4話 協力者は変な人達でいっぱいです
私は部屋を出て、2階にある璃子さんのオフィスに入った。
「おぉー!! よく似合っているじゃん、姫!」
「おはようございます、零冶さん。こんな、朝早く来るなんて珍しいですね?」
坂本零冶は探偵だ。
探偵と言っても行く先々で事件に出くわし、多くの難事件を解くような死神探偵ではなく、猫探しや浮気調査などを行うある一部の依頼を除けば、一般的な探偵だ。そして、この人は、極端に朝に弱い。なので、こんな朝に来ること自体おかしく、何かを疑うのは自然だ。
「まずは、昨夜のお仕事お疲れ様。大変だったんだって?」
そうだよ! 零冶さんにあったら一言、言おうとしていたんだ!
「ホントですよ! なんで、あんなにトカゲ型が動けるんですか?? まだ、ソドールになってからそんなに経っていなかったのに——知っていたら、あんなに吹っ飛ばされる羽目にならずに済んだのに」
方向感覚がなくなるってあんな感じだなんて......もう2度と経験したくないリストでNo.2になった。
因みに現時点での不動の1位はクロからの賭けに負けること。ソドールの戦闘以外にもクロはあらゆることで私と勝負をしている。ここ数日は私が連勝しているが、負けるとクロはここぞとばかりに罰ゲームのレベルを上げてきて私に襲い掛かる。
「それは、ごめん!! まぁ、終わり良ければ総て良しってことでね」
「それでちゃんと、ソドールの成分は回収したんだろ?」
「えぇ、でも......」
「分かってるよ。敦、俺の息子のじゃなかったんだろね......」
「はい......ごめんなさい」
灯が今回、回収したソドールで5体目
ソドールは全部で60体存在している。
人間を更なる進化のために暗躍している組織アイズ。
元々のソドールは人間の身体に動植物の遺伝子を注入し、様々な能力を得ることができる人間をつくるのを想定されていた。
1つ目の遺伝子は成功し、人間体のまま様々な動植物の能力を使うことが可能になっていた。
しかし、組織は欲をかき、2つ目の遺伝子をクラスメイト30人に注入。
その結果、クラスメイトが人体実験の影響で化け物に成り果てた。
更に、幼かったのか身体がついてこなくなり、細胞が2つに分裂した。
それぞれ、2つの人形が誕生した。
「気にするなって......全て回収できれば俺を含めて姫に協力している者達は満足なんだから」
「......ありがとうございます。それで今日はどうしたんですか?」
「実は、これを渡すの様に頼まれたんだ、近藤に」
そう言って、渡されたのA4サイズの茶封筒だった。
私とクロの怪盗行為を手助けしてくれる協力者は一部を除き、私のクラスメイトの親や親族だ。半年前、実験棟から逃げた私は、クロの案内で古い屋敷に連れていかれ、一端、そこで身を隠すことにした。ヤクザの大頭が住んでいそうな日本屋敷の家だった。
紹介されたのは、ヤクザとはほど遠い、高校の理事長を務めている大文字巌さんだった。
彼から話と聞くと、ここ数年はありとあらゆる方法で私たちを捜索しており、裏の人間を使って探していたそうだ。しかし、誰一人として帰ってきたものいなかったそうだ。諦めかけていた時、趣味で古今東西の文献を収集していた巌は1冊の本を手に取った。
〈悪魔召喚の本〉
エジプトの古美術商から譲りうけたいわくつきの本。
いかにも、胡散臭い本だったが、藁にも縋る思いで悪魔召喚を行った所、クロが召喚され、契約したそうだ。契約内容は、あの日、いなくなった孫含め31人の子ども達を見つけることだった。対価は彼が払えるモノなら何でもだったらしい。
結果、私は脱出し、巌さんにこの10年で何があったのか全て話した。
そして、私は、クロと契約しクラスメイト30人で作られた人形を回収することも話した。
その、熱意に打たれ巌さんは私たちの協力者になってくれた。そして、巌さん同じように子どもを亡くした人たちを集め、協力してくれることになった。
そこで、出会ったのが、零冶さんのような探偵や新聞社の記者などの情報収集のプロだった。
まず、彼らからソドールに関する情報を集めてもらい、変身者、つまり、あの都市伝説で人形を得た人は突き止め、それを、私達に報告し、回収実行するのが私達の怪盗手順だ。
巌さんは、協力者のまとめ役のようなことをし、零冶さんは、主に夜の情報を集めている。このように、協力者にはそれぞれ、担当分野・時間がある。
零冶さんは夜担当、先ほど名前がでた近藤さんこと、近藤一輝(37歳)
オカルト系出版社【ゴースゥート】の記者
一部のマニアの間では神と崇められている凄腕記者で日夜、全国のオカルト情報を探す勇猛果敢な男。一応、彼も夜情報の担当なんだけど、情報は鮮度が一番を掲げており、どこでも短時間で寝れるという体質のおかげで、昼夜活動できるため朝・昼担当も熟している。
よく、そんな生活ができるな。私には、絶対に無理なことだけど。
「あいつ、締め切り間近でヤバいらしく、それを、俺に渡してきたんだ」
私は、封筒の中身を見ようと用紙を出すと同時に零冶さんが「実は、伝言も預かっている」
見出しには《木ッ菩魅烏高校の7つ目の処刑人》と書かれてあった。
「今回のターゲットは姫の通っている学園の生徒だ」
新学期1日目でこんなことになるなんて。
協力者は至る所にいます。