12話 丸まったアルマジロの上、大丈夫ですか
大きさ10mほどの人間の全身骨格のような姿をしており、上下の歯をすり合わせ音を立てていた。右腕は足元まで伸びており、左手は標準の腕の長さだったが、この骸骨の肩幅を覆うことが出来る大きさの赤い傘を左手に持ち、宙に浮いている。
「キョウハアマリカゼガナクテココマデクルノニジカンカカッタ」
「まァ、シかたねーよ」
吊るされている状態の私に向かってアルマジロ型のソドールが近づいてきた。
「さっキはよくモやってクレタナ」
爪で私に攻撃してきた瞬間、私の周りにダイヤモンドの柱が出現した。
「なニ?」
柱が出現したと同時に骨の手から抜け落ち体が真っ直ぐ落ちていた。
骸骨型のソドールの手が切断され、黒服がアルマジロ型のソドールの腹部に蹴りを入れておる光景はまるで、周りがスローモーションのような感じでほんの数秒のことだった。
私の背中をさすってきた黒服はクロだった。
「大丈夫?」
「あ、ありがとう」
17世紀位のレトロ風のコートタイプのペストドクターに、膝までの長さがあるレザーのニーハイブーツ、私と同じクィーンズブラスターを左手に、右手には40㎝程の黒と赤が合わさった忍者刀を持っている。
可変式変身銃クィーンズブラスターBLACK
灯が使用している可変式変身銃クィーンズブラスターASKと同型だが、変身器スライドは黒色の1つのみ クィーンズブラスターASKとは違い、小型銃からランチャー型まで様々な銃の形に銃の形は変更可能。しかし、変更する場合、クロが身に付けている服や武器などをエネルギーとして使われるため、攻撃力や防御力を捨てれば位ならとクロはあまりこの機構を使用しない。
変形充填式忍者刀 【黒志】
40cm程の忍者刀で『レッド』と同じように裁紅の短剣で使われているグリゴンテンを刀身に使用している。しかし、反りがない直刀であるため、突くには有効的だが、引き切りにはあまり適していない。刀身が折れて使用不能になっても刀の握り部分にトリガーがあり、取り外しができる。木や石など周りの材質を鍔に置くことで刀身の代わりに変化する。刀身の強度は素材になった材質に由来される。
「まさか、ソドールが2体とはね......」
「でも、ラッキーよ」
怪盗として活動開始してから約半年が経っているが、まだ、回収しているソドール成分は6つ。半年で6つのペースだとすべて回収するのに一体、何年かかるのかわかったもんじゃない。
「オイオイ、2人イルトハキイテイナイゾ???」
「イッタン、ニゲルゾ......。ボスニホウコクダ......」
アルマジロ型が身体を丸め、ガイコツ型が上に乗りサーカスの玉乗りのような格好になりながら屋上から逃げるつもりらしい。
「逃さないわよ」
私が相手に向かって銃を撃ったが、何故か、すべて放物線を描くように銃弾が外れた。
威嚇射撃でわざと銃弾を外すことは今までしてきたが、今回はすべて当てるように撃ったのに全弾弾かれた。
そうこうしている内に2体のソドールはビルから身を投げていた。骸骨が玉の上でバランス良く転がしながらビルの壁を地面に見立て、徐々に加速しながら進んでいた。
ものすごいスピードで何かが降りているため、下にいた野次馬が上から降ってくるのを目視しながら恐怖を感じながら、巻き込まれないように、当たらないように安全な場所まで一目散に逃げていた。
幸いにも直撃した人はいなかったが着地した影響で低震度の地震のような揺れが発生し、その場で尻餅を着く人が少なからずいた。
そのまま、2体は周りを気にせず街中のストリートを駆けて行った。
「逃げられたわね......」
過ぎてしまったことは仕方がない。今はここから逃げることだけ考えよう。
屋上に居た私たちが下からかけて登ってくる音が聞こえきた。恐らく、このビルの警備員かもしれない。鉢合わせするのはマズい。そう、思いクロが【スパイダー】を起動し、逃げる算段を付けていた。弾倉は同じものの複製は無いため私はNo.33を使って帰還するしかない。
これ、苦手なんだけどな
溜息混じりながら、渋々、装填しているとクロに腰に手を回され、上半身を支えながら糸をどこかのビルの壁に付けながら、振り子の原理でその場から逃げていた。
これが、俗に言う”お姫様抱っこ”というやつか......。
偶々、現場に居合わせた俺はすぐにビルに入ろうとしたが、入り口で止められ身元が判明するまで時間がかかった。
身元が分かり、警備員の協力で屋上まで行くことができたが、そこには誰も居なかった。
一呼吸入れてから、気持ちを切り替え携帯端末から今、対策室にいるであろう同期のアイツに連絡した。
「もしもし、俺だ!!」
「警察にオレオレ詐欺とは随分、勇気があるね!!」
「連絡先が表示されているだろう・・・燐兎だ」
「あぁ〜。燐兎か〜。で、どうしたよ?」
事情を話し、現場に来るように伝えた。
「OK! 賢人と一緒に移動するから 俺らが着くまで何も触るなよ」
「素人や新人じゃあるまいし、そんなヘマしない」
「どうだか お前、例の怪人達の事件で熱入りまくっているだろう」
そう言って、同期で同じ未確認生物「ソドール」の対策室実行部隊所属の緑川颯は電話を切った。
目撃情報も少なく、被害も少ないため、こんな対策室を作る必要はないと思うが、上の指示らしく2ヶ月前から発足した。
緑川は重い腰を上げながら、支給された上着を着て、対策室用に作られた研究室に向かった
「賢人!! 出動するぞ!!」
「颯先輩! 待っててください。すぐ終わらせますので」
研究室の中ではメタルカラーの籠手のようなものが3つ置かれており、1つ1つに配線コードが繋がれて、繋がれている先の複数のパソコンで刹那的なスピードでキーボードを操作している白衣の男がいた。
「それが、例の対策室に支給される武器か......」
「現在、最終調整中ですのが、もう少ししたら実践投入できるようになります」
「今さっき、2体目撃されてらしい リーダーから連絡があった」
七上賢人は作業を一時中断して緑川と同じような制服を着て現場に出動した。