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レッド・クイーンズ ~天織灯のあくまな怪盗生活~  作者: 麻莉
3章 7月 冱蝕の氷龍止めるわ、剣と拳
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73話 洋館事変 Ⅲ 少女の希望は砕けた

あの......まぁ、はい。ごめんなさい。

椅子に向かうまでに自分の身に何が起こったのか思い出した。

あれはバイク型を倒して、璃子さんに成分を渡そうと研究室に入ったとき……



「一度会っているが自己紹介をしよう。ワシは丘螺龍氷(おかにしりゅうが)。単刀直入に言おう。天織灯くん、ワシの研究所に来てもらうよ」




「何、訳の分からないことを……素直に従うと思いますか?」


「だろうね。君が素直に言うことを聞いているなら”ジャック”が連れてきているし」


「『ジャック』?」


「君が先ほどまで戦っていたバイク型のソドールだよ」


「じゃあ、貴方が私たちを……」


「いかにも! ジャックに依頼したのは君と後ろにいる悪魔を捕獲すること。でも……」


丘螺おかにしの狂った声が響く。

「ワシの目的は別だ。この女——天織璃子を見つけること。6月に天織璃子が生きていることがわかった。だが、急に所在が消えた。忽然とね。恐らく自分の認識を歪める道具でも開発し、常時身に付けていると考えた」



丘螺(おかにし)は両腕を後ろに回し、歩く。


「人は生きていれば何らかの痕跡を残してしまう。現代社会は情報で溢れかえっている。リアルでもネットでも。近しい存在を確認したがすぐに消えた。初めは万策尽きたと思ったよ。しかし、見つける方法を発見した」


「えっ!?」


「ジャックは少々、人を支配したい欲があってね。友人として困っていたが、その欲望は使えると考えたのだ」


「『使える』ですって……」


手始めにジャックが手に入れた能力で天織璃子の目撃情報があった街の住民を洗脳させた。強制的に支配された人々は灯たちを捕まえようと躍起になる。灯たちは増殖する人を対処していくと必ずジリ貧に陥ってしまう。灯たちが使っているアイテムとかがこれに該当する。必ず修理に出すために天織璃子がいる場所に行く。ジャックから連絡あっては丘螺(おかにし)は灯が少しの間忽然と消えたことに驚いたが同時に可能性を見出した。試しに人を増やして探す範囲を拡大しても、消えた灯を見つけられなかった。ジャックから送られてきた情報を確認していたら、ある事実がわかった。


「ある一区画には誰も近づかない。いや、避けているようだった。それがこの家だ!」


「私が一度、家に戻らねければ……」


悲観していても事態は変わらない。今をどうするべきか……


「ひさびさの再会だったのに、彼女は敵意丸出しでね。まるで話を聞いてくれなかった。だからこう(氷漬け)した」


「璃子さんは私のせいで……」


「別に死んではいない、殺したらワシの計画が台無しになる。後で元に戻す……その前に天織灯、君をワシの研究所に来てもらう」


「何故、私を」


「勿論、天織璃子にワシの研究を手伝ってもらうための餌としてだ」



璃子さんを救おうと行動を起こす私。しかし———


右手にあるクイーンズブラスターが凍っていた。氷は私の腕を凍らせようと進む。

咄嗟にクイーンズブラスターを離した私。離されたクイーンズブラスターは床に落ちるまでの僅かな時間で氷にくるまれてしまう。


床に落ちた氷塊(クイーンズブラスター)は砕けた。



私は膝から落ちる。これまで自分を助け、人を守る存在がいとも容易く打ち砕かれた。



灯たちは普通の女の子。可変式変身銃クイーンズブラスターASKがなければ凶暴なソドールや悪魔たちと渡り歩いくことはできない。激しい戦闘で変身銃の損傷を負っても、璃子が完璧に修理してくれる。そう、今まで戦うことができたのは天織璃子がいてこそ。天織璃子がいなければ、変身銃の修繕も手に入れたソドールマガジンの能力も扱うことができない。戦う術を失った怪盗は非力な女の子へ戻される。


「君が抗うのは結構だけど、上にいる大事な友達がどうなるかな?」


「駄目よ、灯。そんな脅しに従っちゃ……」


「そういえば、君にお客さんだよ。悪魔くん」



後ろから足音が聞こえてくる。

「久しぶりですね、先生」


研究室に入ってきたのはルージュだった。

「ルージュ君には悪魔くんの相手をしてもらうよ」



「君とそこで氷漬けにされている天織璃子以外には興味ない。後は分かるね?」



「すずちゃん……逃げて」


「えっ!?」

私はすずちゃんのポケットに可能性を入れた。今の自分が持っていても意味がない。でも、未来で必ず必要になるもの。敵に渡る訳には行かない代物。



そうして私と璃子さんは研究所に連行された。







「すずちゃん……皆、無事かな」

私は怒りのまま椅子に座る。













灯は現実に戻ってきた。


——————悲痛な叫びを出しながら




「あ、ああ……ああああああああああああ!!!!!」


灯は覆面をかぶされた状態であると気づく。だが、視界が悪いことはこの際どうだっていい。


息がうまく出来ずにいた。

自分の身体に激痛が走っていた。全身に無数の太針で串刺しにされたかのような痛み。以前、武者型の攻撃で立つこともままならない損傷を負った。が、今回の痛みはあの時の比ではない。痛覚を遮断しないと歩くことも……



足が動かなかった。灯は、更に取り乱す。太もも辺りがかろうじて動く程度。それより下は全く働いていないみたいだった。切断されたわけではない。ただ、感覚が鈍い。それだけだ。

両腕は上に上がったまま分厚い手錠がはめられていた。腕を激しく動かし、解こうとするがびくともしない。揺らして初めて分かったが鎖が軋む音が聞こえた。逃げようとしても鎖を切らないと始まらない。自分の置かれている状況を多少、冷静になった頭で把握する。


(まずは……この暗闇をなんとかしないと)


「ようやく起きたわね」


呆れた声が聞こえた。甲高いヒールの音が鳴る。徐々に近づく足音。ふいに覆面がはがされた。

明かりが全くない暗闇の世界から強烈な光が照らす世界へ移り変わる。


突然のことで開けたままだった目。それにより、光源の光が目に突く。光から逃げるようにそむく動きをするが身体の自由がきかない。首が焼かれたかのように感覚を味わう。強い圧迫を長時間くらったみたいな……


目はいささか時間がかかったけど環境に慣れてきた。そこで自分の身体が横になって倒れていること、腕は繋がれていることを可視化できた。


「な、ん……!?!?!?」


自分の置かれている状況に対して声をだそうとしたが上手く声が出なかった。そこで自分の首がなんで燃えるように熱いのか把握した。喉を潰されていた——目の前にいる女性に。


「だ、れ……」


灯の掠れた声を聞いた女性は首を傾げた。

「初めに名乗ったはずだけど……まぁ、色々やりすぎたから記憶がとんだのかしら」




女性は私に告げた。

「じゃあ、改めて自己紹介しましょう。私はネルディー。青の悪魔って言えば分かるかしら。天織灯さん……フフゥ」


マガジン→ゼロ


丘螺(おかにし)の研究所。

No.12 ウォーター 紫マゼンタ色 【3 】

No.13 チーター 白青色

No.16 フォックス 煉瓦茶色 【3 】

No.21 ??? ???色

No.31 ゴリラ 橙黄色

No.33 ホッパー 青ピンク色

No.35 スパイダー 赤紫色

No.37 マント 黄緑青色 

No.40 スモーク ピンクマゼンタ色 【4 】

No.44 タカ  白桃色

No.47 シャーク 青水色 【1 】

No.48 ボーン 茶橙色 【4 】

No.50 ボム 黒橙色 【2 】

No.52 ダイヤモンド 水白色 【2 】

No.54 タイガー ???色

No.59 アイヴィー 緑黄緑色 【1 】






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