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レッド・クイーンズ ~天織灯のあくまな怪盗生活~  作者: 麻莉
3章 7月 冱蝕の氷龍止めるわ、剣と拳
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30話 閉鎖空間でも脳内は前向き

 青奈:さぁ、作戦会議よ!


 黄華:作戦会議ってよ……これは


 灯:どうやる?


 黄華:どうするって……無理じゃね


 青奈:なに、弱気になってるのよ!!


 黄華:移動系の【スパイダー】がどっかに行ったんだぞ


 灯:【アイヴィー】を使っても養分がないし……


 黄華:閃いた!!


 青奈:どんな?


 黄華:【シャーク】を使え!


 青奈:なんでよ?


 黄華:歯を大量に生成してロッククライムして上に行く! どうよ!


 灯:ウサギ型と戦って何日経ったっけ?


 青奈:1日しか経過してないわ……


 黄華:あぁ!? 忘れていた……


 そう、ウサギ型の使ってしまった【ウォーター】と【シャーク】は現在、エネルギー充填中。

 エネルギーが満タンになるまで最短もう1日必要。

 なので黄華の案は消え去った。


 青奈:マガジンを使う以前の問題があるわ


 灯:どんな問題?


 青奈:今、使えるマガジンが【スパイダー】、【ボム】、【ダイヤモンド】しかないのよ


 黄華:なんでだよ!?!?! いつもみたいにいろんなところからマガジンを出せばいいだろ?


 青奈:やってみたけど、出てこないのよ。3つ以外のマガジンが……


 灯:逆に何故、その3つだけ出せたんだろう?


 青奈:戦闘開始と同時に即座にマガジンを切り替えようと思って怪盗服の至る所に忍ばせてから戦ったのよ


 黄華:移動用、防御用、そして、攪乱用?


 青奈:そんな所よ


 灯:でも、現状は2つしか使えない……


 青奈:やっぱり、【スパイダー】を取りに下へ……えぇ!?


 上から【スパイダー】が落ちてきた。手を伸ばしてすかさず回収した。

 上を見ても下を見ても空模様一色。終わりのないエンドレス空間。


 黄華:【スパイダー】が上から降ってきた!?


 灯:幸運だったけど……


 青奈:益々、謎が深まったわね


 灯:もしかして、武者型と同じタイプかな?


 2人:「「——ッ!?」」


 黄華:なら、方法は一つだ!


 青奈:待って、答えを出すのは早いわ


 黄華:こういうのは頭で考えるより足を使って情報を集めるんだよ!


 灯:こうちゃん……私達、刑事じゃないよ


 黄華:シャラップ!!! 気にしない。青奈、ミドリを呼べ


 青奈:はぁ〜 どうなっても知らないわよ


 黄華の言いなりになるのは癪だけど、【賊藍御前】(ティア・マ・タル)が刺さっているこの高層ビルがいつまでもその場に留まっている保証は何処にもない。少なくともミドリを呼べば飛行能力を得られるし広範囲で移動が可能になるから情報も集まりやすくなる。

 理には叶っているが黄華の指示で動くと思うと私しのプライドが……


「ミドリ!」


 名前を呼べば翠の陰包徳(リ・エミナァーデ)状態になっているミドリが光の速さで到来。例え遠く離れていても必ず持ち主の所に参上してくる。


「……来ないんだけど」


 灯:なんで来ないの?


 黄華:故障か?


 青奈:じゃあ、次は……【太義の蛮輪】(ブロ・ウォーガー)


 黄華:お前が使うなんて珍しいな〜


 青奈:検証のためよ


 【太義の蛮輪】(ブロ・ウォーガー)をクイーンズブラスターに差し込む。


『デストロイ』!!



 ブルーのコートがなくなり山吹色の革ジャンの衣装に変わった。

 【太義の蛮輪】(ブロ・ウォーガー)は改良され3人の専用武器を使えるようになっている。

 【太義の蛮輪】(ブロ・ウォーガー)の専用武器である【義心の大剣】(ヘルズ・ギドリ)もビルのガラスに突き刺した。横に垂直になっており、【賊藍御前】(ティア・マ・タル)と並べたことで座れる広さまで拡張した。

 本当はこのままビルの中に入ったほうが良いのかもしれないが無理。


 左腰にある黄色のスライドキー。黄華専用のスライドキー。

 これを下へ落とすことにした。


 黄華:お前っ!? 何やってるだよ、僕のスライドキー


 青奈:これも検証よ……ほら!


【スパイダー】のマガジンと同じように黄華の黄色のスライドキーが上から降ってきた。


 青奈:なるほどね……


 黄華:何が『なるほど』なんだよ


 青奈:結論から言うわね。ここは外界から隔離された空間よ!


 2人:「「はぁあああ!?!?!?」」






 ◆


「璃子、何か分かった?」


 私は急いで家に帰宅し研究室に向かう。

「さっぱり謎、手がかりもなし。痕跡もなし。正直、お手上げよ」


「そっか……ところで、ミドリは何をやっているのよ」


 テーブルの下でうずくまっているミドリを発見した。

「青奈に呼び出されたんそやけども、会えなかった」


 青奈に呼ばれたので翠の陰包徳(リ・エミナァーデ)状態になって呼ばれた場所に向かうが一向に目的地に到着せず、しまいには建物の壁に激突したらしい。

翠の陰包徳(リ・エミナァーデ)にも発信機が搭載されているから灯達の居場所がわかると想ったんだけど……」


「……ねぇ、ミドリ。どこの建物の壁に激突したの?」


「今日、クロはんと灯がデートへ向かった映画館が入っとるビル」


「……やっぱり、あのビルに何かあるわね。今日の夜にでも確かめてくるわ」








 ◇


 青奈:さてと、脱出を考えますか


 黄華:おいっ。自分だけ進めるなよ。僕らにも説明を


 灯:青奈ちゃん……説明プリーズ


 青奈:良いけど……2人とも物理得意だっけ??


 黄華:勿論! 相手の懐に一撃パンチ喰らわすのは得意分野!!


 青奈:はぁ〜 『物理学』よ


 2人:(目を逸らす……)


 青奈:ほらね! 


 黄華:で、でも簡単に言うことはできるよな。天下の青奈なら……


 青奈:……じゃあ、簡潔に言うね


 青奈:まずこの空間は地球に存在しない場所


 灯:そうだね……こんなビルと上下青空の世界なんて地球上何処にもないから


 黄華:さっき、閉鎖空間って言ってたよな


 青奈:【スパイダー】と黄華のスライドキーを落としたでしょう。下に落とせば地球の重力で必ず下へ落下する。でも、上から降ってきた。今、私し達がいるこの場所はあのカメレオン型が作った空間か世界のどこかの場所を断絶した空間のどちらか


 灯:『カメレオン型が作った空間』?


 黄華:『世界のどこかの場所を断絶した空間』?


 青奈:『世界のどこかの場所を断絶した空間』はそのまま。世界の何処かにあるこの空間をぶったぎって外界と完全に遮断させる空間を生み出した。詳しくは物理学を学びなさい〜


 黄華:難しいのは勘弁……


 灯:右に同じ……


 青奈:こっからは少しファンタジーが含まれるわ。『カメレオン型が作った空間』は現実世界に存在する物体をそっくりそのままコピーし、カメレオン型が操れると仮定する


 灯:コピー?


 青奈:例えば、上を見上げた状態で高層ビルと青空だけを撮った写真があるとするでしょう


 黄華:写真素材ってやつか……


 青奈:そう! で、その写真の中の物を操れると考えればどう?


 灯:?? 


 黄華:じゃあこの景色はその写真の中の光景……


 青奈:カメレオン型の左腕にメカっぽい装置があったからそこに写真を入れれば写真の中の光景を操れると推測できる


 灯:急に飛躍してる……




 黄華:なんか前にもあったな……


 灯:すずちゃんと同じ力


 青奈:少し違うわね。すずが写真を千切って自身の付与していたけどカメレオン型は装置に入れるだけ。


 黄華:似たようなもんだろ


 青奈:同じと思うのも仕方がないわ。でもね、すずの場合は自分が撮った写真を千切っていた。同じ写真を何枚もあれば複数回使用できるけど今回のカメレオン型は一枚を左腕の装置に入れただけ。きっとあの装置で増産できるでしょうね。増産された写真を全て繋げて全部操れる。


 青奈:増産した写真達に写っているビルをくっつける。コピー機でできたポスターサイズの用紙を貼り合わせるみたいにね。1枚のポスターに写っている世界を出入り可能に操作できるれば一種の監獄が完成


 黄華:だから、永遠にビルと青空だけなのか……ちょっと待て。コピー機!?


 青奈:左腕の装置が小型のコピー機なら写真を写して入れた写真と同じものをカメレオン型が欲しい枚数作り出すことができる。自分の思い通りの世界が完成するって訳。真下から撮った写真を使ったから外のガラス張りは再現できても中が見えないからこの世界のビルの中に何もなかった説明もつく


 青奈:恐らくカメレオン型が映画館のシアター部屋の何処かをコピーして自分の根城にしている。私し達が連れていかれた場所がそうでしょうね。コピーした部屋なら改造も本人の思い通りに操れる


 青奈:私しが落とし穴に落ちたのもシアター部屋を改造したから


 黄華:お前が間抜けな声を出したあれな!


 青奈:お黙りなさいっ


 青奈:これも想像になるけど天井を写して操作可能にしてから、スイッチで両開きにできる落とし穴も写して貼り合わせると天井に落とし穴の装置が設置されるってことかな


 灯:なんて手間のかかることを……


 青奈:私し達の存在は計算外。引きづりこんだ相手が自分の力を奪う相手だとは思わないでしょうから仕方がなく実験的に作ったこの空間に収容したと考えたそうが妥当ね


 黄華:本来は引きづりこんだ相手を驚かすためだったと……


 灯:驚かす観点っていえばカメレオン型の作戦通りだね。実際私達、驚愕したし……


 黄華:しかし、よく分かったな?


 青奈:まず、こんな世界は地球上の何処にも存在しない。


 青奈:武者型と同じシンソ状態だと考えたこともあったけど、あれは武者型の身体の周りに雨があった。今回もシンソ状態なら必ずカメレオン型がいないといけないけど見渡す限り何処にもいない。

 青奈:それにあれはターゲットの心の奥にある闇が具現化したもの。青空ってどっちかというとプラス方向の分類に値する。だから、除外した


 青奈:さっき話した『世界のどこかの場所を断絶した空間』の力ならターゲットは何を願ったのかが疑問になる。もし、外界と遮断した世界を作りそこに人を入れて驚かすなら永遠の暗闇にした方が恐怖を与えられるし効果的。それをしなかったってことは驚かすといってもパニック系ではなく……アトラクション系にしたかったと考えられる。非現実の世界を体験させるとか


 黄華:随分、優しいターゲットだな。でも、僕らはもれなくパニック系になってるけど……


 灯:本当に私達は計算外ってことだね



 黄華:で……


 青奈:で、とは?


 黄華:これからどうするのさ


 青奈:それはね……


 黄華:それは……


 灯:それは……


 青奈:分かんない!(ウィンクでスマイル笑顔)


 2人:「「————ッ!?!?! 嘘でしょう」」


 黄華:おいっ そこは『そんなの簡単よ』って脱出できる場面だろ


 青奈:分かんないものは仕方がないじゃん……私し達がこの世界に入った入り口は見当たらないし万策尽きたのよ……


 灯:だから、さっき『さてと、脱出を考えますか』って言ったんだね


 青奈:【電気】の能力があれば良かったんだけど……持ってないし


侵食率27%

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