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レッド・クイーンズ ~天織灯のあくまな怪盗生活~  作者: 麻莉
3章 7月 冱蝕の氷龍止めるわ、剣と拳
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洋館事変 Ⅴ 「必ず助けてみせる!!!!」

「僕の邪魔するやつは消す。後は分かるよね、ネルディー」



 解放された灯はようやく息を吸うことができた。腕が吊るされた状態で横に倒れる。ぼやけていく視界。意識も混濁し始めてきた。ゆっくりと閉じかける私の瞼の前にルージュの足が見える。



 ルージュは天井に張られている鎖を切断した。分厚い手錠はまだ残っているが一応の自由を得た私。


「同郷の者が失礼した。本来なら君をここに閉じ込めておくだけで良かったんだけど」


 そう言ったルージュは私の顔の前にあるモノを置いた。

「これはお詫びだ」


「……え、えッ!?」


 ルージュが持っていたのは、鮮緑の箱。翠の陰包徳(リ・エミナァーデ)、つまりミドリだ。

 何でルージュがミドリを持っているのかなどを思考しようとしたが自分の意識が途絶えるていくのがわかる。目を閉じる前に最後の力を全て口に集約して私は言った……






「ミドリ」と——————
















 ミドリは窓もない薄暗い空間で覚醒する。牢屋だと結論付けるのにそれほど時間はかからなかった。何故、自分がここにいるのか分からずにいる。





 確か自宅の三階にいた時——————


 灯の部屋で談笑していたミドリたちは下が騒がしいことに気づく。

 様子を見るために二階と三階を繋ぐ階段に到着した時、二階からすさまじい勢いで火が広がっていた。私と一緒にいた綾、月音、萌香を何とか逃がそうとまだ燃え広がっていない部屋を見つけ、三人と抱えながら窓から飛び降りた。


 家からの脱出に成功したミドリたちは火の手が来ない安全な場所へ走り出した。


 突然の火事。余程燃えやすい物があったのか今尚も恐ろしい轟音と共に火の粉の火力が高まっていた。燃える雑居ビルを見るミドリ。自分は一ヶ月くらいしかあの家に住んでいない。でも、自分がこの地で安らぎを得られる唯一の安住の地が黒い煙に飲み込まれていくのをただ見ることしか出来なかった。


 空気が焦げるのが肌で感じる。ここも危ないと再び歩を進める。


 驚くミドリ。

 地面に倒れとったのはクロはんとすず。クロはんは損傷が激しかったけど、どっちも息はあった。安堵する面々やったがあたしたちの中心人物である灯がどこにもおらん。それに璃子はんもいなかった。


「まさか……逃げ遅れた?」


 不安は行動を加速させる。以前、クロはんに何やあったらと紹介された病院。そこも灯の怪盗活動を手助けしてくれる協力者が在籍しとる。本来なら璃子はんのメディカルルームがあるので行く機会が少ない。もしもの時で利用するようにとクロはんがおせてくれた。


 動ける三人にクロはんとすずを任せる。綾にはある医者の名刺とその医者が在籍しとる病院を教えた。ほんまはこの場でみんなの治療をするのが先決やったのかもしれへん。ミドリはそないなことも忘れとった。



「もう二度と、愛する人を失いたくないッ……!?!?!!!」

 悲痛の叫びで猛威を振るう炎の中に侵入した。





 自分の過去を思い出したミドリ。


 凄まじい熱量に肌が灼かれとったが自分の回復能力で治しもって灯と璃子はんを探しとった。

 璃子さんのおかげで多少の怪我をしても損傷を受けることはなかったが流石に高温の熱を耐え切る構造はしてなかった。火傷する度に自分の回復能力で治す。


 空間に密集している煙を大量に吸い込んでも体内で無害にする。それでも初めは自分の体に激痛が必ず走る。何でも倒れたが自分を暗い闇から救い出してくれた恩人でもあり愛する恋人のためなら……




 こんな痛み……ちっとも痛くもない。










 その後、確か——————




「君は瓦礫の中で倒れていた……フィーネ。いや、今はミドリだったか」


 聞き覚えのある声がした。牢屋の壁にもたれかかっているのは赤の悪魔。今はルージュと名乗り人間界にいるとクロさんから報告を受けている。



「何で貴方が? それに……」


「色々、聞きたいことがあると思う。だが、その前に後ろの少女を治すのが先じゃない?」


 ルージュはミドリの背中の奥を指差す。誘導されたミドリは後ろを振り向く。







「えっ……」


 ミドリの顔から血が消える。後ろにいたのは横たわっている灯だった。

 灯の顔は腫れていた。口から血が流れている。服は着ていたけど、ボロボロに引き裂かれていた。身体は執拗に痛めつけられた跡がくっきり残っていた。適切な処置をしないと一生、消えない傷を負っている。天使と言われた灯はそこにはなかった。



 涙を流しながら灯に近づくミドリ。

「ダメッ! ダメッ!! ダメッ!!! 」


ミドリは回復に集中した。


いかいで(いかないで)……いかいで(いかないで)……いかいで(いかないで)……いかいで(いかないで)……灯。灯が何したかていうのよ!!」


 薄い緑色が灯をつつむ。


「あたしを一人にせいで(しないで)……かなん()!!!、かなん()!!!!、かなん()!!!!!。絶対に……絶対に救ってみせる。そやし(だから)………………………………」



 酷い有様だった身体はみるみる元の状態へ戻っていく。

 服がボロボロ以外、見た目は完璧に治した。




「お願いします……お願いします……一人にせいで……お願い。目を開けてよ……」

 灯を抱き抱えるミドリは誰かに懇願するかのように願った。


 灯の目はゆっくりと開いた。

「ミ、ミドリ……? どうしてここにいるの?」


 目を覚ました灯を見て、ミドリは嬉し泣きをした。


灯&青奈&黄華

【持ち物】

翠の陰包徳(リ・エミナァーデ)


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