54話 明無心掴手 XVIII 無限の世界へようこそ
「ねぇ! クロ。勢いよく了承したけど青奈ちゃんとこうちゃんも行けるの」
「本当に今更ね。安心して。あの空間に行くのは精神だけ。運の良いことに貴方達は精神が今の所3人いる。私の誘導ありきだけどちゃんとつれて行ける」
いつもだと身体だけはこっちに残り、外の者が守るようになっている。しかし、私達は精神が3人いるから、全員が行かなくても誰か1人外に残っているなら身体は動き守る任務が省かれると。
「でも、そう長くは持たないかな」
私とクロは隣通りで深い眠りに入る。
そして、程なくして私、天織灯だけが目を覚ました。
「どう? 灯、気分は」
「今まで3人居たのに1人になったからポッカリ穴が空いた気分かな。なんか不思議な気分。それとごめん。月音ちゃんに話した——全て」
「そっか。また灯の秘密を知る人が増えたか」
「これはまずいね。すずちゃん」
「えっ。非常に不味いわ」
「どういうこと? 意味がわからないんだけど」
「「気にしなくて良いよ」」
「えぇ〜 気になるんだけど」
「灯ちゃんは萌香さんを追いかけないと」
ベットから飛び出し、窓を開ける。
私はサングラスをかけてクイーンズブラスターASKに【レッド】スライドキーをセットした。
「行ってきます!」
「「行ってらっしゃい!!」」
『スパイダー』!
クイーンズブラスターASKから蜘蛛の糸が噴射し近くの建物に張り付き、武者型を追う。
ミドリの精神世界では。
「へぇ〜 ここがそのミドリって奴の世界か。スゲェ! 池に鯉がいる!」
「はしゃがないの……。全く。でもこの景色好きだわ。良い趣味ね」
「……2人とも気をつけて」
「今度は3人……今まではあの人間が何度も来たが諦めたのか?」
「残念。灯ちゃんは外でやることがあるのよ。貴方よりも大事な」
「生意気な小娘だ。そこの小童と顔が同じだな。あの人間と」
「『人間』『人間』めんどくせぇな。ちゃんと灯と言えよ。おばさん!」
「ちょっと黄華、失礼よ。おばさんじゃなくて……おばあさんよ」
「あぁ!! そうか、悪いことしたな〜 でも、仕方ないじゃん青奈。小童だし、僕」
この精神世界の空気が様変りしていく。次に茶室に入口で身体を震わせているミドリは遂に抑えていた感情が爆発した。ミドリの感情に反応して精神世界が変貌を遂げる。私達を覆い囲むように石で出来た柱が出現してきた。周囲の岩・石が積み重なり円を底面にして天辺がとんがった立体構造になっていく。石によっては白だったり濃い緑色などが互いが互いに層のようになっている。天辺付近に黒色の丸い目が二つ、黒色の横棒で口を表現されている。高層ビル相当の身体に対して申し訳程度のリーチが少ない腕。上からいつでも攻撃しますよと無機質な表情が私達を見ている。
そして、私達の正面に茶室が頭部になっている周りと同じような柱が登場し、ミドリが睨んできた。
「そろそろ終わりにしましょうか。お前達の負けで終了する」
青奈はミドリを睨み、黄華はニッコリと笑う。
「丁度、貴方をわからせたいと思っていてね。悪魔っ」
「良いね!! 君を倒すよ、悪魔さん!」
「そういうことだから……【ミドリ】。貴方の心を癒してあげるわ」
『ブラック』! 『ブルー』! 『イエロー』!
「「さぁ、面倒臭い人を叩き起こしますか!」」
「……貴方達、なんでそんなに活き活きしてるのよ」
「……やってみなさい」
ミドリの声には怒気が含まれていた。
ミドリの指差しで周りの柱もどきが動く。
さっきまで小さい腕が大きく巨人の太い腕に変貌してきた。腕が変わる一方で身体が縮んでいく。柱もどきに内包されている質量は変わらないみたいね。しっかし風圧が強い……。髪が乱れていく。私がこんなんだから2人もそうかな?
私、クロは青奈と黄華を見ると……。
「やっべぇぇえええ!!! 一度で良いから巨大扇風機で出来る最大風圧、味わえれることができるなんて!!」
「貴方って、本当に無邪気ね。まぁ、私しもこんな面白いこと味わえて嬉しいわ。てか、来るわよ。避けなさい」
私は2人が若干、思っていた反応とは違うが良しとすることにした。
「2人とも。この空間では私達が今まで使っていたマガジンも使えるから。但し、ちゃんとイメージしないと不完全なマガジンが出現するから気を付けてね」
迫る腕を避ける私と青奈。しかし黄華だけは突っ込んでいった。
「ちょっと!? 黄華、何やってるの」
「心配要らないわ。今の黄華は精神だけだから」
僕は地面を滑り、石で出来た巨大な腕との距離を詰める。自分が良いと思ったベストポジションの場所で足を止め、右腕を引く。
「最初はぁあぁあああああ……」
腕を伸ばし【捕食者の影爪】を前に出す。
拳と拳がぶつかる。普通なら唯の人間である黄華が圧倒的に押し負け吹っ飛んでいく。
だが、黄華は負けることはなかった。それどころか、石の腕に亀裂が生じる。
腕は弾け飛ぶ。空中で粉々になった石が落ちていく。地面に落ちた衝撃でこの精神世界が大きく震えていき、地面が裂けた。地形は変形し周りに風が吹き荒れてる。
砂塵の風の中、腕を組み仁王立ちしている黄華は笑う。
「やっぱりグーでしょう!!!」
「バカでしょう。加減しなさいよ。お陰で着地失敗したじゃん」
青奈は跪く格好になっていて着地に失敗したのがわかる。
「ごめんごめん。やってみたかったから、つい……ね」
僕は青奈に向かって屈託の無い笑顔で言い訳をした。
「そんな笑顔をしてると逆にキモいんだけど……」
青奈は身体を縮め込ませ、距離を取った。
「青奈、これが終わったら覚えておけよ。それにしても、外で動かすより威力が増してくるよ」
「受けてあげるわ。そういえばクロが面白いこと言っていたわね」
この世界なら自分が自ら使用したマガジン全部が使える。ちゃんと想像しないと使えないのはめんどくさいけど。試しに私しは外では持っていなく、奪われたマガジンを手のひらに出した。
出したのは【ミラー】。
ちゃんと璃子が作ったピンク赤色のマガジンが出てきた。直ぐに別のマガジンを頭で想像すると【キャット】が無から有になった。その瞬間に【ミラー】が消えた。
……なるほどね。じゃあこうすれば……。ふん! 成功ね。
私しの両手に3つのマガジンが出現した。【ボム】、【ダイヤモンド】、【スパイダー】。この3つを選んだのは特に意味がない。ただ頭の中で思い描いただけ。【ボム】を落とし、【キャット】は上へ。別のマガジンを2つ思い浮かべる。最終的に地面に落ちた2つのマガジンはそのまま現存している状態。手には3つ。合計5つのマガジンを出すことが出来た。
「おぉ! これ借りるぞ! あれ? 持てない?」
「恐らく、今の黄華はマガジンの色で覚えてただけ。中に入っている能力を頭で浮かべていないから持てなかったようね。ちゃんと頭の中に想像できれば使えるわ」
「じゃあ……【ボム】! 持てたし、ブラスターにも装填できた」
声は出さなくても良いけど。でも、これも成功。うん? 地面に黄華が持って行ったはずの【ボム】がある。もしかして……
私しは他のマガジンを忘れ、地面に落ちている【ボム】を拾う。使用回数は低いが手に良く馴染む感覚があり、私しの持っているクイーンズブラスターに装填することも出来たし起動可能になった。私しはその瞬間、邪悪な笑みをこぼした。
「おいっ。その顔、やめろよ。怖いんだけど……」
「おっと失礼。私しに怖い顔は似合わないわね」
「言ってろ!! で、どうする?」
「……この世界、破壊しましょう」
「お前……段々、脳筋思考になってないか?」
「ご心配はいりません。私しの目的は戦闘ではない。あくまであの【ミドリ】に一言、言いたいだけ」
「そうですか。じゃあ僕のアシスト頼んだよ。僕がアイツを地面に戻す」
「了解!」
私しと黄華はお互いにハイタッチした。
私、クロは2体の石人形もどきを軽やかに捌きながら青奈と黄華の様子を見ていた。
身体って枷を外した2人をここに来させて正解のようね。
現在の灯の身体は悪魔因子の侵食率が23%って所。生まれたばかりの悪魔が持っている純粋な力相当の身体になっている。いや、さっきの戦闘を見た限り、100年200年経験した悪魔の力と同等になるかな……。灯の成長に嬉しさもあるが急速に上がるのに恐ろしさもある。その成長のお陰で先ほどの武者型の戦闘に臆することもなく対応できていた。しかし、それでもやっと対応ができる程度。今の武者型の渡り合い完封するには【ミドリ】の協力が不可欠。本当はもっと時間を使って徐々に【ミドリ】の壊れた心を修復していく手筈だったけど。そうも言ってられないということで2人を呼んだ。この空間なら2人の本来の力が出せる。何故なら外の身体を持っておらず純粋な青奈と黄華の力が発揮されるからだ。外の身体が今まで以上に成長ができれば2人も満足に戦える。そうだな……。大体50〜60%いけばここでの戦闘と同じ動きが可能になる。
『カメラ』!
私の周りに3台の映写機が出現。
その全てで映し出されたのは……
「まずはそこのデカブツを排除しますか」
出現したのは戦車。車体全てに迷彩一色になっている超重量の戦車を出した。しかも2台。残り1つの映写機には連射可能なロケットランチャー。外で【カメラ】を使用すると映写機に映し出した物や人物しか出すことが出来ない。例え、私の両隣にいるバカでっかい戦車はそこに現れるだけで砲台を撃つことは出来ない。しかし、今いるのは精神の世界。いくら他人の世界の中でも青奈と黄華は怪盗服に変身出来ている。ちゃんとクイーンズブラスターを使って。あれは璃子が私と灯達が使うために2機しか存在しておらず、今の所、量産していない。1機は私が【ミドリ】の精神世界に入るために外から持ち込んだ物。残る1機は外で灯が使用中。では、2人はどうやって己の手に出現させ、さらに2機増やしたのか。答えは簡単。想像したからだ。自分の手にクイーンズブラスターがあり、変身可能であると。変身可能だけではなく通常の銃弾も放つことが見られた。勿論、ソドールの能力が入っているマガジンも使用可能になっている。
こんな長々と語ったが、要はこの精神世界は自由なのだ。入っている者の想像力でなんとでもなる。なら、巨大な山と化した茶室を沈めることも可能ではないかと考える。当然のこと。しかし、それは出来ない。何故なら、私達がいるのはあくまで【ミドリ】の精神の中。ここでは【ミドリ】が最高責任者。他所者の私達がいくら声を荒げて命令しても、この地は無反応を示す。
私は意識を集中させ、肩に背負っているロケットランチャーの引き金を引く。
全弾、一気に放出したため反動はかなり身体にきたが想像した通り撃つことが出来た。
お次は……戦車に手を当てる。戦車の砲台から専用の弾が一直線に石人形もどき目がけて放たれる。
弾は石人形の下部分を貫通し、崩れていく。初めに発射したロケットランチャー、占めて10発。対象を追尾し顔部分に全弾直撃し抉れていた。
さてと……次の犠牲者は……あれ? なんか……
この世界はあくまで【ミドリ】の世界。当然、【ミドリ】が想像したものはなんでも出てくる。
例え、足を生やした岩人形が猛スピードで私に襲いかかるのも【ミドリ】が想像したこと。加えて石人形もどきが1体、また1体と地面から生まれてくる。
「何で増えてるのよぉおおおお!!!!」
人形達の振り下ろした拳が私に一斉に向かう。
青奈、黄華、クロが使える精神世界でのソドール能力∞
No.14 ライオン 白黄色
No.16 フォックス 煉瓦茶色
No.25 カメラ 黄茶色
No.29 キャット 青マゼンタ色
No.33 ホッパー 青ピンク色
No.35 スパイダー 赤紫色
No.37 マント 黄緑青色
No.44 タカ 白桃色
No.47 シャーク 青水色
No.48 ボーン 茶橙色
No.50 ボム 黒橙色
No.52 ダイヤモンド 水白色
No.53 ミラー ピンク赤色
No.55 クレーン 煉瓦橙色
No.56 ラッキー 茶黄緑色
No.59 アイヴィー 緑黄緑色
数は無限。クイーンズブラスターも増殖可能だから......
身体って邪魔だよね
青奈がやったことはマルチタスク。頭の中を別々の空間を用意しやることを同時進行するもの




