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レッド・クイーンズ ~天織灯のあくまな怪盗生活~  作者: 麻莉
1章 4月~5月 新米女怪盗は1歩を進む
35/193

35話 FREEDOM VS JUSTICE 5月19日 Ⅱ

 ネコ型のソドールとの戦闘でのダメージが抜け切れず路地裏で横たわりそうになった。






 5分前

「はぁはぁ.........最悪......」

 全身から汗が噴き出ていて見っともなかったが、あの場に留まるよりマシと思い壁をつたり、よろめきながら歩いた。


 ドサッ


 ついに足が限界に達し動かなくなった。地面に膝をついたが、足に力が入らずそのまま倒れ込んでしまった。全身がぷるぷる震えていて動けなくなった。


「もぉうー、1歩も歩けない......」

 体力が底をつき泣き言を垂れていた。


 路地裏の奥から誰かがこちらに向かって歩いてくるのが伝わった。

 立たなくちゃいけないね。どこの誰かでもこんな格好でボロボロの姿を見れば誰だって介抱したり救急車を呼んだりする。そうなると私の正体が白日のもとに晒されてしまう危険性がある。


 そんな思いが私の頭を支配し、立ち上がろうと両手を地面につき身体を押し上げ、気合いで足に力を入れた。ゆっくりではあったがなんとか立つことができた。ほぼ気力だけで立っており、またいつ倒れてもおかしくはなかった。


 その予感は的中し、顔面から地面に向かってゆっくり落ちていった。

 前方へ倒れ込んだ私を誰かが駆け寄り抱きしめた。

「だ......れ......」


 私の意識はそこで途絶えた。









 暗いーーーーーーー。

 意識はハッキリしていなかったが、これが夢の中だと理解できた。

 直立している灯の周りは微かにぼんやりと光の円の様になっており私の素足が見えるだけだった。そこから、1歩でも外に出たら闇に飲み込まれそうなそんな状態に見えた。




 ふと、灯の頭に唐突に声が聞こえた。




 ーーーーーーーーー戦いなさいーーーーーーーー




 その言葉が何回も頭に入ってきて、次第にそれが朝、セットした時間に目覚まし時計が鳴り響いて頭が割れる様な感じになった。

 両耳を抑えて声を聞こえないようにしても鳴り響いた。


 誰かが、話かけてきた。


『あなたは悪魔の力をほんの少ししか使いこなせいない。あなたのはまだまだ、やってもらう事がいっぱいあるの。来る日に備えてね。勝利、敗北いくつあってもワタシは気にしないわ。最後に全てが成功していたらそれで良い』



「あなたは誰......」

 灯の意識が薄れていく。夢が終わった証拠だった。









 私が目を覚ますと見慣れた天井だった。

 何か夢を見ていた気がするがその内容は全く覚えていない。

 でも、どこか懐かしい感じがした。

 寝ていた自室のベッドから身を起こすと、クロが微笑んで話しかけてきた。


「おはよう、灯!!」


「おはよう、クロ。クロがここまで連れてってくれたの?」


「えぇ、路地裏で灯が倒れそうなのを発見したね」

 私の帰りが遅いことでみんな心配になり、私の携帯端末のGPSの位置情報で居場所が分かり、クロが迎えにきたらしい。

 探している内に私が路地裏で倒れそうなところを発見して家まで運んでくれた。


「ビックリしたわ!!」

「灯がいる場所に向かったら、消防車や警察がわんさかいて、周りは燃えていたしパニックになったわ」


「ごめん、あの現場の火事は私が......ネコ型のソドールを追跡している最中に新しい能力の調整をミスったのが原因なの......」


 あの攻撃がなかったら街中が火の海にならずに済んだのに。

 ここまで、多少、苦労はあってもうまくソドールの力を回収できてたから少し浮かれていたのね。その天罰がこれ。

 正直、情けなかった......



「警察の話では負傷者や亡くなった方はゼロだって」


「そっか......良かった......」


「ねぇ、クロ......私って、なんでこんなに弱いのかな......」

 涙が止まらなかった。クロがそばにいてもお構いなしに涙が溢れていた。




「灯!!」

 クロは両手で、私の両頬を挟み、タコの様な口にされた。


「いい!! 灯は弱い、それは紛れもない事実。でもね、初めから強い人なんていないのーーみんな、何かしら負けて、敗北してるの、どんな小さいことでもね。そして次に勝って、前に進むの。勝って、負けてを繰り返し、その内段々、勝つだけになる。そうやって、人は成長していくの」


 その言葉を最後にクロは私の頬から手を離した。


 両手で挟まれたことで少し赤くなりヒリヒリしているのが感覚でわかった。でも、痛みじゃなくて温かい感じがした。


「クロは強いね!!」


「まぁ、伊達に長生きしてないわ」


「......あれ? でも、この前、元部下と戦闘していた時、荒ぶっていなかった」

 笑いながらクロを挑発......いや、からかった。


 その言葉でクロに電流が走った。

「言ってくれるわね。あぁ、そうですよぉー 私なんて、豆腐でできていてすぐに崩れるようなダメダメメンタルな悪魔ですぅー」


 そっぽ向いていじけていたクロ。

 その姿を見た私は苦笑を浮かべ、部屋いっぱいに聞こえる量で笑った。


「やろう!! 私たちの成長物語ーー2人ならやれる!!」


 青奈:ちょっと、私しは!? 灯ちゃん!? 無視するなんてお姉さんは悲しいよ。


 黄華:わざと僕を入れていないことに激しいものが込み上がってくるんだけど。


 青奈:あぁ、ごめんなさいねぇー 小ちゃくて見えなかったわぁー



 黄華:久々に切れたわ!! 今のは完全にカチってきた。今日こそ、お前のその脂肪、削ぎおろしてやるぜ!!


 青奈:やれるもんならやってみなさい!! 逆にあなたの身長をさらに縮ますわよ!!



 2人は本気で取っ組み合いながら戯れあっていた。

 灯:ふ、ふふぅ......そうだね!! 4人で、だね!! 今後ともよろしくね、青奈ちゃん! こうちゃん!


 床で戯れあっていた2人はお互いに手を離し、私の方へ無言でサムズアップした。


 青奈:そういえば、さっき悪魔に頬を挟まれた灯ちゃんーーとっても可愛かったわ!!

「ぷにゅっ」としたかわいらしい顔が愛しかったわ!!


 黄華:君はブレないね......(はぁ〜)


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