27話 美少女と美女のデートではタオルを持ってスタンバイ!
なんで私の休日はいつもこうなるのか……
工事中の学校がようやく修復が完了したことで明日から通学が可能になる。なので今日は先日クロに口約束でしてしまったデートをしていた。スタートは映画館。今話題の恋愛映画を見ていた。なんでも感動の連続でタオル持参する位、涙腺崩壊間違いなしの映画と言うことで私とクロだけで映画館に行くことにした。
恋人つなぎは少し恥ずかしかったがクロが嬉しそうだし、時々ならやってあげようかなと私は思った。
席はクロが事前に予約してくれたが、選んだ場所がダメだった。
なんとカップル席だったのです。いくら他の人の視線が嫌だからってなにもカップルシートを選ぶ必要はあったのだろうか。今日はクロ主体のデートなので渋々了承しました。
しかし、座ってみてカップルシートも悪くない……いや、最高でした。
長い上映時間を考慮してくれたのかゆったりできて足を伸ばすことができるソファータイプにしてくれた。一般の人とは離れた位置に設置されており尚且つ、両端は中が見えないようになっている。
初めてカップルシートで映画を見るので妙に緊張していたがシートがあまりのも快適なつくりになっていたので次第に緊張もなくなっていた。
上映まで10分を切ったがクロは私の隣にいない。というのもポックコーンをどっちが買うのかじゃんけんをしていて私が勝ったのでクロが買う羽目になった。私は先に指定席のカップルシートでくつろいでいて後からクロが来るがまだ来なかった。
(……後、10分なのに何やってるんだろう??)
私達にとっては休日だけど、今日は平日。朝10時ごろなのでそれほど人はいなかったからすぐに買って来るもんだと思ったけどじゃんけんしてからかれこれ15分過ぎていた。
「お待たせ!!」
山盛りのキャラメルポックコーンとドリンク2つを持ってきたクロがカップルシートに入ってきた。
「はい、烏龍茶!」
「ありがとう! 遅かったけど、何かあったの?」
クロは自分のコーラを飲んでから私の質問に答えた。
「私を芸能人と勘違いしていて中々進めなかったのよ」
クロの服装は白のクロップト丈タンクトップで、黒のスキ二ージーンズ、ヒールサンダルの組み合わせ。
タンクトップの胸元部分にクリアレンズでピンクのサングラスをかけている。
知り合いじゃなかったら私もどっかの芸能人かセレブの人ですかって見てしまう格好だった。
今日はいつもの変身はせず黒髪碧眼で、美人でモデル体型。とんでもない存在感がある人が映画館で堂々と来ているのだ。注目しない方がおかしい。恐らく男女問わず見惚れてしまってであろう。
「どうせ……写真撮らせて下さいって言われたんじゃない」
「鋭いわね。もぉ〜大変だったのよ。人違いって言ってもみんな一向に解散しなくてね」
「まぁ、美貌もそうだけど……」
私は自分が羽織っている夏仕様でネイビー色のカーディガンをクロに渡した。
「その胸やスタイルが原因だと思うけど……てか、聞いてないし」
「......灯の体温を感じる。包まれている感じだわ。ありがとう、灯!」
前文の変態発言はいつものことだから聞き流すけど、その笑顔は反則だよ。たかが笑顔でノックアウトされそうになるとは思わなかった。
カップルシートの真ん中には肘掛けがないので肩同士がくっつき合うこともできたりする。
クロが私の肩に頭を乗せてきた。少々照れくさいけど今日は良いか。
「安心してよ。私は灯しか見てないから……」
そうこうしている内に上映が始まり私達は映画を見始めた。
「本当に......タォオルが......えぐっ、役に立つとは......えぐっ、思わなかったわ」
映画館の中、廊下でクロがタオルに顔を埋めていた。
「灯はそうでも......えぐっ、ないみたいだね……」
私はハンドタオル位で足りた。感動はしたよ。でも、それ以上に映画に見入ってしまった。ストーリーも良かったしキャストの演技も最高だった。みなさん迫真の演技をしていて芸術の域を超えていた。上手く表現できないけど人間より人間をしているのを思わせる演技。途中で流れるBGMも完璧のタイミング。主人公の女性も最後は幸せになって良かった。
青奈:主演女優の演技は良かったわね!!! 男も泣くのはどうかと思ったけど
黄華:そういう演出なんだから、仕方ないじゃん
青奈:あそこは黙って男が抱きしめるで良かったと思うけど
黄華:君はそうやって……まぁ、ようやく会えたんだから込み上げるものがあったんだろうぜ
「タオルがびしょびしょ……前が見えない」
「どんだけ泣いてるのよ。予備を持ってきて良かった。はい、これ」
私はバックから予備のハンドタオルをクロに渡した。
「ありがとう。それにしても良いわよね。最愛の人と結ばれて……」
「本当にね。お互い立場があって別の人と結ばないといけなかったけど、最後は自分達の正直な心で決めたんだもん」
クロは頬を赤くして小さな声を出した。
「もしも、私が灯とは違う人と結ばれる未来があったらどうする?」
「なに〜よ。心配して欲しいの〜」
「ど、どうなのよ……」
「そんなの簡単だよ! 何某からクロを奪う。『貴方は私のものよ』って」
「…………」
「…………恥ずかしい…………」
「あのね〜急に告白を受けた私の方が恥ずかしいんだからね」
「そもそもクロが変な質問するからでしょう。だからクロが悪い」
「いいや、変な回答をした灯が100%悪い」
黄華:また、やってるよ。こいつら……
青奈:ジェラシーを感じるわ。クロなんかより私しをものにしなさいよ
黄華:お前はブレないな……はぁ〜
私達は言い争いをし続けた。側から見てる人にはちちくり合っているように見えるがそんなのお構いなしに私達は言葉の戦争を行なっていた。
「大体灯は……あれ?」
私が口に集中していたのも原因だけど自分とさっきまで言い争いしていた灯がどこにもいなかったのだ。
前にも後ろにもどこにも見当たらない。
(全く……化粧室行くなら言ってよ)
私は映画上映エリアを出て、映画館入口の近くにあった大きな円柱に背中をくっつけ灯が来るのを待った。
しかし……
いくらなんでも遅いと私は感じた。腕を組み眉を互いに引き寄せて、焦りを顔に浮かべる。
腕時計を見て、最後に灯を見た時間から逆算して恐らく30分経過しているが灯の姿が無かった。
(まさか、迷子になってるんじゃないでしょうね?)
携帯端末に登録してある灯の電話番号をタッチして鳴らす……
『おかけになった電話は電波の届かない場所にあるか、電源が入っていないためかかりません』
おかしいな……??
映画が終わってシアターが明るくなってから携帯端末の電源をお互い入れた。折角カップルシートに座ったから記念として自撮りを灯の携帯端末で撮った。
だから、灯の携帯端末は電源をオフになってないし圏外になるなんてありえないのだ。
熟考していると私の携帯端末が振動した。
やっと灯から繋がったと思い画面を確認すると……
「璃子? もしもし……」
電話に出ると璃子には珍しく慌てた声を出していた。
「ねぇ、今灯と一緒にいる?」
「それがさぁ……いつの間にかいなくなってたのよ。電話も繋がらないし……」
「まずいわ……以前、灯に見つからないように発信機付けたの覚えているわよね?」
「勿論。私が立案して璃子が開発してくれたあれでしょう!」
灯の安全の為に璃子に無理やり、いやニッコリと優しい声で作ってくれた発信機。
以前作ってくれた透明手錠の発信機版。パッチシールで肌にも優しい素材を使用しており灯の首筋にこっそりと私が貼ったもの。いつかって……それは内緒よ!
防水性も完璧なのでお風呂に浸かっても問題なく剥がれない代物。璃子が研究室から灯の現在位置を逐一モニタリングしている。急にいなくなっても見つかるようにしたもの。本当は唯の嫉妬であることは誰も知らない。
灯は行く先々で次々と女の子をハントしているのだ。しまいには灯女王様による百合ハーレムが築かれていくの感じた。もぉおお、気が気じゃないと焦ったので急いで対策をした。もし、見つかったら灯から処刑されること間違いなし。
「消えたのよ——灯の位置情報が」
クロさんの変態行動は加速していく......