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レッド・クイーンズ ~天織灯のあくまな怪盗生活~  作者: 麻莉
3章 7月 冱蝕の氷龍止めるわ、剣と拳
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50話 創世をつくりし神は笑ふ

 クロの攻めになんとか耐えることができた私は璃子さんに呼ばれ研究室へ向かうことにした。

 私とクロの様子を見て察したのか、風呂に入るように促す璃子さん。


 風呂は心の洗濯とは良くいったもんだ。綺麗になって再び璃子さんがいる研究室に入るとそそくさ準備をしていた。

「準備完了! 来たわね貴方たち……早速やるわよ!」


 えっ!? まさか……


「灯が何を想像しているのか分かるけど、生憎そのような展開は起こらないわ。ごめんなさいね」


「い、いや……別に私は変なことを考えてません」


「はいはい……一旦それは置いておいて。これに入って!」


 指を指した方角を見ると2台のカプセルが置かれていた。全身が中に入ることができる大きさのカプセルは高気圧酸素カプセルを彷彿とさせる見た目だった。1度目に研究室を訪れたとこから視界を捉えていた。まさか私たちが使用するとは思っても見なかったけど……


「今から仮想世界に入ってもらうわ」


「「仮想世界!?!?」」


 急な展開に頭の処理が追いつかない。何故に仮想世界に入るのか分からなかった。いや、待って……仮想世界?


「なんの為に? てか……」


「璃子……もしかして、つくった?」


 クロの問いに何を当たり前みたいな顔をしていた璃子さん。


「そうよ!」


 璃子さんは白カプセル型を叩いた後、歩く。行っては帰ってくる。反復横跳びのように……


「過去、何百体とロボットが鉄屑になったわ」


 私とクロは目を逸らす。こっちを見ずに璃子さんは話を続けた。


「その度に地下のラボで回収し、改修。再学習して出動しても無惨に破壊される。その繰り返しが約半年……」


 私は未だあんなデンジャラスモードを完全クリアできていないが、クロは涼しい顔で初回クリアしている。その後はストレス解消やマガジンや強化アイテムの検証の為におもちゃとして扱ってきた。


「資金や資材はまだまだ潤沢にある……でもね、私はふと思ったのよ」


 ハイヒールが床に当たる音がなくなる。私達に指を指す璃子さん。



「仮想世界を創れば良いのだと、ね!!」




 クロと顔を見合わせる。多分、クロも私と同じことを考えていると思う。

(璃子が遂に壊れた!?!?)

(璃子さんが壊れた!?!?)


「何よ、2人とも。変な顔をして? 生憎、変顔されても笑わないわよ?」


 漫才なんてやってませんよ……璃子さんを心配している顔です


「さっき完成したばかりのVR機器。試運転も兼ねて2人にはこの中に入ってもらうわ」


 私は手を恐縮しながら挙げる。


「中に入って何やるんですか?」


「それは入ってからのお楽しみよ。安心して。2度と帰って来れないような設計はしてないわ。ちゃんと現実へ戻れる……多分」


 文末に一応保険みたいに『多分』って言葉を言わないでくださいよ……


 仮想世界への入り口であるカプセルの扉が開く。中は特におかしなものはなかった。簡易的なベットをイメージしてしまいそうな見た目。枕も常備されている。そして枕元には銀色のゴーグルが置かれてあった。


「横になったらゴーグルをはめてね!」


 璃子さんの設計なら大丈夫だけど少々、不安が残る。その証拠に私の胸の鼓動が早くなっているのを感じた。全力ダッシュした後の状態みたいな動き方をしている。落ち着くのに幾分か時間が必要かもしれない。


 隣にいるクロは不安MAXの私とは対照的に新しい物を見て心を踊っている子どもみたいな目をしていた。


「悪魔の世界でもここまでは開発されていなかった。別世界に入れるなんてワクワクするわ!!」


 クロが入る予定のカプセルに付いているハッチが開いたタイミングでそそくさ入っていくやや興奮状態の悪魔さん……


 私の前に綺麗な手が出てきた。


「さぁ! 灯も」


 心を不安の化け物から気合いの神にして手を取る。

 ゴーグルを被り、目を閉じようとした。


 目が閉じる瞬間に見えた璃子さんの顔がにっこりと、あまり目撃したことがない笑顔を浮けべていた。私は笑顔の真意を問いただしたかったが時既に遅かった......



 今いる世界は暗転する。







 そして、神である璃子さんが創世した新世界へ新たな生を受けて、私は誕生した。


 目を開けると砂埃が立ち込む世界に棒立ちしていた。


 見渡すと私がいる場所が闘技場だと認識できた。ローマの中心地に建っているコロッセオを彷彿とさせている直径50メートル位の楕円形のコロシアム。十分な広さがあり古代の円形をした闘技場。過去にいろんな場所へ行ったことがあったけどコロッセオはまだ行ったことがなかったから仮想世界に入る不安を払拭したおかげでこの地に足を踏み入れてることができた。


「目に砂が入った……」


「僕は口に入ったよ……」


 

 後ろから聞き覚えのある声が聞こえたので振り返る。

 青奈ちゃんとこうちゃんが私と同じように立っていた。


 数秒思考した。いるのは当たり前。当たり前なんだけど、それは心にいるとき。私たちの精神世界は中々変わっている。主人格になるための木製の椅子を除けば背景も変えれる。


 背景だけじゃなくてちょっとした物も出現させれることができる。少し前には豪華なベットも出したことがあった。まぁ、あれは出したいものを完全に想像しないと出てこないのがネックなんだよね〜


 て、そんなことは置いといて……


「2人とも……どうして??」


 私の疑問に(璃子さん)が答えた。


「以前行ったミドリ捕獲作戦を参考にしてね。貴方たちは身体は1つ。でも、心は複数。初回ってことで3人とも仮想世界へ招待したわ!! 早速始めるわよ」


 正面にある木でできた柵が上がる。広い闘技場に足を踏み込んだのは……

 2メートルを越えの大きな身体。力が強いイメージでお馴染みのゴリラだった。霊長類の中では一、二位を争うパワルフに全振りしているゴリラ君……四つ足で一歩ずつこちらへ歩いてくる。

 前足2つは機械でコーティング装備されていた。


 多少の差異はあっても完全にゴリラなんだけど……その体色が……

 橙黄色の長い毛皮で構成されている。私の記憶違いがなければ大体のゴリラって黒色だったり灰色っぽい毛だったはず。目の前にいる生物は地球上、どこにも存在しない特徴を兼ねて備えた生き物がいた。


「ン゛ッンー…………!! ン゛ッン゛ー…………!!!」



「ウホッ!!」


「ちょっと黄華。そんな品のない声出さないでよ」


「いや、だってゴリラを見たらやってみたいじゃん!!」


「貴方は全く……」


 出てきたのは一体だけ。ということは……


 私たちはメタルゴリラさんに背を向け、お互いを見る。

 誰かが一言目を発した。

「最初は……グー!」


 拳を突き出す。また引っ込ませる。

「「「ジャンケン、ポン!!!!」」」


 灯:パー

 青奈:チョキ

 黄華:パー


「私しの勝ちのようね! 先発行きます!」


 私は青奈ちゃんに手を振る。こうちゃんは四つんばえになっていた。


 青奈ちゃんが自身の武器を出す。【濃藍の矛】(トライブ)【鉄藍の刀】(アイルタ)を持って構える。


「まずは様子見で……??」


 いつの間にか青奈ちゃんの目の前に到達していた。機械仕掛けの前腕を上へ大きく振りかぶって勢いよく下へ放つ。


 突然のことで動けなかった青奈ちゃんの身体は一瞬で砕け、ポリゴン状になって次第に消えた。


 青奈ちゃんと対峙予定のゴリラさんは私たちに攻撃せず、その場で動きが止まる。その瞬間に左右にあった柵が上がった。もしかして……


 私はゴリラ。こうちゃんは二足歩行で青白色の毛皮をしており鎖鎌みたいな武器を腕に装着しているチーターが獲物を刈り取ろうと獰猛な目を向ける。


 私たちは全く対応できず、コロッセオのステージから消え去す寸前……


「言い忘れたけど、ゴリラもチーターのレベルは100。貴方たちはレベル1に設定したから。圧倒的差だけど、頑張ってね! んふふ〜」


 璃子神からの神託を拝聴した私とこうちゃんは思ったことがある。


 それを早く言えと……

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