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レッド・クイーンズ ~天織灯のあくまな怪盗生活~  作者: 麻莉
1章 4月~5月 新米女怪盗は1歩を進む
32/193

32話 FREEDOM VS JUSTICE 5月17日

 5月17日ー火曜日。

 この日から私の通っている木ッ菩魅烏高校の中間テストの準備期間に突入した。

 テスト期間は来週の5月24日、火曜日から始まり、5月28日、土曜日に終わる。今年はそんな流れらしい。

 お昼休み、私のところにあやちゃんが猛スピードでこちらにきた。

「ビックリした......綾ちゃんどうしたの?」


「灯ちゃん、お願い!! 勉強教えてください〜〜」


 土下座していた。

 床が凹むほどの勢いで土下座していた。

 営業マンの研修でお手本のようにさせそうな、見事な土下座だった。


 咄嗟のことで頭が追いついてこずしばし金縛りになっていたがようやく状況が理解でき、慌てて綾ちゃんを起こした。

「か、顔を上げてよ、顔が汚れるから......」


 床に強力な粘着剤が付いているかのように、頭が床から離れようともしなかった。ようやく剥がすことに成功し、私の前の席の椅子に座らせた。


 綾ちゃんが土下座してまで私に頼み込んだわけを話ししてくれた。

 なんでも、今回の中間テストで赤点が1個でもあった場合、毎月のお小遣いが減給され、毎日、家族の監視の中、ひたすら勉強をやらされる地獄が待っているとのこと。

 それを回避するために女のプライドを捨ててまで綺麗な土下座をして私に懇願してきたと......


「勉強を見るくらいなら私でもできるけど、私そこまで頭良くないよ?」


「何言ってるの!? 1年の後半から編入してきて2学期、3学期と張り出し組に入ってたじゃん!」


 私達が通っている木ッ菩魅烏高校は定期テストの合計点数を各学年ごとに学制棟入口に張り出され、成績優秀者上位100名が張り出される。張り出されたからといって特別に何か学園から贈り物があるわけでもないけど生徒の鼓舞を高めるためとのことで実施しているらしい。


 実際、私の場合、文系科目はクロが、理系科目は璃子さんから教わっている。璃子さんは言わずもがなのバリバリの理系。クロの方は一応、全教科教えることができるらしい。中でも日本史や世界史などの歴史、国語の漢文や古典が得意らしく、なぜか教科書や参考書にも載っていないことをさも見てきたかのように話し教えてくれる。


 早速、教えることにした。


 放課後、教室の席で綾ちゃんが突っ伏していた。

 机の上には教科書が散乱していた。綾ちゃんが頭を抱えながら、ぼやいた。


「......あぁ......ーー覚えること多すぎるよ」


「あぁ!? 綾が勉強してる」


「無駄無駄、頭にいくら詰め込んでも元がお粗末だから理解できないし」

 同じクラスの女の子達が綾ちゃんのところにいやらしい笑みを浮かべてやってきた。


「うるさいなーー今回の私はマジなの、私の命が危険に晒されるの」

 綾ちゃんの周りから炎が燃え上がっている。


「おーおー、今回の綾は本気なのでわ」


「すごい気迫......マジっぽいね」


 2人は私の方に敬礼しながら謝罪してきた。

「天織さん、このバカをお願い致します」


「天織さん、こんなアホだけど、体力だけはあるから死ぬ気で教えてあげてください」


「はい、了解しました」

 同じように私も敬礼した。

 2人は鞄を持って教室から立ち去った。

「くぅぅぅっ、あいつら......」


「一応、気にかけてくれてるみたいですし良い友達だと思いますけど?」


「いや、あれは単純に私をからかって......楽しんでいるだけだよ......」


 そんなたわいもない話をしながら外はすっかり暗くなってきたので家に帰ることにした。

 別れ際の綾ちゃんが「頭が爆発しそう」と口ずさみながら歩いているのを見送った。







「ねぇ、クロ」


「うん? どうしたの灯?」

 現在、クロはメイド服を着ておらず、私服になってソファーでファッション雑誌を見ながら寛いでいた。ふわりとした黒パンツとV字の白シャツだった。

 相変わらずの美貌の持ち主。アイドルや女優達が逃げ出すのがはっきりわかってしまう。


「次の中間テストに出そうな問題を作ってほしんだけど......その、同じクラスの鈴木綾さんのために......」





「急にどうしたの......あぁ、そういうことね」



 急に私の方に近づき指先で私の顎を引き上げた。


「ふうーん、あなたも友達のため頑張る女なんだね。良かった、良かった!!」


「な、何よ」


「あなたの少しずつ変わってきているなって。もう昔のあなたとは別人みたいだし」


「昔って、クロと出会ったのなんてここ数ヶ月くらいでしょう?」


 目を見開き瞳孔も広がり驚いた表情になり、一瞬、暗い表情を見せたが、すぐに元に戻り私の顎から手を離した。


「プリントを作るより私が教えてあげるわ、その方がその子に的確な質問できるしね!!」


「それはありがたいけど、でも、良いの?」


「問題ないわ、むしろ来てほしいくらいよ」

 私とクロの会話に入ってきたのはマグカップ片手に少しくたびれた表情の璃子さんだった。



「その綾って子も良いけど、私は橋間すずに興味があるわ。連れてこれる?」


「すずちゃんも? 後で聞いてみるけど、何で?」


「灯が今まで戦ったソドールは成分を抜いた後、自分が怪人になる前の記憶しかなかった。でも、橋間すずだけは今の所、自分がソドールになって灯と戦ったことを覚えている唯一の人物ーー貴重なサンプルよ」


 確かにここ半年、ソドールの成分を抜くとターゲットの人は自分が怪人となって人々を襲っていた記憶がなく、ソドールになる前までの記憶しかなかった。

 それなのに、すずちゃんだけは、どういうわけか記憶が消えることはなくそのままだと本人も言っていた。


「もしかして、人体実験とかしませんよね......」


「しないわよ、あんなこと、唯の検査だけよ。それに、覚えているなら、誰から人形を貰ったのかわかるしね。もしかしたら、自分の目の前に落ちてきただけの運命かもしれないし、色々な可能性も視野に入れとかないとね」


「わかりました。早速、聞いてみます」


 あっさり、OKが出てた。

 明日、私と綾ちゃん、すずちゃんの3人で私の自宅で勉強することになった。


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