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レッド・クイーンズ ~天織灯のあくまな怪盗生活~  作者: 麻莉
3章 7月 冱蝕の氷龍止めるわ、剣と拳
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7話 驚天動地は得てして起きてしまう

 ミドリも加わり談笑を再開する。

「そやけども、貴方達はよく変なのに絡まれるわね」


 ミドリはお茶を飲みながら笑っていた。

「まぁ、心配しなくてもああいう輩と遭遇したらあたしがしばくから」


「3人はそれでも良いけど、私には青奈ちゃんとこうちゃんがいるから……」


 青奈:そうよ。新人に灯ちゃんを任せるなんてあり得ないわ


 黄華:お前はまた……こいつらより頼れる僕がいるから、灯はちゃんと守るよ


 青奈:お子さまがそんなデカいこと言って良いのかしら??


 黄華:少なくとも君より役に立つけど


 青奈:黄華は背伸びしたい歳どころだね。よしよし〜


 黄華:髪を触るなぁ!! しばくぞぉ!!



「酷いわ、灯。将来を約束した契りを交わしたのに……」


 ここを深掘りするとまた面倒ごとが増える。よしっ! 話題変更よ!

 ミドリに聞きたいことが色々あるからそれで誤魔化すか。


「てか、よく私がここに居るってわかったね?」


 ミドリは自分の携帯端末を取り出してある画面を見せてくれた。

 なんで地図アプリ? 地図上に人間もどきが2つある?

「この画面にいるのは1つはあたし。もう1つは灯よ!」


「ふぇ!?」

 思わず変な言葉を出してしまい目が点になっていた気がした。


「灯の現在地が瞬時でわかるようになっていてね。例え地球の反対にいてもすぐ分かるようになってるのよ」


 私は自分の身体を隈なく触った。

「そないなわかりやすいトコには置かないよって璃子はんが言うとったわ」


「ミドリ……言いなさい。どこに付けたの。私のプライバシーガン無視ですかぁ?」


「教えたら、あたしがクロはんに消されるからその命令には従えへん」


 クロ……覚えてろよ……


 私とミドリのやりとりを側から見ている面々。

「クロさんの愛が重い……」


「灯ちゃんを『絶対守る』姿勢が凄すぎる」


「実際、どこに付けてるんだ? 今度、確認してみよう」


「貴方達も十分、重いわよ……最近の女子高生は進んでいるわね」






 大学内の案内再開。

「えっ!! ミドリのお茶に惚れ込んだの? あの人達が」


 ミドリが京都に行ってお茶の勉強をする際に利用していた施設の近くで偶然、抗争があったらしい。そもそもそんな抗争が近くであるところにお茶の教室を開くもんじゃないのに……


 その抗争はすぐに幕を閉じた。幕引きをしたのは私の隣を歩いているミドリ。

 無駄な争うを無くしたミドリの功績は凄いけど。

「お茶で鎮まるものなの……」


 鎮めた方法が双方の頭にミドリのお茶を提供した。そのお茶に感動して仲直り?かは分からないけど終焉の道に進んだ。

 こっちに帰る際に送って貰い、例のアプリで私がこの大学にいることが分かり、双方の部下である筋肉ムキムキのボディービルダーさん達を引き連れて私達の前に現れたと。


「人はほんまに感動したものに直面したら、小さいことなんてどうでも良くなる」


「そんなに美味しいお茶が出せるなら、教室に行くことないんじゃなかったよね」


「甘いわよ、灯。人がどんどん変わっていくようにおぶ(お茶)もまたちびっとずつ変わっていく。それにあたしのおぶ(お茶)を心の底から飲ませたい人達がいるんそやし。ええものにしたいのよ」




「……ありがとう」




「こっち持って!!」


 私達が歩いていると目の前に大きな壁が出現した。その壁を移動させている人達が横切っていく。


「あれはね、この大学の彫刻科の作品よ」

 人、トラ、ニワトリ? ワニ、白鳥、馬など様々な動物の形をした作品が多数。全部、外へ運び出されている。完成した作品から外に出されていく。現在、製作中の作品達は急ピッチで近くのホールで作られている。


「あれって、結構重いと思うけど……」

 ある作品を彫刻科の女子学生が運んでいる。

「1つ何十キロって重さだったはずよ」


 何十キロ?? そんな大きな作品を10人の学生で運んでいる。男性は勿論、女性も逞しいな……この大学。


「あぁ!! 詩音!!」


「おはよう! 萌映もえぎ

 ホールから詩音さんに話しかけたのは同級生の崎田さきた萌映もえぎ。彼女もまた、彫刻科の学生。他の学生もそうだが、萌映もえぎさんもまた服にはペンキや絵の具の跡、顔にも少なからず付着している。華の大学生なのにそんなの気にしない素振りでいる。


「珍しいわね。詩音がこの時間にいるなんて……」


「妹に叩き起こされた——危うく漏らすところだったけど」


「アンタの日頃の行いが招いた結果よ。てか、漏らさなかったの。作品にしたかったんだけど」


「おいっ!! 私は萌映もえぎみたいにカオスな大学生にはなりません」


「カオスなんて人聞き悪いわ。せめて彫刻に人生を捧げている大学生にしてよ」


「いやいや、石膏で作った仮面を被って学内を徘徊している人をカオス以外の言葉を見つける方が難しいわ」


 なんでも萌映もえぎさんを含め、美術を専攻している学生は例年、自分で制作したマスクを被って登校しているとか。萌映もえぎさんは石膏で作ったマスク。人によってはガスマスクもどきをある人は厚紙やフェルトでマスクを被るなど奇行に走っている人もいたとか。

 この大学ではそういったことに挑戦的な人が多く在籍しており、高校では止められる率100%で指導の対象になるであろうとなることを平気で行っている。勿論、警察の厄介になりうることはしておらず、あくまで人を楽しませる。自分の作品を見てもらうためにやってる。


 石膏仮面やガスマスクを被っている大学生……詩音さんの言う通り、カオスな空間だね。

 門外不出みたいな。大学っていう密閉空間なら許されても、いざ世に解き放たれたら通報待った無し案件に直面してしまう。

 自分もソドールや悪魔がいないと側から見たら怪盗服を着ているコスプレを愛する人みたいな格好しているから萌映もえぎさん達がやっていることを言えない。


「まぁ、良いわ。それより、妹ちゃん以外見かけない顔だけど……」


「綾の学校の友達。昨日、家に泊まっていてね。暇そうだったから学内を案内している」


 詩音さん……我々を暇人、認定しないでください。私達はただ、大学の学祭に興味があったから見学に来ただけです。一般人が大学祭に参加する時には完成された舞台。まだ完成していない準備段階の学内を見れるなんて滅多にないことだから、私達はついてきたんです。勘違いしないでください。


「ねぇ! 貴方……」

 詩音さんと話していた萌映もえぎさん?が私の所に歩み寄ってきた。そして、私の顎を軽く上げる。


「良い素材ね。今から私の作品にならない?」


「えっ!? あ、あの……」




 ()()は自分の顎にある手を払い除ける。

「申し訳ございませんが、先約がありますので」


 すずの腕を自分の腕と絡ませてホールを後にする。

「作品……良い物が出来ると良いですね」

 私しは萌映もえぎにウインクしてその場から離れた。



「じゃあ、私達も行くね。作品頑張ってね、萌映もえぎ




「彼女……良いわぁああああ!! 詩音!!!!! あの子がいればこれまでの私の作品の中の最高傑作が出来るわ! お願い、彼女を引き留めて」




「却下。アンタの手助けしてあんな綺麗な子を闇に引き摺り込みたくないから」


 ホール前で絶叫している声が響いていたが私し達は知らぬ顔で前に進むことにした。




「それにしても、色んな所に作品があるわね」

 外の風景を見て青奈は感心していた。


 大学内にある大中小の至る所にある広場にも、建物の壁にも多くの学生が作った作品たちが並んでいた。どんどん生徒達が1枚の白いキャンパスを塗るように思い思いにぶちまけ1つの絵にしていく感じがしている。普段は騒がしいことを好まないけど、数日だけならこういうバカ騒ぎも悪くわないわね。


「あの……」

 後ろから声をかけられ振り向く青奈。


「何かしら? 綺麗なお姉さん?」

 振り返った先には芸能人ですかって位の容姿が整った女性が青奈を見ている。


「これ、受け取ってください」

 何かを渡され、颯爽とその場をさる美人さん。


「青奈ちゃん。灯ちゃんと同じでまたなんかしらの紙貰ったね……」


「あの人……去年のミス・ユニバースに輝いた子だよ。そんな子にまで夢中にさせるなんて灯ちゃん、何者?」


「女性から手紙を貰うのは悪くないけど、今は間に合っているから。全て、遠慮するわ」


「一途だね。()は!」


「すず……わざとやってない?」


「何のことですか? すずは分かりません〜」


「そういえば……うちの学校の学祭っていつ開かれる?」


みいうら学園の学祭は大体10月の最終末。例年通りなら、10月31日。ハロウィンの日が学祭の最終日」


「そっか〜 そんな後なのね……」


「どうかした?」


「いや、ただこんな楽しい出来事がお預けなんて……生殺しもいい所だな〜って思ってね」


「丁度、学祭の片付けが終了して授業再開って時ぐらいでみいうらに転入してきたよね……()()()()!」


「……貴方達、そんなに私しの鉄拳を食らいたいようね」


「お姉ちゃんがいるから、仕方なくやってるの、灯ちゃん〜」


「じゃあ、今からその『お姉ちゃん』を剥がしますか」


「やめた方がいいですよ。詩音さんが私達といるから皆さん、行動してないと思います」


 月音ゆみの言葉を聞いて青奈が周りを見る。

 確かに灯ちゃんが正門付近では多くの女子大学生に熱いアプローチを受けていたが詩音が顔を出せば、みんな一歩後ろに下がり退いた。一体、詩音は何者なのかと内側で黄華と考えていた。そこからも灯ちゃんをナンパしてきたクソ野郎というイレギャラーはあったがそれはミドリが解決してくれた。別に野郎には興味はないけど彼らはどこに行ったのかしら......

 詩音の言葉は内側にいた私達にも言ってる意味が分からなかったし、ミドリが引き連れたゴリゴリのマッチョ達の言葉も一才、理解が出来なかった。あんな野郎達に女性を差しくけるなんて大丈夫なのかしら……




「心配ね〜 あのナンパの人達……」




「「「「青奈……今、なんて……言った!!?!?!!??!?」」」」

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