38話 マックス・アブソーブ・フリーダム
改めて勝守の籠手を見ると初めて将祇陽の護で攻撃を受けた時と印象が変わっていた。
腕周りはそのままで肘部分に合った撃鉄がなくなり、代わりに宙に浮いている2機のビームを発射可能な装置が出現した。包丁で大根などの円形野菜を切った時に輪切りになる。そこから半分に縦に切ると半月のような見た目から半月切りと呼ばれる切り方がある。そんな半月の形をした物体がミルの背後に漂っている。
「これはね……【ワンダー】って機構らしい!」
勝守の籠手には様々な機構が備わっている。
その第一は勝守の籠手の肘部分に付いているロケットブースター状の武装。名前は【多段変形加速機】。主に勝守の籠手の威力を上げるブースターとして活用されている。この【多段変形加速機】は爆橙の想争装着者の音声で固有変形が可能。
本体である勝守の籠手から切り離されると【多段変形加速機】が縦に割れ、遠隔操作を行える機兵に早変わり。
名前は【ワンダー】。装着者が自身で攻めると同時に援護射撃で空中からビーム攻撃を加えることができる。
近距離では巨大な拳で攻撃。距離を取って敵が遠距離攻撃に切り替えても【ワンダー】で空からビーム攻撃。しかもさっきの戦闘で爆橙の想争装着者に当たらないように【ワンダー】自身が考えて行動したように見えた。
【ワンダー】は遠隔誘導操作システムを用いて装着者がコントロール可能で相手の死角も含めてあらゆる射程での攻撃できるようになっている。
【ワンダー】が1つになって元の位置に戻る。
「これ……時間制限があるらしいから。次使えるのはいつか分からない」
ひとまず安心した。あんなものが無限に使えるもんなら私しは死んでるわ……
遠距離攻撃は終わっても本来の勝守の籠手に戻ったことはミルの行動は1つ。
肘部分の推進機である【多段変形加速機】が噴射。
加速したことで今の勝守の籠手は拳のスピードが高まり破壊力が増幅している。
あれを使ってみますか……恨むわよ、璃子……
将祇陽の護とクイーンズブラスターに無機物のマガジンを同時に装填した。
『ウォーター』!
『スモーク』!
「魔魂封醒…………起動!!」
将祇陽の護を構えることもせず、膨大な力になっている勝守の籠手の一撃をまともに受けた。
衝撃の余波で映画館の壁や床に亀裂が生じ煙が舞う。
「勝負あったな……」
先程まで余裕な顔をしていたミルが徐々に変わる。
「なんでだ……!?」
煙がなくなり、自分の強大な一撃を受けたはずの敵は無傷のまま、涼しい顔をしていた。
「貴方の攻撃、何百倍にしてお返しするわ!!」
将祇陽の護の剣身を覆っている水色のオーラが増大し膨れ上がっていく。溜まったエネルギーを突きの構えをして発射した。巨大な放射の勢いで踏ん張っていても後ろへ後退し身体がいうことをきかず、押されていく。ミルは大放出されたエネルギーを受け、窓ガラスを突き破り外へ吹っ飛んでしまった。
残った青奈はため息をする。
「2度とこんなことしなくないわ……」
ミドリ:【硬朱の甲】が終了したわ
ミドリの合図で将祇陽の護とクイーンズブラスターに装填されていたマガジン2種が力を失う。
【硬朱の甲】は魔魂封醒に備わっている3つの必殺技の1つ。発動条件は将祇陽の護とクイーンズブラスターに無機物のマガジンを同時に装填すること。
【魔魂封醒:硬朱の甲】が発動し、一定時間あやゆる攻撃を吸収し将祇陽の護に蓄積される。
【騎士服】でも【巫女服】発動可能で【硬朱の甲】効果時は全身が物理的攻撃・状態異常攻撃・特殊な攻撃も全て吸収され自身の武器のエネルギーとして使用できる。【義心の大剣】では敵の攻撃を3つまで吸収して跳ね返す。しかし耐久性に難ありだけど【硬朱の甲】は敵の攻撃をそのまま跳ね返すことはできない代わりの無尽蔵にエネルギーを吸収し武器の威力増加に転用できる。
「ミルを逃すことになったけど、一先ずお疲れ様。青奈」
「【硬朱の甲】は2度とやりたくない……【騎士服】だったか良いけど」
「【騎士服】の堅牢のお陰ね……しかし、璃子もなんてものを作るのかしら」
「こんな自殺手段を考えるなんて、璃子は疲れていたようね」
「さて、長いは無用ね。ミルのことは璃子と相談するとして帰りましょう! 青奈、【スパイダー】貸して……」
「出来ないわ……【速朱の流】で使ったから」
「……歩きますか」
吹っ飛ばされたミルは地面へ落下し叩き付けられた。
その弾みで変身解除され、緋山本人と爆橙の想争が分かれた。程なくして緋山は目が覚め、側に置かれている爆橙の想争を見た。
緋山が爆橙の想争を見たと同時に中から声が聞こえる。
「お前……アタイと契約しない?」
「……何!? 契約だと」
「そうだ、お前も見ただろう。アタイの巨大な力。あれがあればさっき戦った奴らを一網打尽できるぜ」
「断る。悪魔と契約など俺はやらない……」
「めんどくさいやつだな……お前が守りたい人が守れなくなるぞ」
「なんだと……」
「アタイが戦っている間にお前の記憶を見た。これまで何をしてきたか。どう思っているかなどいろんなことを」
「勝手に乗っ取っただけじゃなく、俺の記憶まで勝手に見るなんてどうかしてるぜ」
「まあまあそういうなよ。アタイはお前に興味ができた。以前は正義のために過剰にあの怪盗へ対抗意識を向けていて危うく人々を殺そうとしていたお前が成長したなって。再度、市民の安全と平和を守るのをモットーにしてる熱いお前が気に入った。まぁ、あまりにもはしゃいで乗っ取ったのは悪いと思ったよ。でも、それくらいアタイは緋山燐兎が気に入った。それだけだ」
「……何が望みだ」
「望み?」
「まさか無償で俺につくわけないだろう。バカでも分かる」
「2つある」
「1つじゃないのかよ」
「どっちもシンプル。『戦いたい』と『ある奴を見つける』だ」
「『戦いたい』ってのはあの怪盗とか……」
「それもそうだし……ソドールって奴がいるだろう。あいつらとも戦いたい。それと俺以外の悪魔を倒す」
「もう1つの方は?」
「俺をこんな姿にさせた悪魔を探して封印する」
「誰だ……その悪魔は」
「お前も既に戦っている悪魔だ。黄色の悪魔であるカサンドラだ」
「あの野蛮な服装をしている奴か」
「カサンドラのせいでアタイはこんな状態になったんだ」
俺はしばらく考えた。そして……
「分かった。お前と契約する。蛇の道は蛇とも言うしな。悪魔相手には同じ悪魔をぶつける。良いか! これはあくまで捜査協力だ」
「それで良いよ。契約完了だな。早速、アタイの名前を決めてくれ」
「名前だと……」
「悪魔と契約した人は契約期間中に悪魔を自分の呼びやすい名前を決めてもらうんだ。儀式みたいなもんだ」
「そうだな……『オキコ』だ」
「変な名前だな……まぁ良いか。今からアタイはオキコだ。よろしくな緋山」
「あぁ、よろしくな」
「そうだ! 今からいうことは守ってくれよ」
「守ること?」
「1つは仲間といる時はにアタイのことを喋ったり戦闘で使うな。勿論、研究員に差し出すことも禁じる。必ず仲間はいない状況で緋山が1人の時に使うこと。もう1つはアタイは怪盗の正体を知ってるが言えない。さっきのアタイ自身を差し出したり、怪盗の正体を言うとアタイはこの箱ごと溶けて存在が跡形もなく消える。悪いな……こればっかりはアタイの命にかかるもんだから」
「命を握られているのか。分かった、怪盗の正体は自分で見つけるさ……」
「更に……」
「まだあるのかよ」
「これが一番、重要だ。アタイと契約したことで緋山には対価を払ってもらう」
「対価は何を払えば良いんだ? 命とかか?」
「そんな物騒なものを要求はしないぜ。アタイの対価は1つ。契約中……アタイの恋人になってくれ!」
「……はぁ?」
場面は変わり緋山達が所属している対策班がある警視庁。
対策班の管理官を務めている鬼寵玲奈は廊下を歩いていた。
そして、目に前は警視庁の長たる警察官である呉須礁子が歩いている。深く渋い青髪を持つ。今年50歳を迎えたと言われたが美貌は衰えを知らず、20歳後半のような若々しい外見を保っていた。笑顔に溢れて子ども達に人気で彼女自身も保育園や幼稚園に度々、行くこともある。しかし部下である警察官全てにはクールビューティーで通しており冷酷な目をしている時もしばしば。ソドール対策班を発足させたのは呉須警視総監の発案。
「緋山君は大丈夫かしら?」
私は呉須警視総監からの質問にタジタジになるながら答えた。
「はい。緋山はもう大丈夫です。まだ少々、悩んでいるようでしたが以前と同じように現場に向かっています」
「それは良かったわ」
警視総監の部屋に着く。私の付き添いはここで終了。
「悪いわね。わざわざ私の付き添いをしてもらって」
「いえ。光栄でした」
「これからも市民の安全を守るよう頑張りなさい」
私は敬礼し、呉須警視総監は部屋を入る。
部屋に入った呉須はコーヒーの準備をしていた。
「それ……僕にもくれないかな」
振り向くとピエロの服装を着た男がソファーに座っている。
「はぁ〜 来るなら言ってほしんだけど……ルージュ!」
「君に頼まれたものを届けにきたんだ。喜ぶ顔を見たくてね」
「キモいんだけど……」
「相変わらず辛辣だな。ここ数年連絡してなかったのにいきなり君の部下と名乗るものが現れてびっくりしたよ!」
「私が手塩にかけた優秀な部下よ。で、例のものはできたのかしら?」
「あぁ! 丘螺に頼んで作ってもらったよ」
そう言ってルージュは懐から取り出し机に置く。
子どもサイズの赤と青のブレスレッド。手首上部分で赤色と青色が半分ずつ分かれているデザイン。右側が青色、左側が赤色。そして、赤にはNo.31、青にはNo.13がそれぞれ彫られている造形になっていた。
「あのハゲ、まだやってるんだね。滑稽だわ。まぁ、そのお陰でこんな良い仕事してくれたんだから一応、感謝しましょう!」
「そう言うなよ。彼は知らないんだから。それにしても僕の苦労が……」
「そんなものどうでも良いわ」
「本当に君は子ども以外には興味ないって顔をしてるね」
「大変なのよ。本性を見せないようにするの」
「で、それを何に使うかそろそろ教えてほしんだけど……わざわざ手に入れた2種のソドールの能力だけ無償であげたんだから」
「無償は当たり前でしょう! 私のお陰で10年前の行方不明を捜査難航にさせたんだから」
「君がちょうどこの国における偉い立場にいるのを思い出してね。利用させてもらったよ!」
「まぁ、この地位は私と契約した前任の警視総監から対価としてもらったんだけだよ。彼の記憶を持っているから私はこの10年、この地位に入れている。で、このブレスレットを何に使うかだったわね」
「私が育てた子どもに英才教育をしようと思ってね——戦いの訓練を」
「じゃあ、僕らは敵対するのかな……ネルディー?」
「私自身は何もしないわ。敵対するのは私の子どもよ! 貴方もカサンドラのアホもどっかにいる残りの悪魔達。そして、大量のソドール。それらを全て倒せるなら私を守る優秀なエージェントになるわ。これが今の私の野望」
「うわぁ〜恐ろしい。僕は帰るよ」
「ルージュ。一人称……僕に戻ってるわよ」
「おぉ!? これは失敬。では、私はここで失礼するよ」
ルージュがいなくなり1人になった。
「さぁ、行きなさい! 私の愛する子どもよ! そして……いつかは」
ネルディーは外を眺めていた。自分の目標の為に行動を開始する。
灯たちが使えるソドール能力
No.12 ウォーター 紫マゼンタ色 【 】
No.16 フォックス 煉瓦茶色
No.35 スパイダー 赤紫色 【 】
No.40 スモーク ピンクマゼンタ色 【 】
No.47 シャーク 青水色
No.48 ボーン 茶橙色
No.50 ボム 黒橙色 【 】
No.52 ダイヤモンド 水白色
No.59 アイヴィー 緑黄緑色
New
No.18 ??? ???色
悪魔:黄 カサンドラ
所持人形:1個
No.14 ライオン 白黄色
No.25 カメラ 黄茶色
No.29 キャット 青マゼンタ色
No.53 ミラー ピンク赤色
No.55 クレーン 煉瓦橙色
No.56 ラッキー 茶黄緑色
ソドール
No.54 タイガー ???色
悪魔:赤 ルージュ
所持人形:1個
No.21 ??? ???色
No.33 ホッパー 青ピンク色
No.37 マント 黄緑青色
No.44 タカ 白桃色
悪魔:青 ネルディー(呉須礁子)
現在の地位:警視総監
所持人形:0個
・超業能魔
No.13 ??? ???色⇨ルージュから貰う
No.31 ??? ???色⇨ルージュから貰う
オキコ=オレンジでキレるとコワい悪魔
男勝りで一人称が『アタイ』......あの人ではありません......
勝守の籠手に付いている武装:【多段変形加速機】
①???
②遠隔自律稼働型:【ワンダー】
③???
爆橙の想争は翠の陰包徳同様、必殺技を持っています。
青色の悪魔が初登場!
そりゃあ〜そうだよね。一般人とはいえ、10年間協力者が調査しても見つけられないのなんて1つしかないよね〜
国の安全を守る組織の頂点が悪魔が君臨し支配している。自分の私欲のために。
ネルディーは子ども好き。敵国をも支配するために優秀な諜報員を育成している。
魔魂封醒の2つ目の必殺技はである【硬朱の甲】
自分に迫る攻撃を吸収し己のエネルギーになる。マックス......ノバ????
〜後日談〜
この戦闘後、灯はクロとミドリに抱きしめられ耳元から下へ徐々に攻められる。




