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レッド・クイーンズ ~天織灯のあくまな怪盗生活~  作者: 麻莉
3章 7月 冱蝕の氷龍止めるわ、剣と拳
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61話 孤独で不安は寄り添うことで得られる高揚感

 黄華は戦場から一時、離脱した。その後、ミドリにお願いして漂う感じで空中移動しているのが現状となっている。

 路上を歩くのはとても危険。そもそも自分の足で歩ける状態ではない。

 奇妙なバイク型は吹っ飛んで人々は完全に機能停止したと思ったが数分で息を吹き返した。再び再稼働した市民から追いかけられている。あんな百鬼夜行もどきの軍団がいる地面を走っていたら数の暴力で捕獲されてしまう。その証拠に(みち)には(おびただ)しい数の人が溢れている。操られている群衆は顔を両手を天へ挙げていた。遥か空にいる僕に届いていなくても主人からの使命とばかりその命令を実行しているかのように見えた。




 青奈:ここまで追ってくるなんて、正直めんどいわね


 灯:私の”命令”も効かなかったし……


 灯が主人格の時に、クロとの修行で内に仕舞い込んでいた”他者に強制的に指令できる”フェロモンを試しに実行しても無駄だった。女性だけでもと思ったがバイク型の方が強制力が強いのかまるで効果が見られなかった。


 黄華:家まで後……まだかかるか


 青奈に言われた通りに陽が出ている時は僕主体で行動している。専用武器の関係もあるがいつまで追いかけられるか不明。なので三交代で家に戻っていく。

 家に帰るのは魔魂封醒(フリーダム)でガス欠したマガジンをチャージすることと再充填されているであろうのマガジンを貰いに行くこと。この2点だ。


 バイク型が武者型と同じであることが判明したので浄化を最優先で行わないと成分を回収できない。しかし、三番目の能力を止めるためには【速朱の流(ストライク)】が必要。有機物は三本あるけど先ほどの戦闘で【硬朱の甲(フィスト)】を起動してしまい無機物マガジンが一本もない。無機物のマガジンが一本でもいいから持っとかないといけない。奪えないと路上にいる人たちも洗脳から解放できない。



 黄華:こう言っちゃおかしいけど、あの人たちが拳銃とか持ってなくて良かったよ


 青奈:そうね。国が違ってたら離れた場所から射殺されていたかもしれないし……


 灯:その代わりにバットとか所持しているから油断できないけど


 黄華:減らす方法はあった。けど……


 灯:あの人たちは……操られているだけだから……狙えない。ごめんなさい


 青奈:灯ちゃんが謝ることないわ! こんな卑劣な手しか使えないあのクソ野郎がいけないのよ


 黄華:しかし、どうするか……流石にまかないとマズイだろう?


 青奈:新しい考えが浮かばない以上、【スパイダー】の糸で拘束。その間は【ボーン】で防御。【フォックス】で隙をつくるしか手段がないわ


 黄華:警官は積極的に動きを封じらないと後々、面倒くなる


 灯:銃を携帯しているから?


 黄華:それもそうだけど、数が爆発的に増えるし訓練しているから手こずる


 青奈:武者型と同じなら何段階かに能力の発動範囲が広がっちゃうし


 灯:きっとあの人は……自分の言うことを聞けない人は無理矢理にでも従わせる考えを持っているんだね。その感情が膨れ上がって外へ放出した……


 黄華:人が何を思うなんて自由だけど、無理矢理……しかも意思をなくさせた人々に1人の女の子を襲わせるのはどうかと思うけどな


 青奈:”バイク”と”炎”。そして”操る針”


 灯:針?


 青奈:すずが受けた傷は例外かな。それ以外の人の身体の至る所に刺されたような跡を発見したわ。


 黄華:僕らに影響がないとはいえないから、針も警戒しつつ立ち回らないといけないな


 青奈:残る能力である【炎】は厄介わね……。部分的に自分に炎を付与。


 黄華:武器にもできるし、バイクにも燃え広がっていたし


 青奈:武器や乗り物ならまだ良いけど、問題は【炎】を場所に放てること。あれのせいで身体の危険な状態になったし……








 ————正午

 私はミドリに支えながら、千鳥足で家に辿り着いた。

 璃子さんも捕獲対象となっているのでもしかしてっと考えたが、家の周囲には誰もいなかった。いつも通りの閑散とした雰囲気。まぁ、家の外部にも私が使っている認識阻害のサングラと同じ効果が発動している。


 一部の......璃子さんが認めた者は普通に認知できるようになっている細工が施されている。逆に一般人は一部の除いて関心を持たないように無意識に避ける作用が起動している。見た目は普通の雑居ビル。特定の器具を利用すれば結界だらけの要塞みたいになっているという感じ。


 黄華:璃子がああ言っていたけど、改良版サングラスを装着して初めてこの家がバリアだらけって分かったわね


 青奈:まぁ、バリアによって家が覆われているのは少し奇妙だけど、安全ってことで良いんじゃない


 黄華:人間は自分に関心を持たないものにはとことん関心ないし……


 灯:取り敢えず、中に入ろう。圧倒的に家にいた方が今は安全だし


 念の為、家の中を覗き込む。もしかしたら家にトラブルが発生し、危険感知プログラムが作動しなく虚な人々が入っているかもしれないから……


「よ、良かった……誰もいない」


 知らない人は居なく、いつもの会議室を改造したリビング部屋。


「クロはんはおらんね〜」




 璃子さんの研究室に入る。

 6面のマルチディスプレイのPCで作業している璃子さん。研究室にクロがいると思ったけど、璃子さん一人だけだった。


「璃子さん……大丈夫ですか」


 作業を止めて、私を見る璃子さん。やけに寝不足な目つきで、気だるそうな雰囲気をしていた。

「私は大丈夫だから、灯はメディカルルームへ行くこと」



 ミドリに支えられ、メディカルルームへ進む。璃子さんを見るとなんか違和感を覚える感じがしたけど……なんだろう? この感じは……璃子さんってあんなに艶かしい容姿をしていたっけ? クロと同じくらいの完璧なプロモーションを持っている。璃子さんのその……特徴的な身体の部位以外はそこまで関心を持っていなかったけど、今はなんだろう……綺麗だったり憧れたりと情緒が不安定になった。


 こんなにも心が落ち着かないのは……バイク型がいつ攻めてくるからなのかな。


「ミドリ……」


「どうした? 灯……」


「私、疲れているかもしれない」


「まぁ、あんなに危機的状況を脱出したんそやし。尋常じゃななんぼいに疲れとるやろうしね」


「それはそうなんだけど……心が落ち着かないの」


「ここにいればひとまず安心。敵はここを攻めてこないわ。万全な状態であのソドールに挑みましょう。それに……」


 ミドリが私の耳もとへ口を寄せて囁いた。

「終わったら、ご褒美。あげるわ!」


 私は頬を赤らめる。動揺しているのが分かるくらいに狼狽していた。

「ま、待ってよ。べ、別にご、ご褒美なんて……い、いらないよ……」


「ふ〜ん! いらないんだ」


「ミドリ。揶揄うのは時と場合を考えてよ。今は……」


 ミドリは私の額へデコピンをした。微かな痛みだったが徐々にヒリヒリしてきた。

「青奈にも前に言うたけど、辛気臭い顔は灯たちには似合わないわ……」



「そ......そうだね! 私が弱ってはいけないんだ。次で確実にバイク型を倒す。そして、すずちゃんを迎えに行くよ!」


「それじゃあ、私もやりたいことをするわ!」


「『やりたいこと』?」


「貴方を確実に勝たせる戦いを編み出す!」


 灯とミドリは互いに視線を交わす。2人は心からの笑顔を見せた。



 一呼吸して、ミドリが笑顔から真剣な表情へ変わる。

「終わったら、あたしとデートして欲しい!」


「真剣な顔を出したかと思えば、何言ってるのよ……ミドリ」


「今回の成功報酬。約束そやしね! 灯!」


 ミドリは私の耳を甘噛みし始めた。私の決意が抜けていく……


「何するのよ!?」


「忘れへんための印! 有耶無耶にしたら、分かるわね?」


「はいはい。受けて立ってあげる!」



 お返しとばかりにミドリの唇を奪おうとした途端、後ろから嫌な気配がした。振り返ると、腕組みして仁王立ちしている璃子さんがいた。


「遅いと思ったら、何イチャイチャしているのよ……」


 態度と口から発せられた言葉から身の毛立つ感覚に陥ってしまう。これは早く支度しないといけないやつだ。そう思い、私たちはシャワー室へ向かった。






 灯たちがいなくなり、誰にも聞こえない声で璃子は口を開いた。

「感情が爆発しそう……」



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