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レッド・クイーンズ ~天織灯のあくまな怪盗生活~  作者: 麻莉
1章 4月~5月 新米女怪盗は1歩を進む
28/193

28話 深紅のキリンは如何ですか

お待たせしました。


先の話の執筆と仕事のストレスで午前中、無気力状態になっておりました。

なんとか、脱却してやる気が湧いてきました。


よろしくお願いします。

「わぁ!! 灯ちゃん、すっごく似合う!!」


 私は凛田さんに渡されたスタッフの制服に着替えた。

 黒のベスト、黒のタイトスカートでバーテンダーの格好だ。普段、着慣れていない服だったので思った以上に窮屈で背筋が自然と伸びる感じがした。

 私に合う服のサイズが置いてあって良かった。


 あはっと笑った凛田さんが、両手を胸の前に組み合わせ、満面の笑みを浮かべていた。


「髪も結んでいて、さっきと印象がガラリと変わって可愛い!!」

 一応、飲食店なので、凛田さんに倣って髪を後ろに束ねてポニーテールっぽくしてみた。

 開店まで残り僅かになり最後の確認と凛田さんが色々教えてくれた。


「営業中、何かわからないことがあったらすぐに言ってね。灯ちゃんは初日だから、無理しなくて良いから、ちゃんと呼んでよ!!」


「了解しました、凛田さん」

 敬礼みたいなポーズをとる。凛田さんはカウンターで氷の準備をしていた。

 用途によって、さまざまな種類の氷を使い分けるそうだ。カウンターは狭い構造になっているのでカウンターから1歩も外に出ないで済むように、あらかじめ色々な準備を整えているとのこと。

 備え付けられている時計を見ると、あと10分で開店の時間になった。

 不意に手が奮ているのがわかった。自分の身体が緊張しているのを感じた。


 青奈:いつでも言ってね!!

 すぐに交代するから!!


 灯:頼らせてもらいます......


 青奈・黄華:((すっごい、緊張している......))


 17時になったので、凛田さんに言われ店外照明をつけて、表の札をオープンに変えてきた。


 早速、2人の男性が入ってきた。

「いらっしゃいませ!! お好きな席へどうぞ!!」と案内した。


「ご注文がお決まりでしたら、お声をおかけください」



「おお!! 見かけない子だね!!」


「また、若い子が入ってきて嬉しいよ!!」


「い、いえ、私はただのヘルプです。今日だけ、お手伝いすることになりまして」



「あ、そんなんだ? それじゃあ、とりあえず......」





 そこから、あっという間に時間が過ぎた。







 22時ーーーー

 今日は早めに店を閉めることになった。

 未成年が夜遅くまで出歩いていると警察に何か言われるかわからない。

 流石に、私までいなくなり凛田さん1人でお店を動かすのは現実的ではない。

 私と零冶さんの説得で凛田さんのお店「バーSIRIUS」は今回のみ早めに閉店することになった。

 来店してくださるお客様も凛田さんのことを心配し快く承諾してくれた。


「今日は本当にありがとうね」


「はい!! 私も楽しかったです!! でも、すみません......。途中、ぎこちない動きをしてしまいまして......」


「良いよ、良いよ!! 初めての人はみんなあんな感じだから気にしないで!!」


 以前、零冶さんの勧めでカフェの接客を体験したことが功を奏したのか、お客様にカクテルなどを届けることは出来ていたと思う。

 しかし、お客様との会話が長く続かなくなることがあった。すずちゃんや綾ちゃん、同級生の女の子との会話で前よりおしゃべりすることができるようになったがまだまだ先は長いと感じた。


「ここのお客さん、みんないい人達だったでしょう!」


「はい! 皆さん、気さくな人達ばかりで色々、助かりました」


「たまに、ベロンベロンに酔った人がお店に入ってくることはあるけど、ほとんどはオトナの人が来てくれるから新しくお店に来てくれる人も入りづらいことも変に緊張せずに来てくれるの」


 バーテンダーの制服に脱ぎ、私服に着替えた後、凛田さんとお店の点検をして戸締りをした。


 私は後ろの工事現場に目が行った。警察が使用している立ち入り禁止のテープが貼られているだけで誰もいなかった。壁には再開不明の工事休止の張り紙が貼られていた。


「今日はなんともなかったわね」

 凛田さんは胸に手を置き、ほっと安堵していた。

 今現状の被害があの工事現場の中だけのこと。もしかしたらそのまま周りの建物にも被害が及ぶのではないかと不安になっていたらしい。

「バーSIRIUS」は凛田さんが大学時代に自分が本当に何をやりたいのか考えた結果で長年、色んなところで経験を積んで漸くオープンができた思い出のお店。


「そういえば、灯ちゃん......。昼間に思ったけど、なんであいつはあなたの事を......」


 その先の言葉がかき消されれそれと同時に





 ガラガラガッシャーン!!


 何かが壊れる大きな音が聞こえた。

 建設途中の建物が斜めに崩れていき地面に向かって落ち続けていた。

 その影響で砂埃が外にまで広がった。風が吹き飛んできた小さな小さな砂達が私達の方に向かってきた。


 砂埃によって喉が荒れて痛くなり、咳が止まらなかった。

 かすかに見えた姿......。

 1mぐらい長い首、馬顔とよく似ているようだがどちらかというとキリンに近かった。顔部分には2本の角が生えており、胴体は細身で筋肉質な見た目、両肩に胴体に似合わない縦長のクレーンみたいなモノが生えておりフック付きワイヤーが先端に付属していた。なんともアンバランスな姿だった。だが、サバンナや疎林に生息しているキリンは黄褐色の地に茶色いまだら模様がのっている網目模様が特徴の動物。

 だが、工事現場から出てきたキリンもどきは確かにまだら模様は確認できたが色合いが赤かった。

 あれ、あの色どっかで見たことがあるような......。

 確か、あれは......!?

 あぁ、思い出した!!


 昼間、零冶さんが飲んでたカクテルーー【ジャックローズ】

 そのカクテルの色と同じように真っ赤な情熱的な赤に酷似していた。


「と、とにかく警察に連絡して私達は逃げましょう......」

 そう言って、凛田さんは警察に連絡していた。



「危ない!!」


 連絡するのに気を取られていた凛田さんに敵のフックが迫っていた。

 咄嗟に、凛田さんを腰に手をやり抱え込みようにジャンプし攻撃を回避した。


 フックをそのまま、建物に直撃した。頭を破片から守ために手を使って防いだ。

 幸いにも、「バーSIRIUS」には当たることはなく、隣に建物が被害にあった。


 音に気が付き周りに住んでいる人が集まっていた。

 普通は、こういう状況では逃げる一択なのに......

 だが、私にとっては好都合。人混みの波を掻き分けながら建物と建物の隙間、丁度1人が入る分しかないくらいの狭い道に到着した。


『レッド』!

『スパイダー』!


 変身スライドキーと能力用マガジンをセットし、変身完了してから【スパイダー】の糸で建物の屋上に登り、助走しながら反対側の建物に移動した。反対側の屋上付近の壁に上手に糸をつけ、ターザンスイングのように乗り移った。


「凛田さんに気づかれない内に決めないと!!」


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