い亀裂になっており1秒1秒経過する毎に亀裂が多くなり、それが次第に周りに現れていた……
そして……
膜が割れ、割れたガラスのような形状になり赤いカーペットの上に落ちていった……
ウソでしょう……?? あぁ、そう言えば……璃子さんが言ってたっけ??【キャット】の使用期間が180秒……それを過ぎれば発動が終了してしまう。
【裁紅の短剣】をキツネ型のソドールに対して右上から左下への斬り上げの攻撃を放った後に後ろに後退した。
後一息だったのに……私の攻撃で消耗し切っている目の前のキツネ型のソドールだったが、【キャット】がない状態となると遠距離でしか攻撃手段がない……【太義の蛮輪】は何処かへの僻地に行っている。探している暇をコイツは与えてくれない……他には【ミラー】の中に入れさせるしかないかな……
「さて……どうしますか」
「あの無敵空間がないのね。今度はこちらね……さっきの牙で緑のドレスはズタボロになり使い物にならないけど、残りがあるわ」
そう……ある程度の攻撃を浴びせて怯ませてきたので、初めよりも脅威が低下していた。
しかし、あちらの属性攻撃はドレスが無くなれば使用できなくなる。あちらも残り2種類しか手段が残っていない……少し懸念していた、近藤さんの調査のおかげでドレスの種類は割れているが3種類だけとは限らなかったので警戒していたがどうやらそれだけだと思う……
キツネ型のソドールが黒と赤のウェディングドレスに切り替え、こちらに歩いてきた。
「貴方を殺してアイツを殺す。そして、ワタシも死ぬ……あの人のもとに向かう……」
「大切な人が居なくなり、その原因に復讐をするのは分かります……」
「なら……邪魔しないでくれるかしら……」
「……でも、自分が死ぬ必要はないです……」
「貴方に何がわかるの……小娘が!!」
怒りに任せて歩く速さが高まっていた所に怪盗の顔が目に入った……
怪盗の顔を見たワタシは目を見開いしてしまった。
怪盗の顔は哀愁漂っている……
「自分が死んだら……意味ないです……生きて、生きて……いない人の分まで楽しい人生を送るのが相手にとっての一番の復讐方法です……」
「貴方も……色々、あったなのね……ワタシのこの力を狙うのも……」
「貴方の力をこれ以上、使わせません……ここで止めないと皆んなが救われません……」
皆? まぁ……こんな力が都合よく出現するわけないか……もしかしたら、この怪盗の大切な人達が関係しているのかもね……
「……私は。貴方の成分を回収します……」
私は逆手に持ち【裁紅の短剣】を構え、臨戦態勢に入る。
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